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「くすりフォーラム2011」を開催
よい新薬を日本から~新薬開発の現場で何が起きているのか?~

2011年10月25日、東京都千代田区の千代田放送会館にて、くすりフォーラム「よい新薬を日本から~新薬開発の現場で何が起きているのか?~」(主催:NHKエデュケーショナル 後援:厚生労働省、(社)日本医師会、(社)日本医師会治験促進センター、(社)日本薬剤師会 協賛:日本製薬工業協会)が開催されました。
なお、本フォーラムは2011年11月19日14時よりNHK Eテレで放映されました。

2011/12/28

本フォーラムについて

「画期的な新薬によって病気が治り、命が救われる一方で、日本でよい研究が開始されていたが、結果的にはその研究をもとにした新薬は海外で先に使われるようになってしまったということがしばしば起きているのはなぜか?日本からよい新薬を生み出すためにはどうすればいいのか?」という問題提起をもとにこのフォーラムは開催されました。
コーディネーターにジャーナリストの池上彰氏を迎え、パネリストには東京大学大学院内科学 永井良三教授、名古屋市病院局長・名古屋市立大学顧問 上田龍三氏、慶應義塾大学薬学部 望月眞弓教授、東京共済病院医療ソーシャルワーカー 大沢かおり氏の4名、会場コメンテーターとして日本製薬工業協会研究開発委員会委員長 竹内誠氏が参加しました。フォーラムの途中では患者さんの声や新薬開発に携わる大学、厚生労働省、製薬企業、ベンチャーなどいろいろな立場の方の意見を幅広く取り入れて、新薬開発の現状と課題、解決に向けた取り組みなどを紹介し、日本の新薬開発状況についての理解を深めることができました。

新薬開発の現状と患者さんの声

はじめに新薬の開発段階について順を追って説明されました。新薬候補物質の発見から新薬を誕生させるためにはいくつもの段階を踏む必要があり、新薬の誕生確率は約3万分の1、期間は9年~17年、開発費は数百億円以上であることが解説されました。
続けて新薬開発を待ち望む患者さんの声が紹介されました。アルツハイマー病の患者さんの家族からは、この1年で新薬が3つ開発され以前に比べ体調が良くなったが、病気の進行予防にとどまり、根治薬は出てきていないため一日でも早く新薬を開発してほしいとの訴えがありました。また、ある脳腫瘍の患者さんは、米国で使われている抗がん剤が日本では保険適用されないため、個人輸入をして病院に届けて治療をしているので、自己負担が高額になっている実態が説明されました。このように治療満足度と薬剤貢献度の双方がまだ十分ではない病気への新薬開発が求められていることが確認されました。

日本の新薬開発力はどの程度あるのか

続いて日本の新薬開発の現状について説明されました。日本での新薬承認品目数は、2000年代に入り一時下がっていましたが、2007年以降は回復しています。国際的医学雑誌に掲載される日本の基礎研究論文数をみると1998年以降はアメリカ、ドイツに次いで第3位をキープしています。また、世界売上100品目の薬がどこで開発されたかをみると、アメリカ49品目、イギリス16品目に次いで日本は12品目と第3位につけています。このように日本は新薬開発における実績を示しています。

日本発の研究を国内で開発に成功した事例

成人T細胞白血病(ATL)という血液のがんに対する薬の開発事例を参考に、日本での研究開発が大学と企業の連携により国内で承認申請された事例が紹介されました。近畿大学微生物学講座 義江修教授はATL患者の白血球細胞の表面にCCR4というたんぱく質が多く現れることを発見しました。研究に使用する抗CCR4抗体は、その頃、東京大学分子予防医学教室 松島綱治教授と企業の共同研究が進められており、大学と企業の研究室同士の情報交換と連携により研究が一つにつながりました。さらに名古屋市立大学の上田龍三氏のグループが加わり、患者さんに近いところでの新薬開発の展開を成功させました。

世界同時開発の必要性

製薬企業は日本だけにこだわらず、世界の中でいち早く新薬を開発していく取り組みを戦略的に進めています。
日本で発見された乳がんの新薬候補は、日本企業が第1相臨床試験をアメリカで先行させ、第2相試験はアメリカ・ヨーロッパで進めていましたが、海外での第3相試験開始時には日本での治験はまったく進んでいませんでした。日本での新薬開発を急ぐために審査当局の医薬品医療機器総合機構(PMDA)から助言を受けて、この製薬企業は日本で独自の第1相、第2相試験を行い、第3相試験は海外の第3相試験データを活用することにしました。こうした方法により、アメリカ・ヨーロッパ・日本の3地域で同時に承認申請をすることができ、その結果日本ではアメリカにわずかに半年遅れるだけで新薬が登場することになりました。

日本発の技術が新薬開発の応用へ

日本で開発されたヒトiPS細胞※1はそれ自身でも治療への期待が膨らんでいますが、それだけでなく新薬開発時のツールとして応用されています。あるベンチャー企業はヒトiPS細胞から作った心臓筋肉や肝臓細胞を商品化して、新薬の毒性試験に使うことで早期に候補物質の絞り込みに活用される技術を確立し、国内外から注目されています。

各界・パネリストからの意見

フォーラムの最後には新薬開発に携わる大学、製薬企業、厚生労働省からの意見が紹介されました。
京都大学 山中伸弥教授
大学の基礎研究者の多くは自身の研究が次のステップにつながる可能性に気付かないことがあり、別の研究者が大学の基礎研究の成果を広く見渡す仕組みが必要です。また、一見むだと思われる研究にも大学・文科省のサポートが必要であり、その成果を創薬の「ハイウェイ」に引き上げる目利き役が必要です。
日本製薬工業協会 手代木功会長
製薬会社は社内研究だけに閉じることなく、大学・公的研究機関・ベンチャー企業の育成に積極的に取り組んでいかなければなりません。中国・韓国・シンガポールは製薬・医療機器産業を次世代のけん引者と明確に位置づけ、産官学で将来に向けて一生懸命やっています。日本でも製薬企業が前向きに投資できるように産業基盤の環境整備を政府に要望します。
厚生労働省研究開発振興課 佐原康之課長
薬についての研究を盛り上げていくために国の研究費を重点的に配分して支援していきたいと考えています。臨床試験の環境を整備するために、設備やマンパワーを整えた中核的な病院の整備などを進めているところです。

*          *

パネリストからは、治験を支えるさまざまな分野の専門家育成の必要性や医薬だけではなく生命倫理の専門家などの参画が必要なこと、治験にも限界があるので、市販後調査から情報を効率よく収集し、フィードバックしていく必要性が指摘されました。
また、製薬企業・大学・政府が一丸となって新薬開発のための社会的なインフラを作ること、承認までのプロセスを一方向的にとらえるのではなく「育薬」という視点で医療現場での臨床研究と新薬開発プロセスを循環型でとらえること、そのためにも国際的に通用する専門医、専門施設の必要が提言されました。

まとめ

世界に誇る日本発の研究を生かして新薬開発を戦略的に進めていくことが重要でありそのための動きが始まっていることがフォーラムを通じて紹介されてきました。なによりも新薬開発に携わるものには「日本の患者の手に届ける」使命感が求められています。一方で患者さん側にも貢献できることがあります。新薬開発の課題はこうした人々によるオールジャパンで取り組んでいく必要があるとの提言がなされました。


フォーラムの様子

※1) ヒトiPS細胞…京都大学山中伸弥教授らによるグループにより2006年に誕生した。特殊な遺伝子技術によりさまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞に変化させた人工多能性幹細胞のこと。

(文:広報委員会 政策PR部会 諸富 滋)

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