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「震災から学ぶ、患者支援の取組み~東日本大震災から半年を経て~」をテーマに第21回製薬協患者会セミナーを開催

2011年9月9日、名古屋市の名鉄グランドホテルにて、第21回製薬協患者会セミナー「震災から学ぶ、患者支援の取組み~東日本大震災から半年を経て~」が開催されました。

2011/11/09

開催にあたって

内閣府の報告によると、東海地方ではおおむね100~150年の間隔で大規模な地震が発生します。しかし、東南海地震(1944)でひずみが解放されず、安政東海地震(1854)から157年間大地震が発生していないため、相当なひずみが蓄積されていることからいつ大地震が発生してもおかしくないとされています。
このような背景から、震災をテーマに、製薬協患者会セミナーを初めて名古屋で開催することとなりました。患者さん、障害者の方々は、常時の生活でもとても苦労されており、まして震災時にどのように自身の命を守るか、どのような備えをしておけばよいか、また支援する方々にとっても極めて関心の高い課題ということもあり、東海、近畿地方を中心に24の患者団体から30名の方が参加され、熱心に講演に耳を傾けていました。
震災から半年を経て、なお東北地方3県(宮城、岩手、福島)の医療体制の現状は、いまだ復旧、復興には程遠い現状です。そのような中で、前回東京で開催したセミナーでもお招きした東北福祉大学教授、財団法人仙台市障害者福祉協会会長および被災障害者を支援するみやぎの会代表を務める阿部一彦先生より、震災発生から半年を経過した時点までの、特に被災障害者に対する宮城県による医療の提供の現状について、その現場の真っ只中で被災障害者支援活動に従事している立場から貴重な講演がありました。また、講演に先立ち、製薬協の伍藤忠春理事長より、震災時の医薬品提供の取り組みについて紹介がありました。

講演1 製薬協の取り組み ~震災時のくすりの提供について~

伍藤忠春
日本製薬工業協会 理事長


伍藤忠春

緊急時でも医薬品供給、情報提供を途切れさせないための協力体制作りが必要

製薬協では、地震発生後ただちに災害対策本部を設置し、会員企業と連携しながら、厚生労働省、日本医師会、地方自治体などと協力して、被災地域で最低限必要とされる医薬品の提供を行いました。しかしながら、想定外のガソリン不足、交通網の寸断などにより輸送手段が確保できず、支援医薬品の提供開始まで約1週間かかりました。また、会員企業の中には、工場や物流拠点が被災したところもあり、一時的に医薬品の生産や出荷ができなくなったケースもありました。会場からは「医薬品は患者にとって生命線です。医薬品の供給を切らさないことも重要ですが、緊急のため医師、薬剤師、患者さんにとって初めての医薬品の処方になる場合があり、その薬の情報も一緒に届けていただきたい」と意見がありました。
また、「緊急時に、医薬品供給を欠かさないために、平時から複数の医薬品、原料などの輸入ルートの確保や、生産拠点の分散など、医薬品製造・供給のバックアップ体制を作っておく必要があります。また、製薬企業は医薬品を研究・開発し、製造する機能は有していますが、医療現場に直接届ける機能を持っていません。また医薬品の情報を医師、薬剤師に届ける機能はあるが、直接患者さんに届ける機能も持っていません。従って、平時から必要とされる医薬品をリストアップし、交通が寸断された場合の輸送手段を確保し、医薬品とともに必要な情報も一緒に提供されるような体制について、国、医師会、薬剤師会、卸など関連する企業・団体と、災害時の緊急対応について話し合っておく必要があります」と述べました。

講演2 特別なニーズを持つ被災者への支援

阿部一彦氏
東北福祉大学教授、財団法人仙台市障害者福祉協会会長および
被災障害者を支援するみやぎの会代表


阿部一彦氏

被災地で特別なニーズを持つ被災者(患者・障害者など)への支援にあたられた阿部一彦先生から、被災地において患者・障害者がどのような状況にあるかについての講演がありました。

みなし仮設住宅とつながりの脆弱化

みなし仮設住宅は、通常のプレハブ仮設住宅を補う制度です。民間賃貸住宅を仮設住宅とみなして、入居費用や2年間程度の家賃を補助する仕組みです。従来は、県が借り上げたアパートなどの物件から選ぶしかなく、被災者のニーズに合った物件はあまりありませんでしたが、今回は、被災者が自ら探して契約した賃貸物件でも、後から入居費用や家賃を補助する仕組みに変わりました。
しかしながら、阿部先生は、「被災者が、それぞれで探してきた物件に居を構えるため、彼らを支援しようとすると、通常の避難所や集合仮設住宅と異なり、どこに住んでいるのか把握できないことから、十分な支援ができなくなることが課題」と述べました。

福祉避難所とその課題

災害対策基本法では、災害時には市町村が、避難者を一時的に学校の体育館や公民館などに設置した避難所に受け入れ、保護することとされていますが、高齢者や障害者の方など特別な配慮を必要とする災害時要援護者に対しては、特別な配慮をする避難所として「福祉避難所」が設定されます。施設がバリアフリー化されているなど、要援護者の利用に適しており、生活相談員などの確保が比較的容易である老人福祉センター、防災拠点型地域交流スペースを付設する社会福祉施設、特別支援学校などが想定されます。特別な配慮として想定される内容としては「相談等に当たる介助員等の配置(おおむね10人の対象者に対して1人)」、「高齢者、障害者などに配慮したポータブルトイレなどの器物の整備」、「その他、日常生活上の支援を行うために必要な消耗器材の整備」があげられますが、阿部先生は、「障害者の介護には、10人に1人では十分ではなく、4人に1人は介助員が必要」と述べました。また、「福祉避難所は、災害時に、各市町村において必要に応じて開設される2次的避難所であり、最初から避難所として使用することはできず、一般の避難者は入所を断らざるをえません。また福祉避難所は各市町村において必要に応じて開設されるため、その数や施設の設備など情報が共有されておらず、福祉避難所間でも格差があります。もっと自治体間の連携を強化して情報交換すれば、障害者にとって、住みよい環境を提供することが可能です」と述べました。また、「災害時要援護者という仕組みを知らない方が多く、避難所までたどり着けない方もいます。また、たとえ避難所までたどり着けたとしても、障害者が避難所で不自由なく生活できるような体制がまだ整備されていません」と災害時要援護者登録の普及とさらなる支援強化が必要と述べました。
最後に阿部先生は「このような苦難を乗り越えるためには、やはり人と人との『絆』、『つながり』、『支え合い』が一番大切です。そのつながりの大きな柱は患者・障害者団体と家族を含む支援団体です。被災した患者・障害者団体の再建を今後も支援しながら、患者や障害者の社会参加の機会を作り、障害者を含めたさまざまな人が『暮らしやすい成熟した社会』を実現していきたいと思います」とまとめました。


会場風景

(文:患者会連携チーム 豊島 常吉)

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