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「第22回製薬協 政策セミナー」を開催
新成長戦略と製薬産業

2011年1月、日本橋三井ホールにおいて、「第22回製薬協 政策セミナー」が「新成長戦略と製薬産業」をテーマに開催されました。患者団体、政治家、行政、医療関係者、メディア関係者、会員各社などから、300名を越える参加者があり、熱心に耳を傾けました。

2011/03/14

基調講演

長谷川会長の開会挨拶で始まり、続いて、京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学教授 川上浩司氏より、「健康、医療と医薬品開発」をテーマに基調講演がありました。川上氏の講演要旨は次の通りです。
医薬品・医療機器の開発は重要です。しかし、研究開発投資はまったくバリューチェーンになっていない。そのため、システム研究と規制・制度改革は不可避です。
英国では政府のヘルスリサーチと全般にわたる統合的戦略を立案する Office for Strategic Coordination of Health Research(OSCHR)という戦略室が設立されました。米国ではFDA(食品医薬品局)未承認の医薬品を使用する場合にもパッケージを作成、申請することが義務づけられたIND制度(Investigational New Drug applications, 研究用新薬制度)や1980年に制定されたバイドール法※により、大学、ベンチャー、企業の3者が医薬品の開発をスムーズに行えるようになりました。世界中がHTA(Health Technology Assessment, 医療技術評価)の時代となり、費用対効果を意識した薬剤の使用を判断する組織がなければ、画期的な薬剤が創出されても財源がなくその恩恵にこうむれない可能性があります。日本にもHTAの組織や臨床試験の根幹となるIND制度を導入することが必要であり、今やらねば禍根を残すことになるでしょう。

※バイドール法…政府の資金援助を受けて大学が開発に成功した知的財産権を政府だけでなく大学にも帰属させると規定した法律。


講演の様子

各パネリストによるプレゼンテーション

基調講演に続いて、新成長戦略に関係するさまざまな立場のパネリストから現状認識と意見提起などが行われました。
最初に、厚生労働省大臣官房審議官 唐澤剛氏から、2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」の目標と7つの戦略分野、特にライフイノベーションによる健康大国戦略の説明がありました。医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業と位置づけ、日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発推進、アジア等海外市場への展開促進および需要に見合った産業育成と雇用の創出により、2020年までの全体目標として「新規市場約50兆円、新規雇用284万人」を目指していること。また、健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクトでは、経済波及効果1.7兆円、新規雇用3万人、医薬品機構の人員増強と拠点整備でドラッグ・ラグ、デバイス・ラグの解消を目標としていることが紹介されました。まとめに、「医療の技術革新の中核は医薬品であり、医療費と医薬品との関係の理解を促進する一方、新薬創出加算等ダイナミックな技術革新の支援をどのように措置するかが課題である」との私見が述べられました。
経済産業省審議官 川上景一氏からは、バイオ・イノベーションの促進に向けた経済産業省の取り組みについて説明がありました。今年1月に設置された内閣官房長官直下の組織である医療イノベーション推進室、先端イノベーション拠点整備事業、アンメットメディカルニーズ等の技術開発促進、新興国の取り込み、製薬業界を含めたバイオベンチャーの育成など具体的な取り組みについて紹介がありました。そして、「日本と欧米の比較でも日本の研究開発投資は官・民とも伸びておらず、製薬会社はもっと政府の研究開発予算に積極的に注文すべき」と意見するとともに、「成長戦略の実現へ課題に向かって選択と集中で皆さんと具体策を実行していきたい」と自らの決意を述べました。
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授 森下竜一氏からは、医薬品・医療機器の承認審査の明確化・迅速化のための意見提起がありました。「FDAで実施されている申請者の間で第Ⅲ相臨床試験前に対象疾患、目的、試験デザインなどに関して事前合意し、承認審査での承認要件として認めるSPA(Special Protocol Assessment)や、イノベーション薬価や未承認段階での自由薬価の導入が日本でも必要である」と強調しました。また、国際共同治験推進により、見逃される日本人やアジア人固有の難病が多数あり、解決のためには日本での創薬が必須であり、率先してその開発に取り組むことが必要であること、多額の資金を要する橋渡し研究以降の段階での研究開発費の支援や製品化までの期間短縮の必要性と、その実現のための制度改革などバイオベンチャー成功の秘訣について述べました。
元 日本経済新聞社 論説委員であり、現在 東京女子医科大学 医療政策教授の渡辺俊介氏からは、メディア的発想として、「ライフ・イノベーションを実現するためには国民・患者の理解が必要であり、メディアも十分理解するべきである」との意見がありました。
さらに、「国民の多くは、医薬品の開発期間とその費用やドラッグ・ラグ問題の理解がまだ浅く、日本における治験体制不整備や治験担当医師不足、対象患者の少なさ等の問題についてメディアを通じて広く知ってもらう努力が必要です。あわせて、国民皆保険下で治験をどのように進めるかを認識してもらうなど、国民意識を変えなければなりません。国民の命を守る薬は大切であり、製薬産業は最も重要な産業です。国民を味方にして新しいイノベーションを進めて欲しい」と強調しました。
日本製薬工業協会副会長であり、アステラス製薬代表取締役会長の竹中登一氏は日本の製薬産業の現状について紹介しました。
「日本の製薬産業は、創薬力とグローバル化により成長してきました。創薬力は、大学で培った科学技術を活用し、産学連携による共同研究により、世界で第3位の地位となっています。病態解明による新規創薬標的の探索は産学連携が重要です。FDAから1998~2007年に承認された新薬のうち、大学・バイオテク企業によるものが42%を占め、特に科学的新規の新薬は大学・バイオテク企業が56%と存在感が増しています。日本の製薬産業は、産学連携による創薬と臨床開発の進展により医療の発展に大いに貢献できます」との見解を述べました。

パネルディスカッション

その後、京都大学 川上氏をコーディネーターとして、パネルディスカッションが行われました。新成長戦略の中で、製薬産業が果たさなければならない役割である「創薬」を、産官学の連携により推進・活性化することが急務であり、それぞれの立場でやらねばならないことについて活発に議論されました。最後に、川上氏は「それぞれ1人1人の責任で薬を見つめ、見守る、そして発言し、人類の健康について考えることが必要である」と締めくくりました。


パネルディスカッション

(広報委員会 メディア・オピニオンリーダー部会 小川 智)

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