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「未承認薬・適応外薬問題の解消に向けた取り組み」
患者会との新たな連携に向け、第18回患者会セミナー開催

「第18回製薬協患者会セミナー」が、7月10日、東京都千代田区の経団連会館で開催されました。今回のセミナーは、日本製薬工業協会(製薬協)が4月1日より設置した「患者会連携チーム」での初めてのセミナーとなりましたが、医療界で問題となっている「未承認薬・適応外薬問題の解消に向けた取り組み」をテーマとして、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議のメンバーである国立がん研究センター中央病院副院長 藤原康弘先生と製薬協仲谷常務理事から講演がありました。セミナーには34患者団体から48名の参加があり、講演後は活発な質疑応答が行われました。

2010/09/13

製薬協と患者団体との連携について

セミナー冒頭に患者会連携チーム星リーダーより「製薬協と患者団体の連携の経緯」として、1999年に実施した欧米患者会視察調査から始まった活動、その後、産業の理解と信頼関係の構築に向けた医療施設見学会、国際シンポジウム、患者会セミナー、ラウンドテーブルなどに幅を広げて取り組んできたことを紹介しました。そして2010年4月に製薬産業と共有できる重要な課題について、患者さんの声を代表する患者会の方々とより積極的に対話・意見交換を行うことを目的に「患者会連携チーム」を発足させたことを紹介しました。患者中心の医療の重要性が高まる中、患者会の役割が増してきており、双方の共通の課題について連携していきたいことを述べました。

講演1 未承認薬・適応外薬問題の解消に向けて

<講演要旨>

  • 未承認薬とは欧米4カ国のいずれかの国で承認または保険適応されていて日本では承認されていない薬剤を、適応外薬とは欧米4カ国のいずれかの国で適応が承認または保険適応されているが日本で認められていないものをいいます。
  • 医薬品の開発には製薬企業だけではなく、患者さん、医療関係者の協力が必要で、新薬の研究開発は多くの時間と費用がかかり、成功確率は約2万分の1と非常に低いです。ただし、未承認薬の開発に必要な時間や費用は通常に比べると少なくてすみます。
  • 日本の新薬創出力は世界で3番目であり、売上高が世界で5億ドル以上の202品目のうち日本オリジンのものが1割を占めます。
  • どこの国でもドラッグ・ラグはありますが、日本は長くなっており、産業の取り組みとして「未承認薬等開発支援センター」を昨年5月に設置しました。有識者による検討会議にて医療上の必要性について判断が行われ、企業に対して開発要請が行われています(公募により374件の要望があり109件について企業に開発要請)。
  • 国の取り組みとしては後発医薬品が参入するまでの間、一定の条件の下、薬価の引き下げを猶予して、革新的創薬に結びつくような薬価制度(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)が本年4月より試行的に導入されました。


日本製薬工業協会
仲谷 博明 常務理事

講演2 未承認薬・適応外薬問題の根本解決には何をすればよいか?―抗がん剤を例に―

1.治療開発の困難さ
薬の種が見つかって、論文などで発表されてから創薬されるまでの期間の中央値が25年だったという研究報告があります。治療開発がいかに困難で長い期間を要するものであるかがわかります。

2.未承認薬問題の背景を探る
まず、未承認薬とはどこでも承認されていない薬なのか、海外で承認されているが日本で承認されていない薬なのか、適応が認められていないのか、ということが正しく理解されないまま、議論されていることに問題があります。また、治験の困難さや審査期間が長いことを主要な原因としていますが、それは理由の一部に過ぎません。医師にとって治験に関わることがキャリアにならない、報酬が少ないなどの理由があります。また、生物統計家と各疾患領域の専門医が日本には絶対的に少ないという現実もあります。日本国内の新薬の上市は欧米と比べ約4年遅れているというデータがあります。外資製薬会社はまずFDA(米国食品医薬品局)から承認取得することに傾注します。その後、日本で薬を開発するかどうかの検討に1.8年を要しており、この治験着手までの期間が今後の課題です。日本の患者さんは治験のリスクを負いたがらないという問題もありますが、世界各地の患者さんが治験に参加することで、将来の患者さんへの貢献をするという観点が必要であり、患者会は要望するだけでなく治験参加の意味を伝えていくことも重要です。

3.適応外使用問題
適応外使用の問題は、1995年の頃から稀少疾患を中心に調査され、その後、研究班による提言も出されていますが、いまだに解決されずにいます。日本の日常診療の10~20%が適応外使用であるという報告がありますが、どこの国も同様の現実があります。緩和医療や小児医療などは適応外使用抜きでは成立しません。米国でもたとえば抗がん剤の951の適応について、FDAは33%しか承認していませんが、保険では使用が認められているのが現実です。このように海外では薬事承認と保険適応は別にしており、FDA等で承認された薬剤の適応外使用では医学の進歩に合わせて保険適応となる仕組みがあります。日本でも適応外を中医協(中央社会保険医療協議会)や「55年通知」(※)のもとに保険で認めていればいいのではという意見もありますが、適応外使用された場合は健康被害救済制度が適用されないという問題が臨床の現場ではあります。

※55年通知:当時の厚生省と日本医師会の合意に基づき、保険局長が支払基金理事長宛に出した通知。再審査期間が終了した医薬品を対象としており、薬事承認された効能効果や用法用量と異なった使用法でも薬理作用に基づいて使用された場合は保険支払いを認めるというもの。個別の判断については地域の支払い基金で判断している。

4.例外的使用(Compassionate Use)
日本には、「個人輸入」など世界ではあまりみられない現実があります。欧米では国の管理のもとで未承認薬へのアクセス権を提供するシステムが用意されています。これについても、日本における制度の新設を検討すべきです。

5.高い薬価
承認された後の問題として高薬価の新薬を個人、社会がどのように負担していくのかということがあります。一例として、米国で最近承認された前立腺がんのがんワクチンの治療費が年間1,000万円かかり、負担が可能な人しか医療を受けられないという現実があります。わが国には高額療養費制度があるので、ある程度自己負担は少なくすみますが、その分、社会全体の負担は大きくなり、その負担を誰がするのかということを議論していく必要があります。


独立行政法人国立がん研究センター中央病院
藤原 康弘 副院長

Q&Aセッション

コーディネーター:日本大学薬学部薬事管理学ユニット教授 白神 誠
パネリスト:藤原 康弘、仲谷 博明

<質問>
適応外の薬は効果があるのになぜ適応にならないのか。また、患者会としてできることは何か。

<回答>
効果があっても、開発申請に必要な費用と期間、市販後の安全性の確立などの莫大な費用が見込まれるため、製薬会社は開発を躊躇する。患者会ができることは、患者さんの医療ニーズを伝えること、そして適正使用の情報を患者さんに伝えることである。さらには本当に必要であれば申請に関する要望書を出すことも重要である。(藤原)


<質問>
未承認薬等開発支援センターは、今後も有識者の検討会で決められた案件のみに対応するのか。たとえばCAPS(クリオピリン関連周期性発熱症候群)の治療薬のように検討会の対象となっていないが本当に困っているものに対応することを考えているのか。

<回答>
そこまで広げたいという気持ちはあるが、現時点では対応することができない。治療法のない約26,000の疾患すべてに対応していくのはむずかしい。ひとつの基準として、医療上の必要性が高いものを優先して対応していくこととしている。(仲谷)


<質問>
適応外薬の問題として「55年通知」についてどのように考えるのか。また、「55年通知」がある中で製薬協としてどのように対応していくのか。

<回答>
「55年通知」があるおかげで患者さんが治療を受けられるという意味では意義がある。不十分なところがあるのであれば、きちんと詰めていくべきであろう。また、救済制度は日本にしかない制度で費用は製薬会社が拠出していることを知っていただきたい。(仲谷)
「55年通知」という行政通達の問題として、再審査期間が終了したものしか対象とならない。もし、患者会から提言するのであれば、内容にまで踏み込んでほしい。公知申請のハードルを下げるというのもひとつ、また稀少難病については薬事法の範囲から外すという方法論もある。(藤原)


<質問>
ある雑誌記事によれば、企業のホームページで公開されている抗がん剤の半分が適応外となっているとのこと。製薬協として国に対してどのような提案をしていくのか。

<回答>
治験期間の長さ、審査期間の長さ、高額な治験費用などの課題が解決されていけば、日本で開発していく意欲が高まる。是非、試行的に導入された新薬創出に関する加算制度について、患者会の皆さんに理解いただき正式導入されるよう応援していただきたい。(仲谷)


<質問>
世界でも治療薬のない数百人以下の超稀少疾病の治療薬の開発についても製薬協として対応して欲しい。また、患者団体としてできることをアドバイスして欲しい。

<回答>
患者さんにとってはとても重要な問題であると思う。現時点で良い答えはないが状況は理解できた。(仲谷)
通常のシステムではなく、医師主導の治験や厚生労働科学研究費などで対応を考えてみてはどうか。まずは専門医に相談してみることが重要と考える。(藤原)


セミナー終了後には交流会が行われ、参加した患者会同士の情報交換や患者会から講師、コーディネーターへの質疑応答が引き続き活発に行われました。


白神 誠 教授

(文:患者会連携チーム 和栗三雄、遠藤永子)

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