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「第20回政策セミナー」開催される
未承認薬・未承認適応問題の早期解決に向けて

2009年10月7日、品川インターシティホールにおいて、「第20回製薬協政策セミナー」が開催されました。今回は、『未承認薬・未承認適応問題の早期解決に向けて』のテーマで開催され、患者団体、政治家、行政、医療関係者、メディア関係者、会員会社などから277名の多数の聴衆が集まり、熱心に耳を傾けました。

2009/11/04

基調講演

庄田会長の開会挨拶に続いて基調講演として、未承認薬使用問題検討会議座長の国立病院機構名古屋医療センター院長堀田知光氏より、「未承認薬・未承認適応の現状と課題」の演題で講演が行われました。
いわゆるドラッグ・ラグは米国と比較しておよそ2年半の差があります。新薬の開発には基礎研究から承認まで12~13年かかる可能性があり、承認される確率は約20,000分の1であり、金額にして300~500億円かかると言われています。どこでラグが生じるかというと、まずは治験の着手自体が遅いということ。そこに治験や審査の問題が重なって最終的にラグが生まれています。
治験の体制整備については2007年に5カ年計画が策定され、治験中核病院の体制整備、人材育成、普及啓発、企業の負担軽減があげられています。その他として国際共同治験の推進やGCP省令の見直しが言われています。
その後、2007年7月には有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会報告、9月には治験のあり方に関する検討会報告により、前述の項目に加え、総合機構の体制充実、稀少疾患の治療薬の人道的な使用を可能にするコンパッショネート・ユース制度の導入、治験にかかわる規制緩和や手続きの整備などを通じて個人輸入を制限する方法が提案されています。
未承認適応については日本では承認の範囲が狭いという指摘がありますが、これは誤解で保険償還のシステムの問題です。米国ではFDAの承認内容はきわめて厳格なものの、承認事項になくても十分なエビデンスがあれば保険償還が可能なシステムになっていますが、日本では保険医は特殊な治療を行えないことが規則によって定められており、米国とは考え方が違います。最近では抗がん剤を中心に例外的に使用を認める緩和策、医学上公知である適応に関しては治験を行わずに承認申請を認める制度も発足し、さらに高度医療評価制度により未承認薬、未承認適応との併用を可能とする枠組みもできましたが、いずれも例外的な扱いであってルールではありません。しかし、現状を批判しているだけではどうにもなりません。
また、私見としながらも、企業に積極的に治験に着手してもらうために思い切ったインセンティブ制度の導入、たとえば公衆衛生上もしくは途上国でニーズの高い医薬品を開発した企業に他の薬の優先審査権を与えるバウチャー制度の導入、画期的な新薬の開発を促す薬価制度などが提案されました。さらには治験の集中化・効率化、国際共同治験に参加するためのCRCの英語力の向上など障壁の解消、PMDAの審査官の官民交流を活発化することによるノウハウの共有について言及しました。その後、基調講演に続いて製薬協が本年5月に立ち上げた、「未承認薬等開発支援センター(PDSC)」についての説明が専務理事の吉野卓史氏から行われました。


会場全景

パネルディスカッション

第2部として日本経済新聞社編集委員中村雅美氏をコーディネーターとするパネルディスカッションが開催されました。
最初はベンチャー企業として未承認薬の開発を行っているノーベルファーマ株式会社代表取締役塩村仁氏による発表が行われました。
ノーベルファーマは2003年に設立された会社で、必要であるが開発が試みられない医薬品の提供を通して医療に貢献することを使命としています。株式会社なので利益を追求することは必要ですが、それを目的とするのではなく、事業の結果として利益に結びつくということを方針としています。
2008年には3つの医薬品の承認を取得しており、現在、大手の医薬品会社からライセンスを受けてさらに3品目の開発を進めています。ライセンスに加え、さまざまな協力が得られている各社に感謝が述べられました。
いずれも稀少疾患薬として指定され、通常の医薬品よりははるかに軽い負担で開発ができますが、それでも5~10億円くらいの開発コストがかかります。また、医薬品は承認を獲得して終わりではなく、市販後の安全性の確認、すなわち副作用情報の収集、評価が非常に重要です。大企業、特に上場企業の場合は株主から利益を出すことを求められているため100億円くらいの売上が想定できないと開発に着手できません。しかし、ノーベルファーマのような小企業だと損益分岐点が低いので5億円でも可能になります。未承認薬の開発は小企業向きであり、大企業は自社で開発しないと判断したら小企業にぜひライセンスをして欲しいと思っています。稀少疾患の治療薬は市販後の調査費用を考えると高額にならざるを得ません。そのような医療を必要としている方は社会的、経済的弱者であることが多いのです。こういう方を助けるための保険という枠組みの助け合い精神は日本の美徳なのでぜひ維持して欲しいと思います。
続いて患者の立場から卵巣がん体験者の会スマイリー代表片木美穂氏から発表がありました。その中で、患者目線から見ると、ドラッグ・ラグには未承認薬の問題、未承認適応の問題に加えて、承認されているにもかかわらず正しく使用されないという3つ目のラグもあることを指摘しました。
未承認適応については卵巣がんを例にとり、既存の治療薬に耐性のがんに対する治療の選択肢が極めて乏しいこと、海外で適応が認められている薬の多くは日本で承認されているにもかかわらず、卵巣がんが適応外のため、使用できないこと、エビデンスに基づいて適応外治療をした結果、訴えられても医者を護ってくれないと医療従事者も困っていることが紹介されました。
支援センターに対しては、患者からの要望が強い薬について直接ヒアリングして検討して欲しいこと、特許が切れた薬剤の開発支援の強化、開発や取り組み状況に関する積極的な情報公開について要望されました。
また、3つ目のラグの例として、肺高血圧症の薬など高額の治療薬を必要に応じて使用した場合、保険請求時に減額査定されてしまうと差額が病院の負担になるため、承認上は使用量の上限がないにもかかわらず必要量を正しく使うことができないという問題が紹介されました。
最後に厚生労働省医政局研究開発振興課治験推進室長佐藤岳幸氏より行政の立場からの発表がありました。
政府からの要請で補正予算の執行停止を行いましたが、行政としてはこの問題を資金だけでなくさまざまな面から支援をしています。未承認薬使用問題検討会の設置、治験推進の環境整備、医師主導治験への資金提供、高度医療支援のための厚生労働科学研究など実施しています。ドラッグ・ラグについては開発が進まない14品目をなんとかしたいと2009年度補正予算を立ち上げ、14品目中12品目の支援が決まりました。一方、適応外と使用問題検討会で俎上にあがらなかった未承認薬については学会や患者さんからの要望を募集しました。開発権を有する企業に開発意志を確認し有識者会議で開発優先順位をつけることになります。
医療ニーズのある医薬品の開発は厚生労働省だけの努力でどうするということではなく、患者さん、開発企業、一般市民にも理解してもらい、オールジャパンで取り組むべき課題なので協力をお願いしたいと思っています。
続いて中村氏をコーディネーターにして各パネラーとの間でディスカッションが行われました。
まず、塩村氏から審査官のキャリアパスとして官民の人材交流の活発化の重要性が主張されました。次に、片木氏からは患者のあり方として、自身がもっと勉強して医療現場や学会、厚生労働省、製薬会社それぞれの実態、役割をわかったうえで前向きに議論する姿勢の必要性について発言がありました。また、佐藤氏からは、患者の声にもっと耳を傾けたいとの発言がありました。
また、日本の患者に良い薬を届けるためには、根本的な考え方が異なるアメリカの制度を踏襲するのではなく、現行の皆保険制度の枠組みで日本独自の人道的支援を取り入れた制度に発展させたり、国際共同治験参加を難しくしている要因を軽減し、承認までのプロセスよりも市販後の安全性情報管理を重視した制度への転換で導入を早くすることなどが提言されました。 一方、承認を獲得するには何らかの治験を実施して信頼性の担保されたデータを提出することが過去の薬害などの経験を踏まえても必須であり、それを完全になくすことはできないが、日本は、安全性にとりわけ敏感なので一般の人が聞いて納得できる方法を模索する必要があることが話し合われました。
引き続き、フロアからの質問として小児科領域における医師主導治験の実施の難しさ、小児用剤型が製造中止になった事例を挙げての問題提起や、CINCA症候群という小児の稀少疾患で、世界のどこでも承認されていない治療薬を使えるようにするにはどうしたらよいのかとの質問があり、各パネリストからそれらの問題に対する意見やアドバイスなどがありました。
終わりに、中村氏は、「本日は未承認薬・未承認適応をどうするか、解決に向けての提言ができたかは不安ですが、たくさんの提言をいただき、考える第一歩になったのではないでしょうか。近々、別の機会を設けて具体的な手だてについて考えていきたいと思います。参加された皆さん、パネラーの皆さんのご協力に感謝します」とまとめました。


パネルディスカッションの様子

(文:広報委員会 メディア・オピニオンリーダー部会 小松義明)

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