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第17回製薬協患者会セミナーを開催
最高の医療をうけるための患者学-米国:最新がん治療の現場から-

第17回目となる製薬協患者会セミナーが、2月20日、東京都千代田区の海運クラブで開催されました。今回は、全米No.1の患者支持率を誇るテキサス州立大学M. D. アンダーソンがんセンターで腫瘍内科医を務め、患者中心の医療およびチーム医療の大切さをいつも肌で感じ実践されている上野直人先生を招聘し、最新がん治療の現場の話を交えながら「最高の医療をうけるための患者学」をテーマに講演がありました。
会場には27患者団体から43名の参加があり、講演後は活発な質疑応答が行われました。
以下に講演要旨を紹介します。

2009/05/11

いい医療、いい病院とは

日本ではドラッグ・ラグが叫ばれていますが、いい医療を受けようとした場合により重要なことは、(1)患者自身がどこまで真剣に自分の疾患・医療のことを考えているか、(2)医療従事者はどれだけ患者の精神面(心)のケアに力を入れているか、という2点だと思います。アメリカでいい医療を提供している医師は患者の精神面のケアに対する意識が高く、患者に対し自らの病気に正面から真剣に向き合うようアドバイスをしています。
また、いい病院とは、単に医療を施すだけではなく、新しい医療を提供できる病院であると思っています。私の病院が全米ナンバーワンの評価を得ることができたのも、臨床試験を数多く行った実績があるからです。加えて基礎研究と臨床試験を結びつけた研究、また、医療従事者を巻き込んだチーム医療とともに患者中心の医療の実践が評価されていると思っています。

いい医療の実践につながる患者中心のチーム医療とは

どんな疾患であっても、チーム医療は必要不可欠なものです。チーム医療を実践する際には、(1)科学的根拠に基づいて判断(治療ではありません)していること、(2)標準療法であれ他の治療法であれ、なぜその治療を行っているのかについてチーム医療を実践する全員が納得していること、(3)医療従事者が連携しながら研究活動(ちょっとした研究でよい)を行っていること、この3点が大切です。
日本でがん医療が進展しない原因の一つは、がん専門以外の医療従事者が治療に参加していないからではないでしょうか。がん以外の疾患にもかかっている患者の立場から医療を考えてみると、がん専門の病院であってもやはりがん以外の専門家をチームに加えて治療することが大切です。

がんにおける患者中心のチーム医療の実践

私は、専門であるがん治療において、関係者を3つのチームに分けたチーム医療の概念を提唱しています。チームAは医師、看護師等で構成される専門家集団で、アクティブに医療を提供する役目を担っていますが、チームAだけで医療は解決できません。チームBは心理職や福祉職で構成される集団で、患者との対話型ケアを行ったり患者の上手な聞き手になることでチームAをサポートする職種の集まりとなります。チームCは患者の家族・友人、患者会、製薬企業、政府など全体を見るような役割を担う方で、患者やチームA・チームBを包括的に支援していきます。
各メンバーは、各チームに与えられた役割を果たしながら、チームを超えて役割を担っていくことが大切です。医療分担したり、効率化を第一に考えてはいけません。薬の説明は薬剤師だけに任せるのではなく、医師も説明するといったように、いかにそれぞれが役割を担っていくことができるかがポイントです。

患者の満足度

チーム医療の目標は、患者満足度をできるだけ高めることにあります。それは、病気を治したりコントロールすることだけではなく、より高い生活の質を確保することをも求めています。したがって、実際の医療提供にあたっては患者の完全な納得と理解を得ながら、その中で満足し得る生活の質を確保していくことが不可欠と言えます。
そのためには、患者は常に医療従事者に話をする、逆に医療従事者は常に患者が話をする機会を作るよう心がけなくてはなりません。患者の話す内容は、聞き手が誰かによっても変わりますし、患者の状態・機嫌によっても変わるものです。ですから同じような質問であっても常に患者自ら話をしてもらうことが大切となります。そしてそのことは、「お任せ医療」(患者不在の医師任せの医療)を防ぐことにもつながります。

「患者の権利」を生かすためには、患者自身が自らを変えることが早道

患者にはいろいろな権利があります。より人間的で質が高く思いやりのあるケア、わかりやすくすべてを網羅した情報などを受ける権利があります。しかしながら、権利を主張だけすればいいものではありません。医療提供者側がこのような権利のことを十分には意識していない環境において、ただ主張しても、モンスター患者と言われたり、患者会がモンスター患者を作っていると誤解されてしまいます。それよりも、この権利が、ごく普通のものであるという環境作りのほうがもっと大切です。
また、患者の権利を日本の医療に浸透させるためには、制度やシステムを変えることより、患者が自らを変えることの方が容易です。それを、最高の医療をうけるための9ケ条としてまとめてみました。

最高の医療をうけるための9ケ条

  1. 病気になってもあせらない
  2. 医師の話した内容を取得する(メモをとる、許可を得て録音する)
  3. 医師の話した内容を分かり易くする(わからない時は質問したり、書いてもらったり工夫する)
  4. 質問上手になる(医師の忙しさも考えながら余裕をもって質問する、質問内容を事前に整理する)
  5. 医師の話した内容を消化する(自ら言葉で言い返してみる)
  6. 標準療法なのか、それとも違うのかを確認し、根拠を求める
  7. ベネフィットとリスクを考慮して治療やケアを決める
  8. 自分の希望を伝える
  9. 恐れずに果敢にチャレンジする(セカンドオピニオン、臨床試験への参画)

今日最も伝えたかったことを一言でいうと、【「病気」に勝つ、さらに「自分」に克つ】ということになります。今日お集まりの患者会の皆さまも、ぜひ実践してみてください。
今回の患者会セミナーは質疑応答の時間が足りなくなるほど参加した患者会の皆さんの心に響く内容であり、非常に満足度の高いものでした。広報委員会では今後も、患者中心の医療の実現に少しでも貢献できる活動を進めていきたいと考えています。

(文:広報委員会ペーシェントグループ部会 植栗 聡)

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