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理化学研究所横浜研究所へのプレスツアーを実施

製薬協広報委員会は、最新の医療関連施設を記者の方々と訪問し、業界における科学技術の進歩を見聞する場を提供しています。2月23日に開催されたプレスツアーには、生憎の雨天にもかかわらず、一般紙・通信社・業界紙他を含め19名の記者が参加しました。訪問先となった理化学研究所横浜研究所は、世界最大規模の核磁気共鳴装置(NMR)集積施設であり、日本におけるヒトゲノム解読プロジェクトの中心となったところです。

2009/05/11

同研究所では、植物の生産力を向上させる植物科学研究、免疫システムの機構を解明して医療への応用を目指す免疫・アレルギー科学研究、生命現象を分子レベルで理解して細胞の機能を解明するオミックス基盤研究などを進めており、研究成果を社会に還元して国民生活・文化・教育の向上へ貢献することを使命の一つとしています。今回のプレスツアーは同研究所の研究推進部企画課の方々の協力で実現することができました。当日のプログラムは下記の通り、2演目の講演と3施設の見学会となりました。

講演Ⅰスギ花粉症ワクチン開発

免疫・アレルギー科学総合研究センター谷口 克センター長
世界初のアトピーマウスを利用してのアトピー性皮膚炎の原因解明と治療法の開発、環境とアレルギーの因果関係をテーマとした講演の中で、谷口先生は、「アレルギー性疾患は、人間が物質文明を追求したために生じた免疫機能失調症であり、細菌感染や回虫感染などが一般的であった時代には大変稀な病気であった」と述べ、衛生状態が良くなったために免疫系が本来の仕事を失って花粉症などの文明病が登場してきたという理論を紹介しました。同センターでは、予防治療効果が高く、アナフィラキシーショックの危険性の少ないワクチン開発を2001年から進め、マウスなどの動物実験できわめて有効な成果を出すワクチンの開発に昨年成功しています。このワクチンは2種類のスギ花粉主要抗原を遺伝子工学的手法で合成し、さらにアナフィラキシーショックの誘発を防ぐためにポリエチレングリコール修飾をしたもので、理化学研究所は、このワクチンの基礎研究から臨床研究の間をつなぐ橋渡し研究を行ったそうです。スギ花粉症は国民の20%もが罹患する社会問題であるため、記者の方々も関心は高く、非常に活発な質疑応答が行われました。

講演ⅡNMRを活用した植物の生合成パスウェイ研究~創薬シーズを目指して

植物科学研究センター多様性代謝研究チーム村中俊哉客員主管研究員(横浜市立大学木原生物学研究所教授)
村中客員主管研究員からは、甘草の地下茎等から抽出されるグリチルリチンの生合成機構の解明と合成酵素遺伝子の同定、ならびに植物の新たなステロール生合成経路の発見にNMRが大きく寄与したことが説明されました。
グリチルリチンは天然の甘味料や医薬品としての需要が大きい天然有機化合物ですが、栽培された甘草はグリチルリチンの蓄積量が少なく、野生の甘草の採取に依存しているのが現状です。この研究成果は、栽培に適した甘草の品質改良や栽培条件の最適化研究を可能にし、希少有用植物の乱獲防止や生態系の保全に役立つといわれています。また、他の植物や酵母にこの遺伝子を導入することで天然甘味成分の工業生産化の期待が持たれています。
ステロールは細胞膜の構成成分等として生物に広く共通して存在していますが、動物と植物の間でその生合成経路が異なるとされていました。村中先生のグループは、動物にしかないと考えられていたラノステロールの合成経路が植物にも存在することを、NMRを用いた解析で発見しました。植物におけるラノステロール経路の寄与は病気や障害などの緊急事態に多く働くことがわかってきたことから、病障害に強い植物に品種改良する手段として期待されています。

研究所 施設見学

2つの講演の後、参加者は3班に分かれ、中央NMR棟、オミックス基盤研究領域研究施設、植物科学研究センター研究施設を順次見学しました。
理化学研究所が保有する高性能NMR装置が整然と並ぶ中央NMR棟では、カットモデルを使ってのNMRの内部構造と機能の説明、そして、研究目的によって600MHzから900MHzのNMRがさまざまな企業や機関によって効率良く使用されている旨の説明がありました。製薬企業にとっては、NMRを活用することでタンパク質と化合物との相互作用を立体構造レベルで解析することが可能となり、創薬プロセスの合理化が可能となってきます。
オミックス基盤研究領域研究施設では、DNAの塩基配列を解明するシーケンシング技術がこの10年で驚異的に発達し、解読速度が10,000倍以上に上がったことが説明され、また、参加者たちは実際に新旧のシーケンサーを見比べて、多くの質問をしていました。理科学研究所が主体となり、遺伝暗号の意味を解明するために結成された国際コンソーシアムFANTOMにより、タンパク質を作り出さない非タンパクコードRNA(ncRNA)が全遺伝子の約53%もあることが発見され、また、独自の機能を果たしている可能性が示唆されました。この発見はこれまでの遺伝子の基本的概念を覆すものであるため、「RNA新大陸の発見」と称されています。また、細胞の形質を決定し、機能を維持するプログラムの解明で、iPS細胞の再生医療への応用が示唆されています。植物科学研究センター研究施設では、花粉が外部に飛散しないよう遮断された温室で、収量を増加させるために遺伝子が組み換えられたイネ栽培の様子を見学し、担当研究員から説明を受けました。目に見えない分子レベルの話より、植物という身近なものに対する参加者の関心の高さが垣間見られた瞬間でした。
記者の方々からは、「研究員・学生であったころの 実験室を思い出してドキドキした」、「内容が高度過 ぎて、記事を書くのがむずかしい」などの声が聞かれ ました。製薬協では今後とも記者の方々が望むより 良いプレスツアーを企画したいと考えています。

(文:広報委員会メディア・オピニオンリーダー部会 尾張 哲哉)

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