イベント・メディア向け情報イベント・メディア向け情報

第14回製薬協会員会社代表者セミナー開催される

製薬協は7月16日、大阪で第14回代表者セミナーを開催しました。今回のセミナーでは「新型インフルエンザと製薬会社の対応」をテーマに、4人の専門家によるパネル・ディスカッションが行われ、各参加者は差し迫った危機への思いから、真剣な面持ちで発表に聞き入りました。製薬協会員企業に対して、迫り来る新型インフルエンザ・パンデミックへの警鐘を鳴らすセミナーとなりました。

2008/07/23

「新型インフルエンザと製薬会社の対応」をテーマに

代表者セミナーは、製薬協会員会社の代表者が一堂に会し、意見交換の場として毎年7月に開催されています。今回、会場となった大阪全日空ホテルには、会員会社の代表者など約120名が集いました。

今回のセミナーは、近年社会的な関心が危機感を伴って高まりを見せている新型インフルエンザに対し、企業にとっての危機管理という側面から焦点を当てたものとなり、産官学各代表による熱のこもった発表とパネル・ディスカッションが行われました。

開会にあたり、製薬協の庄田隆会長は「今年4月にWHOが公表したヒトへの鳥インフルエンザ感染状況によると、2000年までの6年間で14カ国、382症例が確認され、241名が死亡している。国内ではヒトでの発症事例は報告されていないものの、新型インフルエンザが国内で発生した場合、企業の業務執行は大きな支障をきたすことが予測される。一方、製薬企業は医療に必須な医薬品を供給しており、業務の継続に対する社会的責任は極めて重い。このため、各企業は非常事態に備えて対応策を事前に策定しておくことが求められている。本セミナーは、このような観点から専門家にご講演いただき、企業の対応策を検討する上での参考としていただくことを目的とする」と本テーマの選択に至った背景を説明しました。

続いて、独立行政法人医薬基盤研究所理事長山西弘一氏をコーディネーターとし、パネリストとして国立感染症研究所感染症情報センター第一室長谷口清州氏、厚生労働省健康局結核感染症課感染症情報管理室長新型インフルエンザ対策推進室長難波吉雄氏、特定非営利活動法人事業継続推進機構危機管理対策機構事務局長細坪信二氏、中外製薬株式会社リスク・コンプライアンス部長渡辺邦敏氏の4人が登壇し、前半部でプレゼンテーションが、後半部でパネル・ディスカッションが行われました。

最初に、コーディネーターの山西氏は「新型インフルエンザ(パンデミック)は現れるか?」と題し、過去に人類が経験してきた西ナイル熱、ポリオ、SARS、天然痘などの種々のウイルスと人類の戦いを振り返り、さらに、スペイン風邪、アジア風邪、香港風邪などの過去のインフルエンザ・パンデミックの歴史を説明しながら、現在問題になっている新型インフルエンザウイルスの現状およびそのパンデミックの可能性を概説し、「備えあれば憂いなし、しかし何を備えるか?」と問題提起しました。


谷口清洲氏によるプレゼンテーション

これに対し、まず谷口氏は「新型インフルエンザの医学」と題した発表を行い、新型ウイルスH5N1型は1997年に出現し、2008年現在、家禽の間で蔓延し続け、ヒトへの感染も持続していること、持続的で効率的なヒト-ヒト感染はまだないこと、すなわち、警戒レベルはフェーズ3にあることなどを説明しました。そして、パンデミックの社会的インパクトに触れ、スペイン風邪並ならば入院200万人、死亡64万人とし、危機管理として、パンデミックは止められない、だとすれば、【1】罹患率と死亡率を最小限に抑える、【2】社会基盤の破綻を最小限に抑える、【3】医療システムを維持する、そして【4】国内への侵入と流行の拡大を少しでも遅らせる(時間を稼ぐ)ことが重要としました。また、現状のワクチンが株の決定から供給までに最大1.5年必要なことや、抗ウイルス薬の人口当たりの備蓄量が他国の40%に比べ日本は25%に過ぎないことなどの課題や、スペイン風邪流行時に米国の二つの都市間で明らかとなった、人の移動制限の有無による被害規模の差を例に、感染者と非感染者の分離の重要性を指摘しました。

次に、難波氏は「新型インフルエンザ問題の行政の取組み」として、新型インフルエンザに対する当局の具体的対策を紹介しました。その内容として、【1】新型インフルエンザ対策行動計画の策定とそのガイドラインが2007年3月に定められたこと、【2】2007年10月に新型インフルエンザ発生時においては首相を本部長とする対策本部設置を閣議決定したこと、【3】2007年度中に抗インフルエンザ薬を2,800万人分、人口の23%分を備蓄したこと、【4】プレパンデミックワクチン(H5N1)として2006年度と2007年度に各1,000万人分を備蓄し、2008年度も1,000万人分の備蓄を予定していること、【5】ワクチンの製造方法を鶏卵培養(製造期間:0.5~1.5年)から細胞培養(製造期間:3~6カ月)へ切替えることを確認したこと、【6】流行時の入院勧告と停留等の水際対策用の法的整備を実施したこと、また、【7】関係省庁と自治体参加により発生時の訓練を3回実施したことなどが説明されました。その上で、行動計画上の国内の被害想定人数として、受診者数最大2,500万人、死亡者数17万~64万人としました。

細坪氏は「事業継続のための企業の取組み-危機管理の視点から-」と題し、新型インフルエンザ・パンデミック時でも、社会機能を維持するための考え方、すなわち「事業継続性(BC)」の基礎から具体的対応策までを平易に解説しました。その中では、経営の視点でのBCとして、【1】対策よりも戦略を重視すべきこと、【2】危機・災害に対しては組織として必ず勝たなければならないビジネスの勝負の場であること、【3】危機・災害は必ず自分たちの想像や想定を上回ること、【4】危機広報が重要であること、【5】対応策次第では経営者の責任が問われかねないこと、また、【6】いつまでに、どんなことができたかが問われるようになってきていることなどが紹介されました。また、BC戦略の基本コンセプトとして、社員の生命を第一に、会社の社会機能を維持し、企業の存続のための継続を意図し、収益確保より社会的責任を果たすことを挙げました。そして、対策に対する効果的なポイントとして、スピードが重要であり、いつ、どんな状況に対策をスタートすべきかということと、業務の停止を含む業務の絞り込み・優先順位付けが重要であると強調しました。

パネル・ディスカッション風景

最後に、渡辺氏は「企業における対策事例」として、製薬協と中外製薬における取り組みをそれぞれ紹介しました。製薬協は2008年2月に「製薬企業における業務継続のための新型インフルエンザ対策ガイダンス」を作成し、同年4月新型インフルエンザ対策タスクフォースを設置し、当面取り組むべき事項として【1】日薬連と連携して薬事法等法規制にかかわる問題の検討を行政当局に要請すること、【2】日本医薬品卸業連合会や細菌製剤協会等の関係団体と意見交換すること、また、【3】行政当局等の動向把握と会員企業への情報提供を行うこと等を決定したことが示されました。また、中外製薬の取り組みとしては、対策をとる前提条件として、【1】製薬企業には医薬品の安定供給という社会的責任があること、【2】プレパンデミックワクチンの有効率、接種対象、接種時期が考慮されていること、【3】通信・運輸・電気・ガス等の社会インフラ機能は維持されていること、また、【4】8週間にわたり出勤率は75%が確保されていることなどを設定したとしました。その上で、社員を一般業務従業員、優先業務ワーカー、さらにはコア優先業務ワーカーに分け、出社基準を作成しました。医薬品の安定供給の観点では、パンデミック時においては従業員の安全、就業確保、原材料の調達等の点で医薬品安定供給に懸念があることから、適正な在庫量の確保のため一定の在庫積み増しを検討していること、全製品の在庫積み増しが理想だが、緊急性、代替性、直接的な生命との関連性等を考慮し、重要製品群の選定を行うこととしました。その他の検討ポイントとして、従業員の安全管理、パンデミック時の業務執行体制構築、感染予防備品の準備、従業員への啓発を指摘しました。各製薬企業がなすべき具体的な準備をわかりやすく説明した本プレゼンテーションは、大変有用なものとして参加者に受け入れられました。

この後、約40分間のパネル・ディスカッションが行われました。フロアからは事前に集められたものも含め多くの質問が寄せられ、活発な質疑応答は終了時間を延長して続けられました。

以上
(文:広報委員会コミュニケーションツール部会 笹生 好久)

このページのトップへ

  • キャンペーン
  • 製薬協ニューズレター メールマガジン登録はこちらから
  • くすり研究所
  • 治験について
  • グローバルヘルス
  • Stop AMR 薬剤耐性に対する製薬協の取り組み
  • APAC
  • くすりの情報Q&A
  • 製薬協のテレビCM