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シンポジウム2007の開催

「患者中心の医療を考えるシンポジウム2007」を開催

患者の声をいかに医療政策決定プロセスに反映させるか

「患者中心の医療を考えるシンポジウム2007」(製薬協主催、米国研究製薬工業協会/欧州製薬団体連合会協賛、厚生労働省後援)が12月15日(土)、経団連会館国際会議場で開催されました。土曜日の開催にもかかわらず100名以上の様々な疾患の患者会をはじめ、行政関係者、医療関係者、ジャーナリスト、製薬協会員会社など計210名程が参加される中、「患者の声をいかにして医療政策に反映させるか」ということについての熱のこもった議論が交わされました。

2007/12/18

4回目の「患者中心の医療を考えるシンポジウム」

製薬協広報委員会では、「患者中心の医療」実現に向けて欧米の最新の事例を学び議論する場として、2001年以来、隔年ごとに「患者中心の医療を考える国際シンポジウム」を開催してきました。第4回目となる今回は、欧米の事例を学ぶというところから一歩前進し、日本の患者会がいかにして「医療政策決定プロセス」に関与していけるか、そのための連携あるいは支援のあり方はどうあればよいかを具体的に議論する場となりました。

そうした機会を与えてくれたのが、昨年10月に公表された、東京大学医療政策人材養成講座2期生の研究班がまとめた論文『患者の声をいかに医療政策決定プロセスに反映させるか』です。今回のシンポジウムはこの論文を柱とし、論文で提起された内容に賛同した10の患者会で構成された「患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会」(注1)(座長:日本リウマチ友の会・長谷川三枝子会長)が実施した調査結果の発表、そして後半のパネルディスカッションという構成で行われました。

プレゼンテーション

1.「患者の声をいかに医療政策決定プロセスに反映させるか」

全国社会保険協会連合会理事長/東京大学医療政策人材養成講座2期 伊藤雅治氏

当該論文の筆頭研究者である伊藤さんは、平成18年度の医療制度改革の過程を研究対象として詳細に分析し、調査結果から、現在の医療に対する不満が国民不在の制度決定プロセスに集中していることなどを指摘しました。そして、患者の声を医療政策決定プロセスに反映させる仕組みづくりについて、行政、患者会に対しそれぞれ以下の提言を行いました。

行政への提言:
(1) 医療関係三審議会の上部に医療制度基本問題審 議会(仮称)を設置する
(2) 審議会委員の人選・任命について患者・市民代 表参加のルールを確立する
(3) パブリックコメントの実施方法の改善
(4) 審議会の運営方法の改善
患者会への提言:
(1) 患者会を支援する以下の機能を持った横断的組 織の立ち上げ
  • 医療に関する政策動向や審議会等の開催状況を 患者団体に知らせる
  • 医療政策について患者団体間での勉強や意見交換
  • 政策立案者と患者団体との橋渡し
(2) 政策形成のため外部の協力者との連携を強化

また伊藤さんは、現在の審議会への患者代表者の参加状況を紹介する中で、仕組みとしては必ずしも十分ではないが、これらの患者代表者の参画が一定の成果を生んでいると強調。そして、英国のLMCA(Long-term Medical Conditions Allianceの略称。現在は、Long-term Conditions Allianceに改称。長期に医療を必要とする患者団体の連合組織)について、その発足の経緯と軌跡を紹介し、彼等がNHS(National Health Serviceの略称。英国の国民保健サービス)との関係を密にして医療政策に関わる委員会に参画し提言を行っていることを例に、日本においても、医療政策を検討する場には医師会や病院だけでなく、もっと医療を利用する立場の人間が幅広く参加すべきであると述べました。

2.「患者の声を医療政策決定プロセスに反映させるためのシステムづくりをめざして」

社団法人日本リウマチ友の会会長・患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会座長 長谷川三枝子氏

長谷川さんは講演の冒頭、研究班による論文が提起する内容に賛同した10の患者団体で「患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会(以下、「あり方検討会」)を結成したことを紹介。続いて、当該論文を患者会として検証することを狙いとして、あり方検討会が全国の患者会に対しアンケート調査を行った(有効回答数:292団体)こと、その結果、9割以上の患者会が「患者・市民の声を医療政策決定プロセスに反映させる仕組みを構築することが必要」だという論文の趣旨に賛同していることを紹介しました。

しかし一方で、(1)疾病の違いなどから、患者会同士の連携が難しい、(2)人的・財政的・情報資源が乏しく、新たな活動を積極的に進める余裕がない、などの課題が浮き彫りにされ、要望をとりまとめそれを提案していく環境が必ずしも整っていないことなども指摘されました。その上で長谷川さんは、これらの課題を解決し患者の声を医療政策に反映させるためには、(1)連携のためにお互いの違いを認め尊重し、その上で一致点を見出すこと、(2)医療政策に関する情報提供、患者会同士の意見交換・情報共有の仕組み、専門家や政策立案者との橋渡しなどの機能を持ったサポートシステムを作ること、が改めて必要であると強調しました。

また、この調査で9割の患者会が、あり方検討会の活動に関心を示していることの紹介があり、こうした多くの患者会の期待に応えるとの意図から講演の最後には、「課題を乗り越えて、患者の声を行政や議会に届けるためのサポートシステムの構築に着手しなければならない」として、以下の宣言がなされました。

宣言 患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会は、患者と市民のための医療制度を実現するために、近い将来、多くの患者会から望まれている 「患者会サポートシステム」を作ることを目指します。
そのために、私たちは、調査結果から導き出されたさまざまな課題への取り組みを今日から開始します。
具体的には、医療政策情報の提供や患者会同士の意見交換・情報共有などを通じ、サポートシステムのあり方を検討していきます。
また、こうした取り組みをより多くの患者会とともに進めていくために、全国の患者会にサポートシステムづくりのための討議に参加していただくよう呼びかけていきます。

注1:<患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会メンバー>(2007年12月15日現在) 癌と共に生きる会/再生つばさの会/社団法人埼玉県障害難病団体協議会/特定非営利活動法人腎臓サポート協会/全国パーキンソン病友の会/特定非営利活動法人日本アレルギー友の会/日本肝臓病患者団体協議会/社団法人日本リウマチ友の会/社会福祉法人はばたき福祉事業団/社会福祉法人復生あせび会

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パネルディスカッション

コーディネーター:
埴岡健一氏(東京大学医療政策人材養成講座特任准教授/日経BP社・日経メディカル編集委員)

パネリスト:
伊藤雅治氏
長谷川三枝子氏 
海辺陽子氏(癌とともに生きる会副会長/厚生労働省がん対策推進協議会委員)
佐藤(佐久間)りか氏(東京大学医療政策人材養成講座研究班共同研究者)
上田博三氏(厚生労働省大臣官房技術総括審議官)
西島英利氏(参議院議員厚生労働委員/自由民主党国会対策副委員長)

第2部のパネルディスカッションでは、行政・政党からもパネリストを迎え、第1部での伊藤さんの提言と、患者会の調査結果とそれに基づくあり方検討会の宣言を受けて、これまでの医療政策決定プロセスにおける問題点と今後の方策について具体的な議論が展開されました。冒頭、コーディネーターである埴岡さんから、患者会が強力に推進し、議員立法として成立したがん対策基本法を事例に、患者(会)の医療政策決定の場への参加、連携の必要性、社会全体の支援の必要性など、がん対策基本計画に謳われる理念の大切さが強調されました。その後、各パネリストからの意見発表があり、ディスカッションの中で伊藤さんからは、新しい「医療基本法」のイメージなども紹介されました。


~パネリスト意見趣旨~

佐藤(佐久間)氏:伊藤氏の共同研究者として、モデルケースである英国のLMCAを訪問調査した。英国で患者視点の導入が進んだ背景に、自ら声を上げ政府に要望を届けていこうとする医療消費者側の連携組織としての成熟があったことも見逃せない。小さな組織には情報やノウハウを提供、支援する一方、実現可能な政策提言をしていける人材が必要。問題は財源の確保。患者会側も、無償協力をせず、行政の予算の中で患者の声を吸い上げることを検討すべき。広報予算も必要。

海辺氏:がん対策協議会に参画して、患者代表を支える組織力の弱さを痛感。協議会の緊迫した場面では、素人は口を出すなというような対応をされることもあり、残念な思いをした。議論を公に戦わせる必要があると感じているが、そのためには一人の声よりもみんなの声=オールジャパンの取り組みが必要。お茶の間の話題にする必要もある。権利を主張するだけの集団は信頼・支持を得られない。患者代表者を社会が育て、患者会という貴重な社会資源の有効活用を真剣に考えるとき。

上田氏:急性疾患から慢性疾患へという疾病構造の変遷に伴い、医療制度あるいは医療提供の姿が変化してきた。今や医療政策に患者の視点は必要不可欠で、それが当たり前のことになっていく。医療政策においてはパラダイムの転換期にある。ただ、利害関係を裁く場への患者参画は正直難しく、患者の「代表性」には懸念があることも事実。個別の議論に固執せず、また「問題の指摘」だけではなく、「解決策の提案」を歓迎する。患者会には、地方自治体や地域医療とも連携してほしい。

西島氏:これまでの政策決定は、行政が案を出し、それを国会が採択してきた。しかしこれからは、患者の視点を土台に議論を積み重ねていくべきであり、医療の当事者が政策を仕掛けていくべき。政治家は、専門分野外のことは分からないため、行政の書いた案に対して政治家が物申すことができるように、どんどん情報を与えてほしい。ロビー活動は「理解を求める活動」である。患者会の連携も必要。また、患者会と日本医師会とのディスカッションの場がなかったのも今後の課題のひとつであろう。


ディスカッションの終盤には、会場からも提案や意見が出されるなど、大変充実した議論が展開されました。

パネルディスカッション最大のハイライトは、締めくくりの言葉を埴岡さんから促された長谷川さんが、「ここに今日集まった皆さんと一緒に考えていくという、共同の取り組みの証として述べさせていただきます。ぜひ賛同をお願いします」として、次の内容を会場に呼びかけたことです。(本ページ下部「宣言」参照)この呼びかけに会場は大きな拍手に包まれました。期せずして埴岡さんから、「会場の全員の皆さんから拍手をいただけたと感じます。これは共同宣言とも言えるでしょう」というコメントがありましたが、まさに、「患者中心の医療」実現に向けて多くの関係者がこの取り組みを共有したという意味で、大きな一歩を踏み出したといえましょう。

パネルディスカッション後のレセプションでは、シンポジウムの熱気冷めやらぬ雰囲気の中、多くの参加者が今回の議論の動向に関心を寄せ、大いに語り合う姿が見られました。

これまでの取り組みと今後

製薬協広報委員会は、今回で4回目となる「患者中心の医療を考えるシンポジウム」以外にも、患者会セミナー、施設見学会などの企画を通じて、患者あるいは患者会として欠かすことのできない「エンパワーメント」、「アドボカシー」を関係者間で共有するための機会の提供に努めてきました。今回のシンポジウムでは、医療政策の決定プロセスにおいて、従来以上に医療に関わるステークホルダーの声を反映させる仕組みが求められている中で、患者会自らが政策提言された内容の実現可能性について調査研究し、その実現に向けて検討の第一歩を踏み出し、意見表明・呼びかけを行ったことは大変意義深いことでした。

今後は、患者会はもちろんのこと、共通の取り組みとして、行政、政党、医療関係者(機関)、メディアをはじめとした医療政策に携わる各関係者が、連携・協働していくようになることが期待されます。

<政策決定への患者参加に取り組みましょう> いま、医療改革に患者の視点を取り入れることが社会から求められ、患者が医療政策の決定過程に関与し、貢献することも期待されています。
患者会292団体が参加した調査では、「市民や患者の声を医療政策決定プロセスに反映させること」に90%の賛同が得られました。「市民代表と患者代表が医療改革を主導すべき」という考えにも85%の賛同がありました。さらには、90%の団体が、「患者会支援機能を持った患者会サポートシステムの必要性」や、「患者団体が連帯し協力しあって政府に働きかける行動」も支持しました。
私たちは、調査結果で明らかになったこのようなことを、今こそ実行に向けて進めるべきであると考えます。また、こうした動きを支援する仕組みの整備も欠かせないと認識します。私たちは、それぞれの立場で、こうした動きを率先したり、支援したりすることで、自分たちにできることを可能なことから実践に移していきたいと考えます。
医療政策の決定に患者が参加することを形にするのは、容易なことではないかも知れません。しかし、日本の医療改革と国民全体の利益のために私たちはそれが欠かせないことであると考えます。互いを尊重しつつ、医療政策の決定に患者が参加することが当たり前の社会を目指していきたいと思います。

(文:広報委員会ペーシェントグループ部会 内藤麗)

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