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第10回患者会セミナーの報告

第10回患者会セミナー開催される

第10回患者会セミナー会場の写真

 製薬協広報委員会は、2006年7月1日、東京・丸の内のマルビルホールにおいて、第10回患者会セミナーを開催しました。日経BP社編集委員、東京大学医療政策人材養成講座特任助教授の埴岡健一氏を講師に迎え、「アメリカの患者団体から学ぶこと―がん患者会を中心として」と題する講演があり、37患者団体のリーダーなど54名が参加し、活発な質疑応答が行われました

日本のアドボカシーと「がん対策基本法」

 埴岡氏は、まず今回の話は米国の医療やがん患者団体の現状を勉強するためではなく、日本のがん医療を進展させるためにお話したいと述べました。6月に可決された「がん対策基本法」については日本のアドボカシーの大きな成果と高く評価しました。日米の医療制度改革における構図の違いについても言及し、日本では行政の立案、監督のもと実施されるのに対し、米国では患者の要望が国の政策策定を促し実施されるという大きな違いがある、今回の「がん対策基本法」はまさに米国型の取り組みであり、今後の活動に大きな示唆を与えると評価しました。

大規模な米国がん患者団体の活動

 続いて、米国の患者団体のロビイングを含めた活動を紹介しました。15年の歴史を持つ米国乳がん連合(NBCC/URL:www.natlbcc.org/ )ではロビイングで法案、予算案を通過させ、がん対策費の大幅増加を実現させました。すなわち国防総省から年間200万ドル(約2.3億円)の乳がん研究調査費を獲得しています。組織の規模も大きく、年間収支は5億円規模、収入は寄付68%、イベント収入が30%を占めています。500人もの参加者による年次大会の中での一般セッションの様子や、ロビイング活動のための教育・実践風景などが紹介されました。

 米国がん協会(ACS/URL:www.cancer.org/)については、活動のプロモーションビデオが紹介され、患者さんの生き生きとしたパワフルな声とともに、がん制圧への意識を高め社会や行政へ影響力を与えるメッセージが効果的に伝えられていました。

 がんリーダーシップ協議会(CLC/URL:www.cancerleadership.org/)は31のがん患者団体が参画し、活動の焦点を政策提言、ロビイング、政策評価に絞り、協働メリットが大きな団体と、また協働コンセンサスが可能な領域で活動しているとのことでした。

日本で何ができるか

 この後、日本では何ができるかという重要テーマに移りました。埴岡氏は、NBCCのように大きな組織(100億円単位)の話ではなく、小さな事務局、少ない資金レベルでもかなりのことが可能と参加者に訴えました。すなわち、ステップ1として、(1)常勤事務局によるプロ的運営、(2)弁護士など専門家の参画、(3)広報・ロビイングのツールを基本キットとして整備する―などを挙げました。次の段階のステップ2として、(1)地元議員に対する草の根ロビイング、(2)がん対策研究会等の設置とリーダー育成―など具体的に提案しました。

 最後に、これからの日本の活動を充実させるために欧米の患者団体への訪問やセミナーなどに参加することが必要と呼びかけました(欧州のESMO患者セミナー、ACSの患者リーダー育成講座など)。

 引き続き、参加者との間で以下のような質疑応答が行なわれました。

質問 米国でのイベント事業的な寄付金募集が紹介されましたが、日米の違い、特に日本ではどのような寄付金募集の形が考えられますか。

埴岡 大変難しい点ですが、日本では(1)補助金、(2)大口の企業寄付金、(3)民間助成金、(4)小口の寄付金が考えられます。各団体がどの方法にするのか、比率をどうするか作戦を考えることが必要。米国では、確かにACSなどはビジネスプラン的な考えで多額な経費を使っても収支が合えば良いと考えています。ただ、米国のやり方がすぐ日本で当てはまるとは思えません。日本に合ったイベントを考えて、米国のノウハウを聞いて試行錯誤的にやってみるしかないと思います。ともかくお願いすることからですね。

質問 刺激的なお話を有難うございました。一時期がんの次は国民の三分の一が罹患しているアレルギー疾患と考えていました。しかし周りの他の疾患を見てきて、病気の深刻さから見るとそうではないように思えてきました。ただ、他の疾患でも共通点は多いので、がんだけでなくいろいろな疾患に対しても患者の要望活動が盛んになるよう門戸を開いてほしいと思います。

埴岡 ある領域でやり方が固まったら、お互い良い点を取り入れて発展していけたらいいと思います。アレルギー領域では治療ガイドラインや、行政の審議会に関係するなど、がん患者会より進んでいる点もあります。お互いのプログラムを交換して、協働することが効果的です。

質問 製薬協に対する質問です。制癌剤の許認可の仕組みを変えることはできないでしょうか。製薬企業は、制癌剤の効能を体の部位ごとに取っていますが、がんは特に遺伝子を標的にしているものは部位にかかわらず共通なはず。他のがんにも使えるよう、もっと製薬協から政府が再考するよう働きかけていただけないでしょうか。

青木会長 許認可を受けた薬を医師が使うという点と、使った場合に保険適用になるかという二点を考える必要があります。企業は副作用を最小にして、効果を最大にするために実施した試験データをつけて厚生省に申請します。その結果治療薬としての保証が出来て初めて保険収載されます。仮にある薬を適応症以外の疾患に使うことは医師の責任と権限で可能ですが保険は使えません。ある制癌剤が他のがんにすべて効くことはありえないし、無制限に許したら、エビデンスなしで使うことになり患者さんにとって大きなリスクになります。その点をご理解ください。

埴岡 アドボカシーの面から考えると当事者、すなわち製薬企業と行政にいかに影響力を与えるか、またそのための行動を表立って展開することが大切です。抗がん剤では国内未承認薬への働きかけなど対話の場が設けられました。FDAでは抗がん剤承認検討委員会の患者意見により、否定的だった薬の承認を実現させています。このような当事者へのアドボカシーが大切です。

質問 米国の患者団体で学び、日本でも団体を立ち上げ事務局専従として活動しています。その中で資金と行政ルートの二つの問題があると考えています。特に後者については、日本では不十分というのが現状と思います。米国ではロビイストという職業があること、法案はすべて議員立法であり、バックアップするシステムもできています。この点について先生のご意見はいかがでしょうか。

埴岡 資金面は確かに税制の問題と思います。二つ目の日米の構造の違いは大きいです。ただ日本は行政主導で完結しているが、現状は変わってきつつあります。方策によっては効果的に状況が変わる可能性もあります。日本ではまだロビイストに関して成熟していませんが、かえって行政が聞いてくれるチャンスもあります。

(広報委員会ペーシェントグループ部会副部会長 内藤一秋)

埴岡健一氏の略歴

1959年兵庫県生まれ。大阪大学卒、「日経ビジネス」ニューヨーク特派員・支局長などを経て、日経BP社編集委員、東京大学医療政策人材養成講座特任助教授、著書に「インターネットを使ってガンと闘おう」(中央公論社)、「がんの時代を生き抜く10の戦術」(三省堂/共著)

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