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革新的新薬開発のためのプラットフォーム

国際製薬団体連合会ベール理事長が来日、患者会と懇談会

IFPMAのベール理事長が2月20日来日、都内で患者会のメンバーとの懇談会に出席し、IFPMAが昨年末にまとめたポジションペーパー「革新的新薬開発のためのプラットフォーム」について説明しました。

ベール氏は、IFPMA(国際製薬団体連合会)が2004年末、新薬開発について正しい理解と多くの患者さんに医薬品を届けるための政策提言をまとめたポジションペーパー「革新的新薬開発のためのプラットフォーム」を世界に向けて発信したのを受けて、その内容を説明するため来日しました。この日の懇親会には、約10名の患者会のメンバーが出席し、ベール氏に対し活発な質問や意見が出されました。同懇親会でのベール氏の説明の概要を以下にご紹介します。

PIPとは何か

今回の来日は特に重要と考えています。医療の最終的な目的である患者さんの代表者の方々にこうしてお話をする貴重な機会だからです。

PIP(PharmaceuticalInnovationPlatform)「革新的新薬開発のためのプラットフォーム~世界中の患者の健康を維持するために~」は、新しい医薬品を絶え間なく患者さんに提供するためには一体何が必要なのか、そして発展途上国の公衆衛生向上のために果たすべき役割は何か、等が記載されています。

まず、医薬品やワクチンの研究開発において、「革新」が行われるためのプラットフォームには外的条件として、(1)適切に機能する医療システム、(2)効率的な市場、(3)知的財産権の活用、(4)適切かつ予見可能な規制要件--という「4本の柱」があります。

これらはテーブルの「4本の足」のようなもので、どの1本が欠けても傾いてしまうのです。3点目と4点目については、始めの2つとは若干異なりますが、規制環境、規制当局と業界との協力関係によって成り立つという点からみても、政治的な意味合いを持つ重要な事項です。

医薬品革新を支える背景と成果

医薬品の革新のシステムは、複雑で、様々な当事者が関わっています。公的研究機関、学術機関、大学、専門分野、バイオテクノロジー関係、そして製薬企業です。科学的要因と政治的要因が絡み合ってさらに複雑になっています。

特に医薬品においては、新薬の研究開発の期間が長く、だいたい10~15年程度かかります。その間、途切れることなく、確実にプロセスを実行し、継続して安全に販売するという長い道のりです。

また、1つの新薬が世に出るまでには、研究開発をある程度実施してみたが、「日の目を見なかった」新規化合物や合成物が5,000~10,000成分に及びます。すなわち、非常に成功例が少なく、大きなリスクを伴うものであるということができます。

医薬品の開発がなぜ必要なのか考えてみましょう。HIV、AIDS、マラリア、がん、精神疾患、循環器疾患、糖尿病、呼吸器疾患などのケースでみると、医薬品によって「根治する」疾患というのは、多くは存在しません。

例えばマラリアについてみると、薬剤耐性の問題によって従来の医薬品の効果が低下し、新たな医薬品が必要とされています。また、エイズについては、治療のための医薬品がいろいろ出ていますが、予防と根治薬については現状では全く「なし」です。続いて、がんの例を見てみると、有効な治療薬は様々ありますが、予防と根治薬については「なし」という結果になっており、まだまだの状況です。このような現状を考えると、これからも医薬品の開発が必要な状況にあるということが理解できると思います。

革新的新薬の維持について

研究開発のコストをみると、人による臨床試験について、安全性を確保するために、大規模でより多くの取り組みが行われ、その内容についてもより詳細で長期的なデータが要求されてきています。そのため開発コストが上昇しており、日米欧においては一つの医薬品を開発するのに、7億~10億ドルのコストがかかっているのが現状です。

臨床治験については、「より透明性をもってほしい」という声が次第に大きくなってきていますし、市販後調査に関しても「安全性に対する懸念がある」「より厳密に対応すべき」という声が高まっていて、こうした状況は今後ますます強まってくると考えられます。革新的な医薬品の開発は、効率的で良い医療を求める上で不可欠です。そのための費用は、「コスト」と考えるべきでなく、医薬品価値の向上のための投資と考えるべきです。

ここに、疾患別の死亡率と生存率を、イギリスと米国とで比較したデータがあります。米国は日本のような皆保険ではなく、人口の1割が保険対象外です。英国の場合は皆保険であることを念頭においてください。

乳がんの死亡率は、英国が46%、米国が25%。「心臓発作を起こした患者にβブロッカーを投与する確率」は、英国が30%、米国が75%となっています。こうしたデータを、日本の医療制度も含めて、各国の事情と結果を比較することは、患者さん自身に非常に役にたつ情報です。

ハーベイE.ベール氏(Dr.HarveyEBale

ヒューレット・パッカード国際公共政策部長、アメリカ通商代表部(USTR)の多角的貿易交渉メンバーなどの要職を経て、1989年から米国研究製薬工業協会の国際部門で上級副会長、1998年11月からIFPMAの理事長に就任。

患者会代表との質疑応

続いて患者会代表との間で活発な質疑応答が行われました。その概要をご紹介します。

質問
新しい医薬品ができて、ある国では安価な、別の国では高価なものとなって、格差が生ずるという問題があります。我々の会の患者の多くは、対症療法として成長ホルモンを使っていますが、日本では大変高価です。こうした価格差について何か解決策はないのでしょうか?

ベール氏
医薬品には各国ごとに価格のバラツキがあります。価格には、流通や為替レートなどいろいろな要素と本来の経費が絡んでいますのでそれを考慮しなければなりません。各患者団体で、それぞれのご事情に関する情報と必要性、要望を医薬品業界にアプローチいただければと思います。

質問
アメリカの場合、薬価の決定は自由競争をベースにしているので、保険会社がそのカギを握っているのではないかと感じます。しかし、当然、保険会社に支払い能力の限界というものがあると思いますが、現状はいかがですか?

ベール氏
今後も数多くの革新的医薬品が生まれる一方、後発品に置き換わっていくという新陳代謝が繰り返されると私は予測します。特許の保護が一定期間あり、期限が切れて後発品が世に出れば、医薬品の価格は下がります。米国では、医薬品の価格や製薬企業の売上げが他国に比べて高いのは事実ですが、保険会社も病院もHMOも全般的に市場原理が十分機能しており、長期的には医薬品価格は下がります。

質問
日本も以前に比べて、「医師主導型」から「患者中心の医療」という風に流れが変わってきていますが、欧米では医療計画のプロセスで、患者団体がどのように携わっているのでしょうか?

ベール氏
欧州が非常に盛んです。医療費全般に対する活動、特定疾患予算の拡大、アドボカシー活動の推進等の取り組みがあります。特にAIDSの患者団体が活発に活動しています。例えば、治験情報収集の照会、活動の情報提供、業界との対話、国内外問わず同じ疾患・他国の他団体との交流を通して具体的なケーススタディを行う、ロビー活動を行うなどです。

エンパワーメントを行い、アドボカシーを展開する、ロビー活動を行う、情報提供をする。これらの活動を通して、社会全体にベネフィットが生まれます。製薬業界としても患者との交流を通じて得られる情報もありますので、積極的に要望を聞かせてください。

質問
乳がん患者団体の代表です。二つ質問します。一つは、ご説明にあった英国と米国の乳がんの死亡率のデータについてです。その中で、「46%という死亡率」はわれわれでも驚くべき数字なのですが、これは患者会が英国で活動していない、あるいは政府が疾病に関して行動しないためということでしょうか?

二つ目の質問は、稀少疾病医薬品についてです。稀少疾病に対する医薬品の開発はどのようにして決められるのでしょうか。患者会や政治家などの何らかのパワーが働いて、製薬企業の新薬開発の決定を促すのでしょうか。

ベール氏
英国のがん治療の成績が良くないという点は、個人的見解ですが、英国は他国に比べて早期診断の治療でもあまり良い成績ではないと思います。また英国では国家予算に占める医療費が少ないのです。薬剤費を使えば、患者への効果がある程度期待できるという点は考慮すべきだと思います。次に、医薬品開発の分野決定や判断に関するご質問ですが、科学分野における基礎研究の進展度合いや必要度によって左右されると思います。例えば、現在、エイズの治療についての要請が切実であるのに、HIV根治の療法がないということも新しい医薬品「革新」への十分なモチベーションとなり得ると言えるでしょう。

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