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承認条件としての市販後臨床研究の現状


承認条件としての市販後臨床研究の現状
日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所 主任研究員 笹林幹生 氏
解説講演(要旨)

 2006年7月20日(木)、製薬協メディアフォーラムが東京・大手町にて開催されました。多くのジャーナリストが参加した当日のテーマは『承認条件としての市販後臨床研究の現状』です。製薬企業は新薬の開発段階で多大な時間と費用をかけ、情報も収集していますが、それに加え市販後の臨床研究を通じて、有効性・安全性の情報を収集し、新薬の適正使用を確立していくことが重要と考えています。フォーラムでは笹林主任研究員が、最近承認された新薬の承認条件の付与状況を調査したデータを用いて、承認条件としての市販後臨床研究の現状について解説しました。


●新薬開発期間の動向
 最近の新有効成分含有医薬品の開発期間(製薬企業が治験を開始してから承認を取得するまでの全期間)の動向を見ると、1990年代の後半以降、緩やかな長期化傾向が見られています。開発期間を審査期間と臨床開発期間に分けてみますと、審査期間は徐々に短縮され、この4年間では約20ヶ月前後で推移していますが、臨床開発期間は90年代後半から明らかに長期化しています。

 同様の傾向は海外でも認められています。米国のタフツ大学の調査では、1990年代半ば以降、短縮化傾向にあった米国の新有効成分含有医薬品の開発期間と審査期間は、ここ数年間一転して増加に転じていることが分かりました。とりわけ臨床開発に関わる期間が長期化傾向にあります。

 日本での臨床開発期間が長期化している背景要因としては、治験実施基準が厳格化されたことにより、製薬企業、医療機関でのさまざまな業務量が増大していることが考えられます。また日米ともに見られる要因として新薬の開発領域が複雑で難易度の高い疾患にシフトしていることがあります。さらに、科学の進歩とともに開発段階で検証が必要な事項が増加していることも影響していると考えられます。

●市販後臨床研究の現状
 日本では新薬承認後に再審査制度があり、各種の市販後調査、市販後臨床試験の実施が義務づけられています。今回の調査は新薬の承認条件の付与状況を調査することにより、承認条件として課せられる市販後臨床研究の現状を把握しようとしたものです。調査対象品目は2000年から2005年の6年間に承認された新有効成分含有医薬品(新薬)で、データソースは審査報告書と添付文書です。承認条件の有無と内容、承認条件と開発期間の関係などについて調査しました。

 承認条件の有無について見ますと、調査期間に承認された新薬141品目のうち23品目に全例調査の指示を含む承認条件が付されており、また30品目にその他の承認条件が付されています。合計37.6%の新薬に承認条件が付されているという状況です。全例調査は新薬が使用された全症例について有効性・安全性に関する情報を、一定期間、または一定症例数に達するまで収集するというもので、製薬企業にとっては負担の小さくないものです。この調査期間を前期と後期に分けてみますと、承認条件のある品目の割合は前期では30%ですが、後期になると50%にまで高まってきています。承認条件として市販後臨床研究の実施を指示される新薬が増加傾向にあることが分かります。

 さらに詳しく審査区分別に承認条件の有無を見てみますと、優先審査品目(オーファンドラッグとそれ以外の医療上の必要性が高い判断される品目)で、承認条件が付される割合が高いことが分かりました。薬効分類別にみると、腫瘍用薬、生物学的製剤、化学療法剤に承認条件が付される割合が高く、またバイオ医薬品、ブリッジング戦略採用品目も承認条件が付される割合が高い傾向にあります。

●承認条件と臨床開発期間
 2005年を除く97品目の臨床開発期間を承認条件の有無別に見ますと、「承認条件あり」では63.1ヶ月、「承認条件なし」では79.1ヶ月と承認条件のある品目の開発期間が短いことが分かりました。承認申請に利用された臨床試験の内容について見てみますと、国内試験のみによる品目よりも国内試験に加え海外試験データを利用した品目の方が承認条件を付される割合が高い傾向にあります。

 今回の調査対象品目の2006年4月時点での国内外における上市状況を見てみました。海外で先行上市されたものは99品目(74%)、日本のみ上市が28品目(21%)、日本で先行上市されたものは7品目(5%)でした。海外で先行上市された99品目について、承認条件の有無別に、世界初上市から日本での上市にどの程度タイムラグがあったかを調べたところ、「承認条件なし」では65.1ヶ月でしたが、「承認条件あり」では44.0ヶ月という結果でした。

●今後の展望と課題
 承認条件を付される新薬が増加の傾向にあり、特に直近3年では新薬の50%に承認条件が付され、製薬企業には負担が大きくなっています。しかし承認条件がある品目はない品目と比較して臨床開発期間が短く、世界初上市から日本上市までの期間差が短いという傾向も見られています。

 承認条件が増えている背景には、市販後の安全対策が年々強化されていることが考えられます。欧米でも市販後の安全対策がより重視される流れになってきており、米国では新薬の73%に何かしらの承認条件が付されています。また、承認審査で海外データが利用される機会が増加してきていることも、承認条件が増加している背景にあると考えられます。このトレンドは今後も続く可能性が高いと考えられます。

 今後の検討課題としては、市販後安全対策強化と開発インセンティブのバランスがとれた施策をいかに講じていくかということが挙げられます。また、条件付き承認を活用することによって、開発期間のこれ以上の長期化を回避することも検討に値すると考えられます。条件付きの承認は、製薬企業の市販後の負担を増加させますが、開発期間を短縮させる可能性もあり、新薬の早期上市に結びつくことも考えられます。これらの課題について、関係者間で議論を深め、必要な措置についてコンセンサスを形成していくことが必要と考えられます。


 以上が今回のフォーラムの要旨でした。解説・講演の終了後は質疑応答が行われ、多くのジャーナリストから活発に質問の手があがり、意義あるフォーラムとなりました。

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