未承認薬を一日も早く

「未承認薬問題などの解消に向けて」仲谷博明(日本製薬工業協会 常務理事)

日本における未承認薬・・・解消に向けて取り組みがスタート

世界での売上金額上位200品目ほどの中には、日本から生まれた新薬が10%近くを占めています。また、日本は米国、英国に次いで世界第3位の新薬創出国として世界の医療に貢献しています(図1)。さらに、現在日本の製薬企業が開発しているものには、治療に対する満足度の低い病気を治す目的のものが一番多くなっています。これらの治療薬を創りだすのは極めて難しい仕事ですが、日本の製薬企業は果敢に挑戦しているのです。
このように日本の製薬会社は新薬を創出する研究・開発力に優れていますし、多くの素晴らしい新薬を世に出して世界の患者さんの治療に貢献しています。が、その反面、残念ながら、海外で創られて海外の患者さんが初めて手にした医薬品が日本の患者さんの手に届くまでには平均すると約4年もの期間がかかっています(図2)。それだけ、日本の患者さんは治療の機会を損失していることになります。
このようなことが起こる原因には様々な要因がありますが、日本製薬工業協会(製薬協)では、国が取り組むべき課題についてはしっかり提言をし、産業として取り組むべき課題には積極的に挑戦をしています。そうして、官民一体となって、より良い医薬品がより早く患者さんの手に届くように、努力を続けています。

「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の導入・・・未承認薬の治験を促進するために

具体的にどんな課題があるのかについてご紹介します。
薬を創り出すには、薬になるかもしれない種を創り出し、動物実験等様々な研究を繰り返します。ここまでで5年から8年ほどかかるのです。そうしてやっと人間で試しても大丈夫となると、次には健康な大人の人にボランティアになってもらって試すことから始めます。こうして安全性などを確認し、いよいよ患者さんに試しに使っていただいて、科学的かつ客観的な判定をします。実際に人間で試験をする期間が、長いものでは7年ほどもかかります。これらの期間を臨床開発期間といいます。次は、薬として患者さんに使ってもらうようにしてよいかの判断を国にしてもらいます。この国の仕事を承認審査といいますが、審査の期間が1年から2年ほどかかります。この臨床開発期間や審査期間が先進主要国に比べて長くかかっているのが、日本の患者さんに薬が届くのが遅くなっている原因の一つです。
また、大変重要なこととして、国に承認してもらったら、その薬をいくらで売るかという問題があります。日本では公的医療保険制度の中で、保険で使える薬の価格を公定しており薬価といいます。企業が勝手に薬価を決めるわけにはいかないのです。薬の値段を決める仕組みを薬価制度といいます。日本においては薬価制度にも課題があり、企業がどの国で最初に薬を販売しようかと考えたとき、日本の優先順位が低くなっていたのです。
そこで国は、製薬産業の提案に基づいて、2010年4月に「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」という制度を導入しました。これは一定の条件を満たした特許期間中の新薬については、薬価の引き下げを緩和し、場合によっては同じ薬価を維持しますという仕組みです。そして、製薬企業には、薬価が維持されたことで前倒しして得られる収益を使って、日本では適応外となっている薬や、外国では承認されているのに日本では承認されていない薬の開発を促すようにしました。これによって製薬企業の開発における経済的リスクを下げ、患者数の少ない希少疾患に対しても積極的な開発着手を推進させることが狙いです。

未承認薬の開発支援・・・行政・患者団体・医療従事者・製薬企業が一丸になって

さらに、厚生労働省は、100億円の補正予算を確保して、医療上必要とした医薬品44品目の未承認薬のうち、2009年3月末時点でまだ開発企業が決まっていなかったり、開発の仕事に着手されていない14品目の開発費用の援助をすることとしました。現在、この14品目の開発支援のお金100億円は、「一般社団法人  未承認薬等開発支援センター」が管理して、開発企業の支援を行っています。また、本支援センターは、会員会社からの会費を活用して、毎年2.5億円ほど、独自に開発支援を行っています。
2010年2月には、厚生労働省が「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を立ち上げました。本検討会では、患者団体や医学会から医療上必要と要望のあった374件のうち、4月時点で108件については確かに必要だと判断しました。その判断を受け、2010年5月に政府から製薬企業に開発要請および公募が行われました。2010年中には374件のうち、医療上本当に必要性が高い薬が何かが確定し、さらに開発要請品目が出てくることとなります。
製薬協では、このように多方面からの支援制度と協調しながら、新薬の創出だけでなく、国内で未承認や適応外となっている医薬品の開発が促進されるよう取り組んでいます。

図1 主要国別オリジン新薬数(2005~2008年の世界売り上げ上位100品目)
図2 ドラッグ・ラグの主因は治験着手時期(国内上市品目)
INTERVIEW:未承認薬等開発支援センターの役割と、今後の取り組み