2001国際シンポジウムの報告
国際シンポジウム
「患者中心の医療を考える2001」を開催
―患者団体も50団体・100名が参加―
21世紀を迎えた今、高齢社会の到来とも相俟って、社会環境も大きく移り変わろうとしています。生活習慣病など、ライフスタイルの変化につれて疾病構造も変化し、これに対応した医療技術、薬物療法の変化も顕著です。また、インフォームド・コンセントに対する社会的関心の深まり、レセプト、カルテの公開に関わるさまざまな議論、あるいは医薬品の情報提供にまつわる活発な動きなどを背景に、医療・医薬情報への関心も一層の高まりを見せています。医療・医療保険制度の抜本改革問題と併せ、まさに、私たち医療に何らかの関わりをもつ者の周辺には、大きな変化の時が訪れていると言えましょう。
はじめに
2年前の1999年7月、日本製薬工業協会広報委員会は、1996年に次いで2回目の「くすりと製薬産業に関する生活者意識調査」を実施しました。
この調査を通じて得られたことは、医薬品の価値については「医師が処方してくれるので安心」、「市販の薬よりもよく効く」などを理由に大多数の人が認めている。しかしその反面、医薬品を開発・提供している製薬産業・企業を「知っている」、あるいは「信頼できる」と思っている人は非常に少ないということでした。
そうした中にあって、「製薬産業・企業から入手したい情報は何か」との設問に対する複数回答では、60%の人が「薬についての基本的知識」を、45%の人が「薬の正しい使い方」に関する情報入手を希望しました。
もとより医薬品は、医療担当者はもちろん、患者さんが正しく使ってこそ、その成果が十分に発揮されるものです。そのためには、効能・効果/用法・用量のほか、副作用についても患者さんに適切に伝達される必要があります。換言すれば、医薬品を処方する側には、患者さん個々の症状を診ながら、複雑かつ膨大な医薬品情報の中から関連する情報を手際よく選び出し、それを適切に伝える仕事が求められているということです。
しかし、これは決して簡単ではありません。患者さん一人に十分な時間が割けないという現行医療制度の構造上の問題もあるかと思いますが、何よりも、高度に専門的な情報を患者さんの理解できる言葉に置き換え、伝えることには少なからぬ困難がつきまとうからです。
欧米調査19団体訪問の経験から
では、どうしたら、こうした問題の解決を図り、患者さんの満足度をより高めることができるのか。実は、ここに製薬産業・企業として果たすべき大きな役割があるのではないか、というのが私たちの考えたことでした。
こうした問題の解決に向けた取組みの進展度合いについては、欧米と日本の差はかなり大きいのが実情です。そこで、日本製薬工業協会広報委員会では、こうした彼我の差をキチンと把握・吸収し、適切に反映することが極めて重要であり、その取組みを通じてこそ、医薬品の開発に携わる私たちの信頼度を高めることができるとの考えから、まず、「くすりと製薬産業に関する生活者意識調査」と連動させる形でプロジェクトを立ち上げました。そして、1999年11月に「医療消費者とのコミュニケーションのあり方に関する欧米調査団」を派遣するなど、医療消費者や患者団体、医療担当者、行政、さらには製薬産業・企業間におけるリレーションシップを中心とした研究を続けてきました。
世界の大勢は、1999年に創設されたIAPO(国際患者団体連合)がビジョンとして掲げる「患者主体の医療の確立」に向けて動いています。日本においても、医療・医薬情報公開の流れは加速化していますし、また、それにつれ、「医療の主体は患者にある」という考え方も関係者の間で概ね認知されるようになってきました。
そうした状況からも、構成要素として不可欠なのが適正使用の推進であり、患者さん自身が選択し決断する、「患者中心の医療」を実現する重要な道筋の一つとして、情報を核としたコミュニケーション環境の整備がきわめて大切です。
6月4日海外からも演者迎えシンポジウム開催
「患者中心の医療を考える国際シンポジウム/2001」は、そのコミュニケーション環境整備の一助になればとの考えから企画されました。適正使用の問題のみならず、日本における患者中心の医療実現のための乗り越えるべき諸課題を関係者間で等しく共有し、もって課題の解決、ならびに関係者間の絆づくりの契機になればとの願いを込めてのものです。
形態は、日本製薬工業協会が、欧米における患者を中心に据えた医療、および患者団体活動の最新事例紹介と関係者間の交流の場を提供するという方式としました。具体的には、全体の進行を司るコーディネーターに、生命倫理を専門とする早稲田大学人間科学部の木村利人教授を迎え、またゲストスピーカーには、先の欧米調査で知己を得た、全米医師会コーポレート・コミュニケーション担当部長のトーマス・トフティ氏、全米乳がん団体連合事務局長のエイミー・ランガー氏、国際患者団体連合会長のアンジェラ・ヘイズ氏に加えて、日本の乳がん患者団体である「あけぼの会」からワット隆子会長を迎えました。
6月4日(月)、渋谷に新装なったセルリアンタワー東急ホテルを会場としたシンポジウムは、予め用意した304席を大きく上回る379名の方々が参加されるという、主催者にとっては嬉しい誤算の中で始まりました。そして、木村教授の巧みなコーディネートのもと、予定を1時間30分もオーバーする、まるで時間をどこかに置き忘れてきたかのような熱気溢れた雰囲気の下で、成功裡に終えることができました。なかでも、患者団体から50団体100名の参加が得られたこと、その方々がレセプションでも交歓の中心的存在であり続けてくれたこと、そして「初めて本音の会合がもてた」など喜びの声を多く寄せて下さったことは、まことに意義深いものでした。
この日本製薬工業協会として初の試みが、一人でも多くの関係者の共感を呼び、日本における患者中心の医療実現のための一里塚となれば、主催者としてこれに優る喜びはありません。
広報委員会 委員長 福室 剛藏
(中外製薬株式会社 執行役員広報担当)




