製薬協について 製薬協について

2017年度事業方針及び事業計画

1.事業方針

  少子高齢化の進展や国・地方を通ずる財政赤字の拡大等を背景に政府の歳出抑制策が一段と強化される中、いわゆる“高額薬剤”問題に象徴されるように、製薬産業は過去に経験のない強い逆風にさらされている。特に、製薬産業の消長のカギを握る薬価制度については、昨年末の経済財政諮問会議における民間議員の問題提起を受け、政府内において異例とも言えるスピードで検討が進められ、昨年末には「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」がとりまとめられた。
 この中で政府は「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し、国民が恩恵を受ける「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現するとしており、財政の制約が強まる中にあっても、医療の重要性や医薬品開発の有する意義についてはこれを評価する姿勢がうかがわれる。今後は、この基本方針を受け、年央の骨太方針の策定や2018年度診療報酬(薬価)改定に向けた具体的な改革議論が進められていくものと予想されるが、業界としては、医薬品産業に甚大な影響を与える可能性のある薬価の毎年改定のあり方や新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の今後の方向性等について十分な検討を加え、今後予想される議論に適確に対応していく必要がある。
 また、国際的な動きを見ても、昨年国連に途上国における医薬品アクセスの問題を議論するハイレベルパネルが設置され、知財制度がアクセスを阻害する要因だと指摘する報告書が事務総長宛に提出された他、日本で開催された先進国首脳会議(サミット)及び保健大臣会合において高額薬剤の問題を議題とするよう一部の国から働きかけがなされるなど、医薬品の価格の設定から患者のアクセスの問題に至るまで、国の内外で医薬品に関する様々な課題が提起されている状況にある。
 その一方で、医学、薬学のみならずICT、AI(人工知能)、遺伝子解析等先端技術の革新的進展によって、健康・医療や製薬産業を含む関連産業にパラダイムシフトがもたらされつつあり、新たな治療法等の提供につながる新薬開発のイノベーションに対する社会からの期待は以前にも増して大きなものとなっていることもまた事実である。研究開発の難度が年々高まる中で、新しいテクノロジーを駆使した新薬開発を通じて患者や国民の期待に如何に応えていくことができるか、研究開発型医薬品産業の真価が問われる時代が到来したとも言える。このように業界を取り巻く環境が劇的に変化する中で、従来にも増して政治や行政等と対話を重ねていく必要があるが、この点については、従来年1回程度の会議であった官民対話が昨年度から年2回に定例化され、また医薬品と医療機器の会議を別個に開催するなど実質的な議論を深めるための舞台が整いつつあることは歓迎すべきことである。また、これと並行して薬事規制当局と業界とのハイレベル会合が新たにスタートしたことも、今後の当業界の理解促進と協会活動の一層の進展を図るうえで重要な意義を有するものと考えられる。
 このような環境の下、日本製薬工業協会は、医薬産業政策研究所や各委員会の活動
を時代の要請に即応したものとすべく不断の点検見直しを行うとともに、医薬品の供給を通じて人々の健康と社会の安定に貢献し続けることを目標に、引き続き次の4つの主要課題に積極的に取り組むものとする。
(1)
イノベーション(革新的な新薬の研究開発)の促進による医療の質の向上、医薬品の価値を踏まえた経済発展への貢献
(2)
国際展開、国際協調の推進とグローバルヘルスへの貢献
(3)
コンプライアンスの更なる徹底と国民の信頼感の一層の醸成
(4)
産業理解の一層の推進
  
  なお、昨年策定した「製薬協 産業ビジョン2025」については、関係委員会の活動を中心に着実な進展を見ているが、今後ともその方向性に沿った研究や活動の一層の展開に努めていく。また、昨年度の最大の懸案事項であった研究開発税制の大幅見直しについては、高水準型が維持されるなど一応の目標は達成したものの、オープンイノベーション型の活用促進のための改善方策など積み残された課題もあり、今後さらに検討を深めていく。


2.事業計画

(1)
イノベーション(革新的な新薬の研究開発)の促進による医療の質の向上、医薬品の価値を踏まえた経済発展への貢献

<薬価制度関連事項>
薬価制度については、昨年末に取りまとめられた「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づいて現在検討が進められているが、製薬協としては研究開発型製薬産業という独自の立場を明確にした理論の構築、意見の表明に全力を尽くす。
具体的には、産業政策委員会を中心に、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度その他の予想される論点について業界の考え方を早急にとりまとめ、中医協の意見陳述その他に最大限活用していく。
費用対効果評価については、従来からの業界の基本的スタンスが適切に反映されるよう引き続き求めていくとともに、特にイノベーションの積極的な評価が可能となるような制度の構築を目指す。
薬価制度の抜本改革が流通に及ぼす影響を分析するとともに、医薬品流通問題に関し卸業者等との協力を通じて、単品単価取引の一層の推進など安定的かつ医薬品の価値に留意した医薬品供給が実現されるよう努力する。

<研究開発関連事項>
日本医療研究開発機構(AMED)との連携・協力関係の発展強化に努める。
  • 今後とも薬機法令及び関連法令の遵守及び適切な運用を目指し、製薬協内関連委員会、関連業界・団体と密接に連携・協力して対応していく。
  • 発足後2年を経過したAMEDに対する政府の取組を引き続き支持し、我が国の保健医療分野の研究施策に関する司令塔機能の充実・強化に向けて必要な協力及び提言を行う。
  • 特に、製薬協として取組を開始した官民共同事業(生物統計家人材育成支援事業)については、今後も着実な実施・発展に向け資金面を含め必要な協力を行う。
  • 創薬支援ネットワークによるアカデミア発創薬シーズの産業化支援としての「産学協働スクリーニングコンソーシアム(DISC)」に引き続き協力する。
  • コホート研究及びそれに付随するバイオバンクの中長期的な支援・整備・ネットワーク構築並びにヒト生体試料の産業利用に向けた標準化に協力する。
  • アカデミア発の革新的創薬実現に向けた支援の一環として、知的財産関連課題解決に向けて引き続き提言する。
  • AMEDと製薬協側の連絡調整窓口の機能強化を図る。
研究開発促進面から化合物ライブラリの共同購入(J-CLIC)等の事業を継続するとともに将来の発展・改善に向けた検討を開始する。
新規創薬シーズの創出に向けて、AMEDを始め様々な協働・連携体制の強化を図るとともに、産産連携についても一層の推進を図る。
厚生労働省に設置された臨床開発環境整備推進会議に参加するとともに、クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の構築に貢献する。
  • ARO機能を有する臨床研究中核病院等の体制整備等、研究開発型製薬産業の開発力強化に資する臨床試験基盤整備対策の推進を働き掛ける。
  • 医療情報データベースの利活用等を通じて、新たな有効性・安全性確保のための評価手法の確立に取り組む。
  • ワクチンを含むバイオ医薬品の研究開発及び製造の基盤整備推進、当該分野の人材育成に関係者とともに引き続き取り組む。
  • iPS細胞技術などの新技術に基づく画期的新薬の開発や評価技術の開発等を引き続き目指す。
内閣官房に設置されている健康医療戦略参与会合へ参画し貢献する他、ゲノム医療実現推進協議会へ委員を派遣し参画・貢献する。
治験などの研究開発段階における個人情報保護を引き続き徹底するとともに、同改正法が新たな医療の可能性を切り開く研究開発分野における阻害要因とならないよう、同法の運用について国際的整合性も視野に入れたバランスの取れたものになるよう働きかける。
医療上の必要性の高い医薬品等の迅速な承認を促進する立場から、公募2回目となった「先駆け審査指定制度」が適切に実施・運用されるよう引き続き注視するとともに的確に対応する。また、実施に移されたいわゆる日本版コンパッショネートユース制度(人道的見地から実施される治験)や患者申出療養制度が患者の安全確保及び本来の治験や研究開発に悪影響を及ぼすことがないよう適切に対応する。
未承認薬・適応外薬の企業への開発要請に対して真摯に取り組むとともに、公募品目について一般社団法人未承認薬等開発支援センターとも連携して引き続き適切に対応する。
薬剤耐性(AMR)対策推進について、国民啓発会議の構成員として団体を挙げて普及啓発に取り組む。
ICT、AI(人工知能)、IoT、遺伝子解析等の先端技術の革新的進展により、医療、医学研究等のパラダイムシフトが進みつつある中、次世代医療ICT基盤協議会などの動きを注視し、医薬品産業として必要な提言や活動を検討していく。

<税制関連事項>
創薬研究の拠点国としての研究開発税制の維持・拡充を基本方針とする他、環境整備の一環としてパテントボックス税制の実現を目指して継続的に取り組む。
オープンイノベーション税制の活用促進、企業版エンジェル税制の導入に継続的に取り組む。

<知財関連事項>
特許期間延長制度が医薬品産業の発展に資するような運用がされるよう、また再生医療及びビッグデータ等の最新技術に係るあるべき知財制度について提言活動を継続するとともに、生物多様性条約に係る名古屋議定書の批准動向及び合成生物学の議論についても引き続き注視する。


(2)
国際展開、国際協調の推進とグローバルヘルスへの貢献

1)
国際展開:主としてアジア市場の環境改善に主眼を置き、官民協働で会員会社の海外展開を支援する活動
国際薬事規制調和戦略(RSI:厚生労働省策定、2015年6月)や「PMDA国際戦略2015」を業界の側からも引き続き積極的に支援する。
第6回アジア製薬団体連携会議(APAC)の開催などを通じ、厚生労働省、PMDA並びに各国当局の参画を一層推進し、相互理解の促進を通じて各国規制の調和や改善につながる活動を継続することにより、アジアでの新薬の患者アクセス向上を推進する。
2016年に拡大復活した日中交流(官民訪中)を厚生労働省・PMDAと連携し積極的に推進し定着を図る。
APACとアジア太平洋経済協力(APEC)などで方向性が示された課題解決を具体的に進めるため、二国間定期協議(日韓、日台、日泰、日尼、など)の枠組みを活用した活動等の更なる充実・強化を図る。
2014年5月に加盟したGMPに関するPIC/Sへの対応とGDP(Good Distribution Practice:医薬品の流通段階における品質確保に関する基準)策定の検討に協力するなど、行政と連携し国際協調を推進する積極的役割を担う。

2)
国際協調:主として欧米先進諸国を対象とした業界活動
新たに設立・発足したICH協会の活動において、同協会内で創始常任委員メンバーという主要なポストに位置づけられたことに鑑み、医薬品規制の技術面からの国際調和を推進する積極的役割を担う。
医薬品アクセス課題、保険償還と薬価問題等の先進諸国での共通課題について、日本政府、海外の業界団体、および製薬協内の関連委員会との連携強化により、諸課題への取り組みを行う。
具体的には既存の二国間定期会合(日英、日独、日仏)の枠組みを活用した活動等の更なる充実・強化を図る。特に米国での新政権発足、欧州における英国のEU離脱などの大きな環境変化を注視する。

3)
グローバルヘルスへの貢献
グローバルヘルスの向上に貢献することが社会的使命であるとの認識の下、三大感染症(マラリア、結核、エイズ)を初めとする感染症、NTD(顧みられない熱帯病)、NCD(非感染性疾患)などの予防、治療への貢献活動に努める。特に、主要な役割が期待されている「開発途上国の感染症対策に係る官民連携会議」については関係委員会連携のもと積極的に対応する。
偽造医薬品問題やドーピング問題等の社会的課題に立ち向かうため、関係機関との連携を強化する。
グローバル課題となっている開発途上国における医薬品アクセス課題の解決に向けて、製薬協内関連委員会のより強力な連携の下、国際製薬団体連合会(IFPMA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)と引き続き連携強化する。また、日本政府、IFPMAと連携し、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、APEC、国連、OECD等の国際機関等へ、業界からの適切な発信を行う。なお、知財については、製薬協は引き続き韓国を主担当し、主要各団体の課題を決め、効果的・効率的に対応を行う。


(3)
コンプライアンスの更なる徹底と国民の信頼感の一層の醸成

国際薬事規制調和戦略(RSI:厚生労働省策定、2015年6月)や「PMDA国際戦略2015」を業界の側からも引き続き積極的に支援する。
コード・オブ・プラクティスをはじめとしたコードならびにコンプライアンス遵守に資する研修会等を継続して実施し、各社のコード・コンプライアンス推進体制の強化を図る。その際には、特に最近の業界の信頼を損なう事案を念頭に関連法規ならびに自主規範の遵守の徹底を図ることを会員企業トップ自ら率先していく。
個別の不適切事案には厳正に対処するとともに、必要に応じ処分審査会との連携を図る。
透明性ガイドラインによる情報公開にあたり、臨床研究法制化を踏まえた適切な公開を図る。
2013年コード・オブ・プラクティス改訂以降に実施した各種規程・自主基準等の改訂を反映させ、またIFPMAコードとの整合を図る等、製薬協コードを改訂・再編し、周知・理解の徹底を図り、プロモーション活動や広告活動の一層の適正化などを着実に推進する。
IFPMA基準に準拠した製薬協「適正な競争に関するガイドライン」(2015年7月)の遵守を推進する。
「臨床研究支援の在り方に関する基本的考え方」に係る企業と医療機関との間のモデル契約の定着を推進する。


(4)
産業理解の一層の推進

「製薬協 産業ビジョン2025(世界に届ける創薬イノベーション)」の普及及び社会における研究開発型製薬産業の理解促進のための広報活動を一層強化する。
医薬品問題に対する社会の関心の高まりに呼応し、従来以上に広い範囲のステークホルダーに対し、産業理解推進のため、積極的な意見交換や情報発信をより一層強化する。特にメディアに対する産業理解促進の取組を強化する。
産業理解促進の一助とするため、「医薬品の価値」についての包括的な研究を新たにスタートする。
日本経済団体連合会(経団連)の各活動との連携強化を図り、経団連内での研究開発型製薬産業の理解推進に努める。また、社会に対する製薬産業理解促進の観点から広報分野においても連携するとともに、日本科学技術振興財団と連携し昨年末スタートした科学技術館における若年層を主たる対象とした「くすり」の常設展示に引き続き取り組む。
生活者の製薬産業に対する理解・認識の実態(推移)について生活者意識調査を通して把握する。
医薬品を含む医療へのアクセス問題を中心に、製薬産業のグローバルヘルスへの貢献の社会的意義について理解の促進を図る。
社会における産業理解促進の一環として、重要な役割を担う患者団体の声に常に耳を傾けて相互理解を深め、より良い協働を推進する。
新バーコード表示対応ならびに利活用を通じ、効率的な医薬品流通を推進する。

以上の項目に加えて以下の事項にも取り組む。

2015年12月に開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」を踏まえ、業界としてさらなる低炭素社会の実現に向けた環境保全の取組を進めるとともに、労働安全衛生の推進に向けた取組を継続する。
これまでの活動状況や今後の活動計画を踏まえ、各委員会活動の効率化等を念頭に委員会再編成に向けた検討を引き続き進める。
2018年5月に製薬協創立50周年を迎えることから、これを記念するための事業の企画及び準備を進める。

以上

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