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「第35回 広報セミナー」を開催
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5. 製薬企業、業界としてのSDGsへの向き合い方

SDGs「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、企業がもつ創造性、イノベーション力の発揮による、社会課題の解決に向けた積極的な取り組みへの強い期待が表現されています。今後、気温が上昇していくことは明らかであり、企業としては、この課題に対して10年後20年後の地球の姿からバックキャスティングすることにより、イノベーションを通じた社会的課題の解決に結び付くビジネスを見出していただきたいと考えます。
 SDGsの17の目標、169のターゲットにはビジネスチャンスも含まれていて、各企業で取り組みがなされています。一方で、悪くいえば、「いいとこ取り」をする例も散見されます。得意とする事業分野でSDGsに貢献しているとアピールしつつ、CO2の排出を増やす事業も行っているような例です。そうした行為は、企業活動の開示が求められる今の時代では、もはや認められない状況にあります。つまり、SDGsは、ビジネスチャンスが多く含まれるものであると同時に、「してはいけないリスト(ネガティブリスト)」でもあるといえるのです。
 これからは、企業の活動や行為に対して、SDGsの観点からさまざまな指摘がなされます。CO2削減、再生可能エネルギーへの転換、水の使用量、原材料調達、サプライチェーン、人権、雇用、長時間労働、ダイバーシティ等々、さまざまな問いかけが企業に向けられることになり、各社の広報担当者は大変な課題に直面しています。ぜひ、SDGsをネガティブリストとしても、企業の取り組みの情報発信に活用いただきたいです。
 また、現状、日本は残念ながら「環境後進国」と見られています。その大きな要因は、CO2を大量に排出する石炭火力発電への依存であり、いまだに20基以上の火力発電所の建設計画をもっていることです。新たな発電所が建設されると40年間は使い続けることになるわけで、SDGsの達成の道から大きく外れており、エネルギー転換がうまくなされていないといわざるを得ません。グローバルにビジネスを展開している企業にとって、そうした日本全体に向けられるまなざしは、ブランディングにおいて決してポジティブではありません。
 気候変動、高温がもたらす身体への影響はさまざまな形で表れてきます。SDGsの「自然エネルギーを増やす」「気候変動への具体的対策」といったテーマは、健康と密接につながっており、製薬業界においても「脱炭素」に積極的に取り組むべきではないでしょうか。

6. 倫理的(Ethical)な企業活動とSDGs

人間の生存、私たちの社会・経済を支えてきた地球の限界が見えてきた中、今後、われわれがどのような社会を目指すのかが問われています。地球を劣化させ、回復力を破壊する「大量生産・大量消費・大量廃棄」のビジネスモデルは変革をせざるを得ないでしょう。いかに早く資源循環型のビジネス、circularな経済に転換していくかが求められています。
 そうした流れの中、企業行動の倫理的(ethical)な側面がこれまでとは違った形で意味をもち始めています。たとえば、人権とビジネスの考え方もSDGsの広がりの中で変わってきました。たとえば、経済活動が活発でなくCO2の排出をしてこなかった発展途上国の国々こそ、最も温暖化の影響を受けている状況が指摘され、「Climate Justice(気候正義)」という言葉で表されています。自分たちが豊かな暮らしをするために排出したCO2によって、発展途上国の人々が渇水や大雨に悩む状況を、先進国はどう考えるのかとの問いかけです。
 環境と人権とビジネスの関係性を重視する考え方がますます広がっています。企業がSDGsに取り組む、ethicalであることは自社に何をもたらすのか。企業の行動が人や社会に対してどう責任を果たすのか、という視点を経営者はもつべきです。

最後に:広報パーソンへのメッセージ

2019年6月、海外の機関投資家が声を上げました。世界大手企業707社(日本企業29社)に対し、環境インパクト報告が不十分として、「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)」を通じて情報開示の実施を求めたものです。情報開示のプレッシャーは今後ますます強まり、チェックは厳しくなっていきます。その状況下で、企業としての情報開示をどのように展開するのか、戦略をもつ必要があります。
 一方で、製薬企業の状況を見てみると、SDGsのうち「ダイバーシティ」については、かなり遅れている傾向が見られます。たとえば、女性管理職比率の低さ。これまでの経緯があってすぐには解消できないかもしれませんが、今、機関投資家はダイバーシティの視点を重視した企業への問いかけを強めている状況です。ぜひ、ダイバーシティ、ひいてはSDGsを前向きに捉えた企業として取り組みを実践し、その情報を発信していただきたいと思います。

広報部 部長 酒井 信一

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