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臨床試験の個別被験者データの共有にあたって
最近の動向も交えて
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欧州医薬品庁(EMA)では、2014年に臨床試験データ(clinical data)の公開に関するPolicy 0070[8]が施行されました。Policy 0070の施行は2段階に分けられています。1段階目はClinical report[9]の公開に関するPolicyで、すでに施行されています。2段階目の個別被験者データのEMAへ提出することの必要性、条件等については、EMA内で検討されています。その後、1段階目のClinical reportに対しての匿名化方法等、技術的な補足文書として2016年に外部ガイダンス(External Guidance)が公表されました。また、2017年よりワークショップ[10]を開催しCTDSの課題や法規制のあり方、匿名化の方法論等の議論が行われています。しかし、2019年5月時点ではBrexit対応のためPolicy 0070の活動自体が止まっており[11][12]、2段階目の適用範囲、手順、実施時期に関して明らかになっていません。
 米国食品医薬品局(FDA)では、個別被験者データの公開についての言及はありませんが、Food and Drug Administration Amendments Act(FDAAA、FDA改正法)801のFinal Rule[13]によって、2017年より治験実施計画書と統計解析計画書はClinicalTrials.govで公開することになりました。2018年1月には、治験総括報告書(Clinical Study Report)公開のパイロットを行うことが発表[14]されており、承認された9つのプロジェクトを対象に治験総括報告書が公開される予定となっています。その際、FDAが治験総括報告書の墨塗り/マスキング(redact)を行い公開する予定ですが、有害事象の叙述や症例一覧表は公開の対象外となっています[15]。今回の(臨床試験の透明化に向けた)パイロットが完了した後、パブリックからのフィードバックをもとに、今後の透明性の推進を検討していきます。2018年11月に出された安全性に関するメタアナリシスのドラフトガイダンス[16]では、個別被験者データの利用によるメタアナリシスは、メタアナリシスの質を高め、また解析手法の選択肢を増やすことが示されており、個別被験者データを使ったメタアナリシスを検討する研究者が増える可能性があります。
 Health Canadaでは、臨床情報の公開のためのガイダンス[17]が2019年3月にVersion1.0となりました。このガイダンスでは、CTDの2.5章(臨床に関する概括評価)、2.7章(臨床概要)、5.3章(臨床試験報告書)、治験実施計画書、症例報告書(CRF)のフォームや統計解析計画書を含む文書を公開する計画になっており、すでに1品目の文書が公開されています[18]。ただし、個別被験者のデータ(情報)については、プロアクティブには公開しないこととしています。
 オーストラリアでは、臨床試験の登録サイト、Australian New Zealand Clinical Trial Registry(ANZCTR)[19]が立ち上げられ、自国以外の試験も登録できるようになっています。ClinicalTrials.gov上でオーストラリアやニュージーランドの施設が登録されると、自動的にANZCTRのサイトでも当該試験が表示され、追加情報を登録できる仕組みです。オーストラリア政府からの資金により運営されているPopulation Health Research Network(PHRN)[20]では、被験者のプライバシーに配慮しながら、異なったデータソースとして保存されている健康や医療に関連するデータを統合し、承認された研究者に提供するサービスを実施しています。



















mark [9]
Policy 0070においてClinical reportとは、医薬品の承認申請のためのコモン・テクニカル・ドキュメント(CTD)における臨床に関する概括評価(2.5章)、臨床概要(2.7章)および臨床試験報告書(5章)を意味する。
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