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製薬協からの中長期的な提案(第一報)
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会長 中山 讓治

日本製薬工業協会
会長 中山 讓治

製薬産業は、さまざまな最先端の科学技術を取り込むことで、革新的な医薬品を世に送り出し、人々の健康や医療の質の向上に貢献してきました。モダリティの変化でいえば、天然物医薬品から始まり、低分子医薬、バイオ医薬、さらには、抗体医薬、再生医療、細胞治療と新しいものが次々と生み出されてきています。
 具体例として、消化性潰瘍の治療薬やピロリ菌の除菌治療薬の貢献を採り上げます。かつては、薬による胃酸分泌の抑制は十分ではなく、潰瘍による入院患者は非常に多く、手術による胃摘出が多く行われていました。1982年に最初のH2ブロッカーが誕生してからは、手術数は半減しました。1991年にはプロトンポンプインヒビターが、また、ピロリ菌の除菌治療が普及したことにより、患者数は、1984年の164万人から、2014年には約1/5の34万5000人に減少し、入院数は29万人から約1/7まで減りました。
 最近の事例では、新しいC型肝炎治療薬の登場により、治療期間は従来の1/4に短縮し、治療成績は41%から95%に達しています。約24万人(ウイルスが除去された患者数を国内流通錠数より推計)がこの恩恵を受けられたことになります。
 このように新薬は、日本の平均年齢または健康年齢の延伸にも大きく寄与してきました。しかし、社会保障給付費の伸びはそれを上回っており、現在の推計では、2025年には約140兆円、2040年には190兆円という推計が出ている一方、少子化に伴う生産年齢人口の減少により、これからは社会の支え手がどんどん減っていくという状況にあります。
 このような状況下で、財政収支の改善のために、社会保障関係費の伸びの抑制への要求は高まっています。経済・財政再生計画の集中改革期間である2016年から3年間の社会保障関係費の実質的な伸びを抑えるため、その財源の大半は、薬価の引き下げから捻出されました。イノベーションの創出には制度の安定性・予見性が不可欠ですが、薬価制度の抜本改革の結果、大幅な薬価引き下げの仕組みが導入されました。これにより、旧制度を前提に開発してきた開発品にとっては、見通しが大きく変わることとなりました。新薬創出等加算について、「特許期間中はその価値が変わらないため新薬の薬価は維持されるべき」とするコンセプトは実現されず、加算適用品目が大幅に絞り込まれ、研究開発投資への意欲を削ぐ制度となったと感じています。
 このように、現在、日本で医療・医薬に関係する者全体が厳しい状況におかれています。このまま医療費の削減・圧縮が続くと、イノベーションは衰退し、医療の質の低下が起きてしまいます。それでは国民の健康を悪化させ、さらに増えた医療費が経済を圧迫し、成長力を低下させるという悪循環(デビルサイクル)に向かっていきます。
 今後、最も進歩が期待されるのはライフサイエンスであり、その成果を最も活用できるのが製薬企業や医療だと思っています。新薬イノベーションが進めば、疾病の治癒がなされ、完治しない人でも社会に依存する度合いが減っていけば、デビルサイクルとは逆に、社会保障費用の負担が軽減し、財政の改善とともに経済効果が生まれ、それは次の新薬イノベーションにつながるというエンジェルサイクルに転換できます。
 もう1つは、今後さらに創薬標的は複雑化し、多様なモダリティの研究開発が進むことが想定される中、製薬業界だけでなく、広い産業を巻き込んだプラットフォームが重要な役割を果たしていき、そこからも新たな経済成長の可能性が生まれてくると考えています。今、日本は、デビルサイクルとエンジェルサイクルのどちらに進むか、その岐路にあると思っています。
 これから本格的な高齢化社会に向かい、今後、5年、10年のレンジで社会が変わっていきます。今、重要なことは、今までの単年度発想ではなく、中長期的な政策でこの社会をいかに良くしていくか、いかにエンジェルサイクルに向かわせるかということだと思います。われわれは、国民目線での社会保障・医療制度の全体最適、日本の創薬力強化に向けた高度な戦略策定とその実現に向けて取り組む必要があることを強く感じ、現在、製薬協として提案を検討している最中です。

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