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国内における製薬企業での人工知能(AI)の導入状況と課題
―製薬企業へのアンケート結果から見えてきたこと―
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AIにかかわるみなさんへ

AIにかかわるデータサイエンティストやベンダーにとって、製薬業界はよくわからない、特殊な業界のように思われるかもしれません。創薬分野はAIの対象と認識されて技術開発、導入は進みつつありますが、それ以外の分野ではほとんど進んでいません。その背景に、人を対象とした試験や市販後の安全性情報等の臨床データは複雑である、データ数(人数)は数百から数千とそれほど多くない、結果の信頼性等の要求が高い、という特性が原因かもしれません。しかし、一般の診療用に開発されたものに追加学習や転移学習を行う等、応用可能な場合は少なくないでしょう。加えて、膨大なドキュメントを複数言語で扱いますので、文書校正、文書作成の自動化や翻訳等のニーズも少なくありません。また、AI利用の成果は、良い薬を早く医療現場に届けることにつながると期待されます[7]

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厚生労働省 保健医療分野におけるAI活用推進懇談会 報告書(平成29年6月27日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000169233.html

終わりに

AIはなんでもできるのではなく、また通常のコンピューターシステムと異なり、入力に対する出力を仕様・設計により決めることができないだけでなく、なぜそのような出力が得られたのかの説明も容易でない場合がありますし、入力する情報の変化に合わせて継続的な更新が必要といった、信頼性が求められる分野での利用には厄介な特性があります。しかし、入力に対する出力のブレや揺らぎは人間でも生じますが、AIには疲れない、飽きない、面倒がらないといった人間にはないメリットもあります。特性を理解しうまく用いれば、既存業務の効率化や改善にとどまらず、これまでできなかったこと、業務プロセスとして省略していたことも実現できる場合があるでしょう。
 また、AIを構成する手法(データの前処理、学習方法等)は特定の目的ごとにあるのではなく、手法と学習させるデータによって変わります。ベンダーはAIの技術はあってもデータがなければAIサービスを開発することはできませんので、データの入手が容易な分野や大量のデータの保有者と共同で開発しています。このため、特殊なデータや用途が多くなる製薬業の分野では独自にAIの開発が必要となる場合が多くなります。しかし、学習で作られたモデル(データを処理するアルゴリズム)も異なるデータで追加の学習をさせる等により、目的にあったものに改良(転移学習と呼ばれます)することもできる場合がありますので、一から開発するのではなく、異分野を含めて広く情報を収集して流用可能なものを見つけることで、開発期間を短縮できるだけでなく、少ない学習データで実装したり、開発の成功率も高めることができる場合があります。
 そのためには、AIの導入者側はAIがなにをできるのか、そのために必要な学習データはなにか等をある程度理解している必要があります。一般財団法人日本ディープラーニング協会では、このような事業応用する人材向けの資格検定(ジェネラリスト検定[8])が行われているほどです。DS部会タスクフォース6では、AIに関する基本的な理解と、ビジネスで導入する際の手がかりに役立てていただけるような報告書の作成を進めています。このアンケート結果と合わせて目的中心のAI導入の一助となれば幸いです。



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