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米国新政権始動による日本国内製薬産業への影響
─オバマケアと薬価見直しを中心として─
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おわりに

米国製薬産業界がオバマケアの施行を通じて享受する予定であった市場の拡大やメディケア パートDビジネスにおける安定的な売上収益性等の直接、間接的なメリットは、米国新政権の始動により、今やその行方はまったく見通せない状況となってきたように見受けられます。そして、パートDに係る医薬品の価格引き下げが現実のものとなった場合には、米国でブランド医薬品を中心に事業を進めるすべての製薬会社にとって売上収益に対する一定のブレーキとなることは疑いがありません。さらに、パートDにおける薬価の引き下げは、米国においても今後着実に65歳以上の人口の増加が進んでゆく中で、徐々にその負の影響は広がってゆくことになると推測されます。加えて、プライベート健康保険のフォーミュラリ収載医薬品の購入価格の押し下げ圧力となることも懸念されます。
 ビジネスの主戦場の軸を海外に求めてゆくことは、持続的企業成長の重要な経営戦略の一つとなる日本ベースの研究開発志向型製薬企業にとっても例外ではなく、米国ビジネス戦略の再検討を要する場面が想定されます。潤沢にパイプライン製品を米国市場に投入することができれば対応策として望ましいことは言うまでもありませんが、現実的には容易なことではありません。
 中長期的な視点とはなりますが、取るべき方向性の一つとしては、イノベーション力を最大限に発揮し、世界に先駆けて患者さん、医療従事者等にとって価値の高い革新的医薬品を開発することが大前提となります。そのうえで、まず海外展開より、現在議論されている薬価制度の抜本的な見直しの過程で、医療の質の向上に資する革新的医薬品の価値が適正な薬価として評価される仕組みが整備されることが期待される日本国内で、優先してビジネス展開を図ることは、一つの方策ではないかと考えます。
 とはいえ、すでに米国内で確立した事業をいかに維持してゆくかが喫緊の課題であることに議論の余地はなく、その対策を講じるためにも、今後の本件に関する米国新政権の動きを注視してゆく必要があります。

(本稿は、2017年1月31日において入手可能な情報に基づいて記述し、医薬産業政策研究所が2017年3月に発行した政策研ニュース No.50に掲載した記事、「米国新政権始動による日本国内製薬産業への影響 −オバマケアと薬価見直しを中心として−」の内容に基づき、その後2017年5月29日の時点で入手可能な、米国で公表された関連情報も参照して記述したものです。本稿の公表までに米国新政権により政策内容が新たに示された場合等、記述内容が現状にそぐわなくなることがあり得ますので、その点にご留意ください。)

参考資料

JETRO; 医療保険制度(ヘルスケア)改革法が産業界に与える影響 〜新たに生まれる負担とビジネスの可能性〜、2011年10月。 https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000743/us_healthcare.pdf(参照日:2017/01/31)
医療経済研究機構;薬剤使用状況等に関する調査研究報告書、平成28年3月。

医薬産業政策研究所 統括研究員 村上 直人

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