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「第29回 製薬協 政策セミナー」を開催
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2つ目は、医療研究開発の大きなボトルネックと考えられる英語化の問題です。これについては、日本の省庁にはかなり抵抗感があるように感じられます。2016年にファンディングの過程を英語化しようとしたのですが、なかなか進んでおりません。しかし、2017年1月の時点で、数あるプロジェクトのうちの8つは英語で募集し、日本と米国、あるいは日本とシンガポールというように2国間で評価委員会を設置し、すべて英語で審査し、その審査結果も英語で返し、報告も英語を使用するというようにしました。8プロジェクトと全体からするとわずかではありますが、このように英語化を徐々に進めています。そして、2017年4月からはAMEDに応募するすべての課題で、数ページではありますが、英文タイトル、英文キーワード、研究者番号等をデータベース化し、自然言語解析等を用いて研究のトレンドやニッチのありかを戦略的に解析可能とするシステムを構築中です。そこに英語で情報を入れ、さらに海外のデータベースも利用して、課題の分析や今後の戦略立案に役立てられるシステムを目指しているところです。
 このような英語によるシステムの構築は基礎にも臨床にも必要なことですが、特に臨床の場では多国籍の多施設共同試験となることが多いため英語使用が必須となります。
 3つ目は、予算の安定化です。予算の安定化のためには、製薬協のご協力は欠かせません。現在製薬業界も厳しい状況にあることはよく承知しています。そのような状況下にありますが、 みなさんから官民パートナーシップ(Public Private Partnership、PPP)として貴重な資金を提供いただき、そこに公的資金を加えて生物統計の専門家養成プログラムを2017年から開始することになりました。従来より、公的資金による助成では、1年目には相当額の予算が組まれるものの、2年目あるいは3年目に入ると資金が減額されてしまうことが少なくありませんでした。いわゆる「心電図予算」です。AMEDがバッファリングすることにより心電図予算を回避し、研究者のモチベーションを損なわないようにしたい、というのがわれわれの願いであります。そのために民間の資金を活用させていただこうと考えています。
 最後の1つは、今までの医療のR & Dというと、創薬と医療機器開発に限られ、これらを二本柱として健康医療戦略も立てられてきました。今回、この二本柱に、新たな柱としてMedical Artsを加えることにしました。Medical Artsとはどのようなものかというと、たとえば外科医の天才的な手術手技や、特定の病理学者が有する暗黙知のことで、これらを抽出して広く臨床で使用できるようにすることを指します。あるいは、医療にかかる財務的負担を軽減する画期的な医療システムの創出にかかわるソフトウエアや発想等を指します。従来、このようなMedical Artsには、予算が付くことはありませんでした。このような領域を第3のカテゴリーとして必要であるとの考えから、Medical Artsという比較的簡略な言葉で定義して、創薬と医療機器開発に並ぶ柱としました。今後おそらく、製薬企業でも薬剤のみを供給するのではなく、その薬剤の服薬をどのように患者さんは順守したか、さらにそのモニタリングを行うシステムや、患者さんの情報を収集してそれを臨床の場へフィードバックできるシステム等の開発が進められるようになると考えられます。これらもMedical Artsであり、データシェアリングを実現することにもつながります。

データシェアリングの重要性とAMEDの取り組み

データシェアリングについて、考える際に興味深い動物をご紹介します。広鼻下目の一種であるコモンマーモセットは、わが国でも脳科学研究の実験動物として使われていますが、彼らはお互いにアイコンタクトをします。また、ボーカルコミュニケーションをすることから、なんらかの言語をもつと推定されます。そして、最大の特徴は、仲間が飢えていると食物をシェアすることです。研究者はこのシェア、つまりデータのシェアがなかなかできないのです。
 そこでAMEDでは、発足当時からデータシェアリングに注力してきました。たとえば、難病・未診断疾患の領域では未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases、IRUD)を設立し、また、がん領域では国立がん研究センターと協力して、産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業であるSCRUM-Japanを設立しました。これらの2つは、AMEDの代表的なデータシェアリングの取り組みです。
 このうちのIRUDの現状について紹介します(図2)。そもそもなぜ「Balkanization」が、診断のスピードを遅らせるのかについては以下のように考えられます。臨床研究に携わる現場の医師は、診療に基づく知見をデータ化して研究論文として発表し、自分のアイデンティティを高めるとともに、診療能力を向上させてさらなるデータ化を進めるということを繰り返しています。ところが、この過程でデータの囲い込みが起きています。特に難病・未診断疾患に関しては、データが囲い込まれると他施設を受診した患者さんは、診断がつかないままDiagnostic Odysseyとなってしまうおそれが多分にあります。

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