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「第3回 コード・コンプライアンス管理責任者/実務担当者会」を開催
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たとえば、現在ナショナルセンター(NC)では、クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の促進という事業が進められていることをご存じかもしれませんが、これは各NCの疾患登録システムを治験・臨床研究に活用するため、関係機関のネットワークを構築し、産学連携のコンソーシアムを形成するとともに、疾患登録情報を活用した臨床評価の手法に関するレギュラトリーサイエンス研究を行うものです。こうしたCINが進められている背景には、創薬コストが近年非常に高騰していることがあります。これもまた、従来の創薬のあり方から今後のあり方が変わってきていることを物語るものです。

進む、Massから個別へのシフト

従来の医療は、すべての患者さんに広く画一的な医療を提供し、そのなかで最も多くの患者さんが利益を享受することを目指すというものでした。一方、一部の患者さんに最も適した医療を提供するという個別化医療が今の時代の流れとなっています。再生医療やゲノム医療がその例です。
 従来の医療は多くの人がかかるような疾患を対象に医療が提供され、それによって社会全体の健康増進が図られる、コスト・ベネフィットも良いという一種のポピュレーション・ストラテジーのような考えで進められてきました。それが個別化医療になると、そのターゲットは難病や開発が遅れていた疾患です。開発が遅れていたということは対象患者が少ないということになります。希少・難治性疾患、ゲノム医療であれば細分化された病型に開発のターゲットが絞られることになります。それはつまり、いわばハイリスク・ハイベネフィット・ストラテジーへと変わってきているということであり、テーラーメイドの創薬開発に向かっていきます。

個別化医療のベネフィット(とデメリット)

個別化医療は患者、医師、製薬産業、国にいろいろなベネフィットをもたらします。たとえば、バイオマーカーを探索し、その違いによって、よく効く集団を絞り出し、その人たちに合った創薬をしていくと、治験の成功確率が向上し開発コストは全体として低減していきます。一方で、その対象は、これまでのMassに対して被験者の絞り込みが起こるため、市場も縮小するデメリットがありますが、社会はこうした個別化医療の方向に舵を切っています。たとえば私がかかわっている患者申出療養も、こうしたMassから個別化へのシフトの中で出てきた制度であると言えます。患者申出療養は、治験の手前にある先進医療の拡大治験版、つまりコンパッショネート・ユース的な制度であり、1人の患者さんのためにあつらえたプロトコルで実施するというもので、今までの臨床試験からはほど遠いものであって、患者さんの権利とか可能性のある唯一の未承認薬へのアクセス権を重視するといった制度です。

一方で加速する、過去への回帰と陥穽

研究倫理の立場からは、こうした個の権利を重視する研究政策は、社会の価値との衝突を考えるとやや行き過ぎではないかと思います。これまで日本では臨床と研究はあまり区別されていませんでした。研究は治療の一環といったことが医療者の多くに浸透していました。それが2000年以降頃から、研究倫理について考えられるようになり、研究と診療とはもともとの発想が異なることがようやく医療者に認知されてきたところです。たとえば第I相試験で健常者を使って毒性を見ることには倫理的な緊張感を伴うのですが、かつての日本の医療者は研究と診療の区別がなく、倫理的な緊張感をもたずに第I相試験を行ってきました。特に日本の場合は海外の後追い試験ばかりでしたので、治験と言いながらも「治療」であるという認識で行われていました。それがここ10年くらいで、研究は人を道具に使っているのだから、そこには必ず倫理的な緊張感がある、特にその中でリスクが高くて個人の利益がほとんどないような第I相試験に対して、治療という認識で行ってはならないという考えを10年かけて育ててきました。それが、今回のように個別化医療に焦点がシフトしていくと、逆にかつての状態に戻っていくのではないかと思います。研究倫理の出発点は、人が人を研究手段として用いることにあります。個という大事な存在であるべき人を、研究手段に用いるのが臨床試験です。そこには不道徳性、反倫理性が必ず伴います。しかし、だからこそ倫理的な緊張感があるはずです。しかし、個別化医療へと進む中で、「あなたのためなのだから……」というようなことで臨床研究が進んでいくと、この倫理的緊張感は失われていくと思います。

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