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Personal Health Recordの活用
─「医療健康分野のビッグデータ活用研究会」レポート─
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ほかの事例として汎用されているものでは、Propeller Health社の気管支ぜんそく患者向けの治療アプリもあります。これはGSK(Glaxo Smith Kline)社と提携しているもので、吸入器にセンサーが付いており、吸入の頻度や吸入時間、吸入量等のデータがクラウド上に蓄積されるようになっています。医療者にも情報共有ができることで、疾患管理に役立っています[9]
 また、米国では病院ごとにアプリをカスタマイズしている例もあります。たとえば、メイヨークリニックやジョンズ・ホプキンズ大学、サンフランシスコのUCSFのメディカルセンター等多くの先端医療施設には個別の疾患アプリがあります。病院によっては教育ツールだけを切り出して、患者教育に利用しているところもあります。
 他方、英国ではNHSの公式のホームページで健康医療関連PHRアプリをHealth Apps Libraryというリストで紹介しています。そのリストには300種類ぐらいのPHRアプリが記載されています。よく使われているPHRアプリをリスト化し、セルフメディケーションを進めるためです。英国で使われているPHRアプリの対象疾患の種類は米国と類似し、一番多いのがうつ病で、次が糖尿病となっています。
 このように、欧米の医療先進国では医療機関や個別の医師の活用が進むと同時に、当局の活動も見られ、疾患・健康のためにPHRアプリが広く活用されつつあります。国際的な多くの医学会ではすでにPHRアプリを使った臨床エビデンスの報告が盛んになされている状況です。

日本におけるPHRの利用

日本においてもPHRを利用した疾患ソリューションは進みつつあります。糖尿病や高血圧をはじめ、さまざまな疾患の患者さん向けPHRアプリがあり、効果検証の研究が始められています。米国での学会報告事例からは約5年遅れではあるものの、2016年の日本糖尿病学会では、徳島大学教授の松久宗英氏や東京大学准教授の脇嘉代氏から、PHRアプリ使用症例での臨床効果が報告されています[10]。その中で、PHRを使うことで6ヵ月後にHbA1cや体重が下がるというエビデンスが示されています。ほかにも、生活習慣病を中心に、PHRアプリによる動機づけや、服薬アドヒアランスの改善、治療継続率の上昇といった報告も出てきています。これらのエビデンスの多くは、PHRアプリが医療従事者と患者さんのコミュニケーションを密にすることで治療効果を高めることを示しています。
 また、患者さんに対する効果だけではなく、臨床現場の医療従事者に対する利便性の向上もPHRの大きな論点になっています。そのいくつかの事例では、有効性に加えて、導入によって現場の負荷が減少することも検証されています。
 PHRアプリは一覧性が高く、記憶情報に比べて情報が正確であり、また診療の事前に見られる等の長所があるため、臨床現場で問診時間や紙のハンドリングが減り、効率化につながっていると言われています。たとえば、あるクリニックでは、食事指導で従来10分近くかかっていた問診時間が、PHRアプリを利用することで半分以下の時間に短縮したことが報告されています。
 日本におけるPHRは、自治体、医師会単位等地域包括ケアの実現に向けて、エリアで活用する事例が増えつつあります。PHRを地域ネットワークに導入すると、そのエリア内の病院、クリニック、薬局が連携をして、データを共有できるようになります。もともとの大きなトレンドは、電子カルテ同士をつないだ地域医療連携(EHRによる情報共有)でしたが、今ではクラウドにデータを上げて、そこにPHRも取り入れることによって、クラウド上で患者さんのPHRデータを共有し、医療連携に使うという事例が出てきています。
 先進事例では、PHRのアプリとして患者さんのデータが収集され、それを医師が見ることができるというシステムにとどまらず、患者さんを中心として、デジタルデバイスから取得したバイタルデータ、行動・食事記録、お薬手帳のデータ等と連動して、電子カルテの臨床検査の数値等の診療データの一部をPHRへ移行するシステムも出てきています(図1)。PHRは医療画像データ等を含めた電子カルテ機能を完全に備えてはいませんが、このようなシステムを取り入れている医療機関では、多くの電子カルテのデータが入力できるようになっています。




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第59回日本糖尿病学会年次学術集会シンポジウム http://www2.convention.co.jp/jds59/program/index.html#03(2017/01/31参照)
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