製薬協について 製薬協について

政策研のページ

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
179号タイトル
政策研のページカテゴリ画像
前へ1234567次へ
Personal Health Recordの活用
─「医療健康分野のビッグデータ活用研究会」レポート─
line03 line03 line03

PHRプラットフォームを提供する企業のビジネスモデルは3つに分類されます。1つ目はBtoC(Business to Consumer)で、利用者から利用料を集める形ですが、実際には有料でアプリを利用する人はまだ多くはありません。2つ目は、BtoBtoC(Business to Business to Consumer)で、医療機関等が利用料を払い、ユーザーには無料で提供する形です。医療機関は患者さんへ無料で疾患別アプリ等を提供し、患者さんとの情報交流を高め、診療関連データとして患者さんの診療に活用しています。これらのビジネスの顧客は企業や自治体等に広がりを見せています。3つ目は集まってきたPHRデータを加工してデータ販売する形です。現在はまだ少ないですが、将来的には加工データの販売が増えていくことが予想されています。
 日本において、こうしたPHRによる健康情報の収集の動きは、当初は健康医療機器メーカーが、機器と連動して測定データを管理するために始まりました。しかし健康医療機器メーカーのPHRアプリは特定の機器の専用であり、ユーザーにとっては不便でした。最近はPHRプラットフォームを提供する事業者のアプリでは、主だった機器メーカーの異なる機器のデータ(血圧、体重、血糖、活動量、体温、睡眠等)をつなぐことができるものもあり、より使いやすくなっています。
 このようなPHRプラットフォームを提供する事業者の出現により、機器メーカー各社は逆にハードウェア開発に特化しつつあります。欧米も含めて、機器メーカーはオープンにPHRプラットフォーム上でデータ連携する形が主流です。

海外におけるPHRの利用

米国ではPHRという言葉はあまり使われていません。代わりにインターネットを通じて行われる健康医療に関する情報システムに対して、Telehealthという言葉が多く使われています。Telehealthは日本語訳すると遠隔診療ですが、日本の遠隔診療とはイメージが異なり、EHRやPHRのことを総称しています。Telehealthによって検査データの確認や処方を受けることができ、また病院予約もできる等、通常の外来と変わらないサービスが可能です。オバマケアにより、米国では電子カルテの普及が格段に進みましたが、その普及を背景として、Telehealthに対して医療機関側での許容度やニーズが高くなり、広く標準的に使われています。米国のようにEMR(電子カルテ)やEHRの普及が進んでいる国では、日本に比較してデジタル医療に対する親和性も高く、一般にPHRの普及も進んでいる状況が見られます。
 そういう中で、米国ではPHRとして活用されているアプリに対しては、FDAがMMA(モバイルメディカルアプリケーション)という認定を出して、品質の担保を行っています[7]。すでに、現在200種類弱のデジタルツールがFDAに申請されて審査を受け、認定されています(2016年9月現在)。
 Telehealthでアプリを利用する主要な目的としてはトラッキングがあります。血糖、食事、服薬状況等をモニタリングしながら行動管理をすることができます。もう1つの主要な目的は患者教育で、従来のいろいろな教育プログラムをデジタル化して、自己学習によって行動変容を促す試みが行われています。
 米国においては、循環器系、糖尿病、呼吸器系の領域に対するTelehealthの利用事例が多くなっています。初めてFDA認定を取得したWellDoc社の糖尿病アプリが代表的な事例です。2011年には、このモバイルアプリを使用することでHbA1cが下がるという臨床研究結果を糖尿病学術誌に発表した[8]ことから、それ以降、医療機関での導入が増えています。
 アプリと連携し、糖尿病患者の血糖値やインスリンをはじめとした薬の種類と用法用量、食事、運動療法等の糖尿病ガイドラインにある治療法、行動管理がすべてデータ入力できるようになっています。さらにデータ記録のフォーマットに加えて、患者さんが継続できる工夫があり、また行動変容につながるような、たとえば、「励まし」や「情報共有」といった「続けるための仕組み」があります。
 治療だけでなく予防に対するアプリの利用も盛んです。特に、糖尿病ではDPP(Diabetes Prevention Program)という早期に介入をして重症化予防をしようというアプリがあります。
 また、 精神神経疾患、 特にうつ病についてもTelehealthの利用が盛んです。 米国ではすでに患者さんの5人に1人はTelehealthを使っていると言われています。その背景には患者さんの通院の困難性があります。そのため外来通院の代わりに活用されて、Telehealthのアプリを通じた処方等によって、患者さんの利便性を上げています。

前へ1234567次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ