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「第28回 製薬協政策セミナー」を開催
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前者の事例研究では、過去約30年間に日本で創製された12の医薬品をリストアップし、それらの探索、開発プロセスや使用状況等を検証しました。最も古い医薬品は、プラバスタチンの上市につながった物質特許発見が1974年のコンパクチンで、最も新しいものは同2005年のニボルマブです。12の医薬品は抗菌薬、高脂血症、高血圧、アルツハイマー型認知症、免疫抑制剤、がんなど、基本的かつ患者数が多い薬効領域であり、4分の3が新作用機序でした。また、研究開発期間(研究開始から最初の承認まで)が平均約16年と、他産業のそれに比べて非常に長いことが特徴の1つです。これだけ長いということは、医薬品開発に携わる研究者が世代交代している場合もあります。長期雇用、長期的な視野を重視する日本の企業でなければ成し得なかった取り組みともいえます。さらに、12の事例は、単剤での売り上げが最大時で各社の総売り上げの約2割を占めていたことや、事例のほとんどが欧米を含めた海外でも販売され、その効果が世界的に認知されていることも特徴でした。
 12の事例研究では、サイエンスの吸収が非常に重要であることが示唆されました。具体的には、(1)探索プログラムの着想 (新しい標的、作用機序)、(2)探索や合成の新しいツール、(3)新薬候補物質の新用途の発見、(4)新薬候補物質の作用機序の理解と臨床試験の誘導におけるサイエンスの活用です。特に、12の事例中10の事例では、病態動物や光学分割といった研究ツールの進歩が探索研究の独自性に非常に重要な役割を果たしていました。また、そうしたツールは、大学や国立研究機関で開発され、産学連携等のプロセスを経て製薬企業に活用されている傾向も認められました。サイエンスが用途の発見につながる点も見逃せないサイエンスの貢献です。
 しかし、サイエンスは確立されれば自動的にどの企業でも吸収できるわけではなく、吸収能力を有した人材が企業にいることで初めて活用できるのだと思います。12のうち5つの事例では、キーとなる企業研究者が当該分野における世界最先端の研究室等に滞在していました。すなわち、世界に広く知識を求め、先端的研究機関での経験と人的交流を深めることが、戦略的な研究ビジョン形成の契機となり、画期的な創薬の起点になっているケースが非常に多いということです。

創薬の不確実性は大きい

一方、探索あるいは開発プロジェクトにかかわった研究者へのサーベイでは、先行医薬品があるケースと先行医薬品がないケース、それぞれ約100のプロジェクトからの回答を得ました。その結果、探索研究の開発時にサイエンスが未完成だった例が少なくないことがわかりました。特に、先行医薬品がないプロジェクトでは、研究開始の段階で、標的分子すら不明だったケースが約4割に上ることもわかりました。
 サイエンスが未完成の場合、探索プロジェクトの不確実性が大きいと予想されます。そこで「研究開発の開始時点で、医薬品の候補物が発見される確率がどの程度あったと考えていますか」との質問を提示しました。その結果、「全く不確実であった(例えば医薬品候補物が発見される確率は5%未満)」との回答が、先行医薬品がないケースでは24%に上り、まさに開拓的な創薬に取り組む企業の約4分の1は、候補物が発見できないことを覚悟のうえでプロジェクトを開始していることがわかりました。その一方で、先行医薬品があるケースでは、「全く不確実であった」との回答は5%でしたが、「大きな不確実性があった」、「不確実性がかなりあった」と合わせると67%となり、創薬が非常に不確実なプロセスであることに変わりはないことが示唆されました(図2)。こうした結果を踏まえれば、大学等におけるサイエンスの進展の結果、自動的に新規の医薬品がもたらされるのではなく、サイエンスと創薬はパラレルに進む、あるいはサイエンスの進歩を促しながら創薬が進むと考えたほうがよいように思います。

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