製薬協について 製薬協について

Topics | トピックス

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
175号タイトル
トピックス画像
前へ1234567次へ
「製薬協メディアフォーラム」を開催
テーマは「グローバルヘルスにおける日本の貢献を探る」
line03 line03 line03
杉下 智彦 氏

「グローバル社会から日本への期待 - SDGs時代を迎えて -」

独立行政法人 国際協力機構 国際協力専門員 杉下 智彦

line03

1.アフリカにおける課題意識

8月27日~28日に第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が、アフリカ初の開催地となるケニアの首都ナイロビにおいて開催されました。会議では、アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現等に向け、アフリカ諸国が具体的な国家戦略を策定する際に参考となるフレームワーク「UHC in Africa」を、世界銀行および世界保健機構(WHO)、グローバルファンド、アフリカ開発銀行と日本の共同で公表しました。今、日本からアフリカへの貢献には、政府開発援助(ODA)をはじめとする国際協調の枠組みのみならず、市場メカニズムを用いた貢献が求められています。
 アフリカへの貢献を考えるうえで最も大切なのは当事者意識です。南アフリカ共和国の報道写真家であった故ケビン・カーター氏は、スーダンで撮影した「ハゲワシと少女」という写真によりピューリッツァー賞を受賞しましたが、この写真が発表された後、「なぜこの写真家は子供を助けなかったのか」との社会的な論争が起こり、1カ月後に自殺しました。ハゲワシは実際には子供を狙っていたわけではなく、国連の食糧配給センターに投下されていた食糧を狙っていたのですが、カーター氏は、母親がその食糧を手に入れようと一時的に子供を地面に置いた偶然の構図でこの写真を撮影したのです。このエピソードからもわかるように、においも温度もないものではアフリカの実情は伝わりません。その意味において、今回のTICADはアフリカで開催されたことが最も良かった点といえます。多くの日本人が初めて現地に行き、当事者として現地の事情に触れたので、大変歓迎されました。
 私自身は最初、青年海外協力隊員としてマラウィのゾンバ中央病院に勤務し、マラウィ大学医学部の初代教授となったフィリピン人の医師に師事して学びました。当時のマラウィはHIV感染のピークにあり、勤務していたゾンバという町では成人のHIV罹患率が39%に達していました。1995年に病院前で撮影した写真に写っている同僚たちのほとんどはHIVで亡くなりました。なお、現地の村に行くと、伝統医療が彼らの多様な宇宙論と一緒になって積極的に行われていることがわかり、彼らの社会システムの中で、医療をいかに継続的・自立発展的なものにできるのかを思案していました。

2.MDGsの進捗、SDGsの課題

8つのミレニアム開発目標(Millennium Development Goals、MDGs)のうち3つが保健分野における目標でした。小児死亡率、妊産婦死亡については、サブサハラアフリカを含む世界全域で目覚ましい改善が見られましたが、都市部と農村部の間での健康格差が課題になっています。
 HIVをはじめとする感染症に関してはこの15年で状況は劇的に改善しました。現在でも3000万人近い人々が毎年HIVに新たに感染していますが、そのうち7割程度は抗HIV薬にアクセスが可能であり、多くの人々はくすりを飲みながら普通に仕事をして生活を送っています。またマラリアも、さまざまな改善・対策が進みつつあり、罹患率・死亡率ともに大きく下がりました。ただ一方で、結核については新たな課題となっています。途上国における治癒率が85%程度で横ばいになってきています。また薬剤耐性の結核が増えてきていることもあり、先進国での治癒率は途上国のそれを下回っています。今や結核にどう取り組むのかは、途上国のみならず先進国も含めて大きな課題になっています。
 こうした取り組みを支える保健予算も、この15年間で増えてきました。そして今、われわれはユニバーサル・ヘルス・カバレッジ−自分たちが支払可能な形で、質の高い医療を全員が受けられるシステムを構築する−という高い目標をもって行動しており、これが持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)の1つのゴールとなりました。アフリカ連合各国が国家予算の15%以上を保健分野に割り当てるという「アブジャ宣言」に調印したにもかかわらず、実際には多くの国々で保健分野での政府支出が2~5%にとどまっており、それが高額な自己負担へと跳ね返った結果、必要とされる医療にアクセスできない現状があります。実際、予算の15%以上を保健分野に支出しているアフリカの国は4カ国しかありません。
 TICADでも多くの国家元首が保健分野への国家予算支出の重要性を訴えており、特にケニアは大統領がグローバルファンドへの5億円の拠出を宣言し、相互に国際保健システムにおける予算を拠出する動きも始まっています。

前へ1234567次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ