製薬協について 製薬協について

Topics | トピックス

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
173号タイトル
トピックス画像
前へ123456789次へ
「2016 ライフサイエンス知財フォーラム」をバイオインダストリー協会と共催
line03 line03 line03

また、日本では実際上は提訴前に和解交渉を行っている場合が多いのです。提訴に踏み切ると、裁判所が加わり心証をほのめかしながら進行するため、提訴前の当事者同士の交渉とはまったく違った進行になります。アメリカの場合は、提訴しても当事者が主体として和解交渉を進めることになります、リードをとってくれる人は、普通はいません。
 弁護士になって5年を経過しますが、当事者間の交渉で和解の合意ができる場合はそれで終了し、合意ができない場合には提訴に踏み切ると思うのですが、なかなかクライアントが提訴に踏み切らないのが実情です。弁護士としては提訴したほうがいいと思っても、提訴の可否、当否はクライアントが自ら決断する事項ですので、その結論は最大限尊重します。なかなか提訴への決断はできないもののようです。「裁判所で勝訴する蓋然性は高く、7、8割」などといっても、あとの2割、3割の敗訴判決になった場合が怖いようです。
 次に、基調講演1が指摘する、特許権侵害訴訟の勝訴率20%という低い数値が特許権者に提訴を躊躇させる主な原因であるという件について話します。知財高裁所長の設楽隆一氏の講演や論文(自由と正義2015年4月号47頁参照)によれば、2011~2013年の間の実質的な勝訴率は、設楽氏自身が司法統計や内部資料にあたって調査した結果に基づいて算出すると、42~47%ということができ、決して低いわけではない、ということです。
 現在の日本の状況をみると、弁護士数は増えていますが一般民事事件は減少傾向にあります。特許権侵害訴訟も同じ傾向にあります。また、特許出願件数も2005年をピークに長期低落傾向にあります。したがって、経済の停滞状況とその打破について知財訴訟専門の弁護士としての立場に立って、考えてみても、これといった有効な解決手段の提案は、残念ながら思い当たりません。各企業の開発担当者、出願や訴訟を担当する弁護士・弁理士がその開発能力、訴訟能力を高め、それぞれの分野で競争に打ち勝って困難な時局に対処していきましょう、としかいいようがない厳しい状況にあると思います。
 終わりに、本来のテーマである、知財高裁はこの10年間に特許の保護、紛争の処理および判断基準の形成に期待された役割を果たしてきたか、という点について、一言いいたいと思います。
 さきほども若干触れましたが、知財高裁が発足した2005年は特許出願件数も歴史上最大になり、加えて審査請求期間も7年から3年に大幅に減縮され、特許庁・裁判所にとって最大の課題が未済事件の滞貨一掃でした。裁判所においては、リパーゼ判決を主軸に厳しいサポート要件とクレームの文言解釈で、権利者をクレームに縛り付けにしたうえ動機づけを不要とする同一技術分野論に基づいて進歩性なしとする特許無効の判決が相次いだのです。
 その後、2007年初頭に飯村敏明氏が裁判長に加わった前後から、見直し期に入り、地裁の裁判体は特許権侵害訴訟の審理判断にあたっては、特許無効から判断して請求棄却の判決をすべきものではなく、まずは侵害の成否の判断をし、侵害が成立するという判断に至った場合に、はじめて特許が有効か無効かの判断に入ることとし、かつ、その特許の無効を判断するにあたっては、同一技術分野論だけに基づいて判断するだけではなく、そのほかに動機づけがあるということができた場合に、はじめて容易想到性があると判断すべきものとされており、今ではそのような審理判断をすることで長期安定期に入っていると考えられます。
 予定したピオグリタゾン事件の詳細な説明は割愛しますが、この侵害訴訟は大阪地裁、東京地裁の双方に同時に係属し、主として侵害の成否をめぐって主張立証が行われており、他方、無効審判請求はやや遅れて請求されて提訴に至ったものの、結果として知財高裁がその有効性を否定するという最終判断を下したのを待って、それを踏まえて、両地裁がそれぞれ終局判決をする経緯となったものと理解されます。

小柳 正之氏

基調講演 3

産業発展を支える産業財産権制度
~強く・広く・役に立つ特許権の設定に向けて~

特許庁 特許技監 小柳 正之

line03

わが国の技術貿易収支は、この10年で大幅な黒字になり、2015年では約2兆4000億円の黒字となりました。これはわが国の企業活動がグローバル化し、世界中から知的財産権使用料をはじめとする利益が日本に入ってきていることを示すものです。このような技術貿易で得た利益を研究開発に再投資し、グローバル・イノベーション・サイクルを回していくことにより、国富がさらに増加していくのではないかと考えています。

前へ123456789次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ