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「2016 ライフサイエンス知財フォーラム」をバイオインダストリー協会と共催
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このような背景の中、勝訴率も低く、損害賠償額も低い日本からの侵害訴訟を回避し、アメリカでの訴訟を選択している日本企業も少なくありません。アメリカで連邦巡回区控訴裁判所が設立されて、知的財産が活性化しましたが、日本では、知的財産戦略大綱などにより知的財産という言葉が認知されたものの、知的財産の価値の実現という意味ではもうひとつうまくいきませんでした。特許の価値が企業価値に顕著に表れているのが製薬業界であり、知財制度を改革してどのように知的財産の価値を実現していくかが問われています。
 国際的には、19世紀末のパリ条約・ベルヌ条約にはじまり、20世紀終わりの世界貿易機関(WTO)を経て、2015年、今後の世界標準となることが想定される環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に至るまで、制度的な整備がなされています。国を相手にした仲裁もできるようになっています。一方で、発展途上国・新興国に目を向けると、特許保護の制限、強制実施権による特許権の制限など、自国産業を保護するという最近の傾向もあります。その中には、国内産業を保護するための独占禁止法の運用などの懸念もあります。
 こういった環境の中で、これからは、国際的視野をもった制度設計が必要です。知的財産の国際的な保護は新興国・発展途上国における利益を確保することも必要で、そのためには、国際的な制度整備の基礎となるように国内制度を充実していくことが必要です。特許侵害訴訟によって特許権者が損害賠償を十分に取れる構造に国内法を変えていくことが基本的な政策となります。国際的視野をもった制度改正を期待したいと思います。

塚原 朋一 氏

基調講演 2

知的財産高等裁判所は、特許の保護、紛争の処理及び
判断基準の形成において、期待された役割を果たしてきたか

元知的財産高等裁判所 所長、弁護士、弁理士 塚原 朋一

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基調講演1では、日本の知財訴訟、特に特許権侵害訴訟の運営実績、すなわち、訴訟件数の低迷について、かなり批判的に紹介されました。私は、40年を超える長期間にわたって、裁判官として民事刑事の裁判を担当し、そして、最後の7、8年間は知財訴訟、特に特許権侵害訴訟を担当していた者として、基調講演1とは、一部、異なる説明をさせていただきます。
 始めに、その前提として、知財高裁における大合議判決の運用の実情について、簡潔に紹介します。その趣旨・目的は、知財高裁がプロパテントに向けて、最初は自ら次々と特許無効の判断をしてしまいブレーキを踏みながらも、最終的にはプロパテントへのアクセルを踏むようになったことを紹介したいと思います。
 まず、その嚆矢を飾った2005年9月30日の「一太郎事件」の判決では、一審では特許権に基づく差止請求を認容したのですが、知財高裁大合議判決では、高裁段階になって新たに提出された引用例に基づいて、原告の特許は無効にすべきものだという衝撃的な理由で、一審判決を取り消してしまったのです。プロパテントに向けて産業界では一段と熱が上がりはじめたその時期に、いわば水をかけるような判決を出してしまったことについて、判決言い渡しのときは、実はあまり気にしませんでした。
 しかも、同年11月11日の「偏光フィルム事件」の判決では、サポート要件を、特許の独立した立派な拒絶事由として認めるという判決を出しました。この時期までは、プロパテント、アンティパテントという気持ちはまったくなく、結果として特許権者に厳しい判決を連続して、しかも、大合議判決で出してしまいました。
 これに対し、産業界や弁理士界から厳しい批判が起こり、知財高裁としてはこれに応えるようにして、その後は判示には直接には出てきませんが、内心としてはプロパテントの意識をしっかりと持つようになっていきました。その最たるものが、2006年1月31日の「リサイクルのインクタンク事件」の判決です。この事件では、第一審において特許権者である原告が、原告製品のリサイクル品の販売を続ける被告に対し、その差し止めを請求したのですが、いったん販売したことにより特許権は消尽したとして、これを棄却したのです。これに対し大合議体は、本件のような場合には消尽してはいないとして、地裁判決を取り消して、原告の請求を認容したのです。

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