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医療健康分野のビッグデータ活用の現状と課題
−ビッグデータが医療の概念を変える−
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DPCの活用については民間のDPCデータに基づく病院比較サイトもありますが、EMRの活用はまだ不十分です。
 2009年政府のIT戦略本部が発表した「i-Japan戦略2015」に「日本版EHR」構想が提起されています。ここでいう日本版EHRは「患者個人の生涯健康医療電子記録」というものであり、その個人カルテをデータベース化して、国、地域で活用しようという構想です。いくつかの地域において医療情報ネットワークで組み込まれている限られた情報連携はみられていますが、診療情報のビッグデータ化とその活用については、患者さんの個人情報保護の問題を含め、まだ越えなくてはならない大きなハードルがあり、本格活用には少し時間がかかりそうです。
 平成26、27年度の厚労省予算で「電子カルテ等の分析を行う医療情報データベースの試行運用」の予算が付いています。これはPMDAに情報分析システムを構築し、副作用の発見、定量的な把握を行うもので、将来的には1000万人規模のデータ収集を目指しています(図1)。

図1 医療情報データベースを活用した医薬品等の安全対策の推進[4]

図1 医療情報データベースを活用した医薬品等の安全対策の推進

出典 : 平成27年度厚生労働省予算関連資料より抜粋

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厚生労働省における医療ICT化の取り組みについて」厚生労働省資料(2013年11.5)

診療情報ビッグデータ整備の先進国の状況

アメリカ・ヨーロッパ主要国の中で診療情報ビッグデータの整備が進んでいる代表的な国は、アメリカとイギリス、スウェーデン、デンマークなどです。これらの国の取り組みには日本も学ぶべきところがあります。その概要は以下のようなものです。
 まず、アメリカですが、民間保険会社がレセプトデータベースを構築し、費用対効果を高めようとしています。非常に多くのデータベースに分かれていますが、トータルとしてはほぼ100%のカバーとなります。「医療保険の携行性と責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act、HIPAA法)によって、個人情報保護に対する規制が明確なことにより、民間企業によりEMRを含めた多彩なデータベースの構築、リンクが進んでいます。レセプトに比べEMRは若干普及が遅れていますが、2009年に公布した電子カルテなど医療ITの普及を促進するための法律(Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act、HITECH法)により、普及率が上がり、総合診療医、家庭医(General Practitioner、GP)では69%に達しています。
 医師やアカデミアも診療データを積極的にデータベース化してリアルデータ研究を行う意識が高いため、診療データベースを用いた研究論文の数は他国を圧倒しています(年間1万件ともいわれる)。
 またSentinel Initiativeプロジェクト(2008年〜)により、医薬品や医療機器の安全性のモニタリングをするための統合された電子システムを目指した動きがはじまっています。将来的には1億人規模の医療ビッグデータベースを構築して市販後の安全対策に資する予定ですが、パイロットプログラムとしてMini-Sentinelのデータネットワーク(分散データベース)を用いたサーベイが始まっています。
 イギリスは、国民保健サービス(National Health Service、NHS)のもと、IT化プログラムや医療データ化推進の制度や取り組みにより、診療データの電子化率は世界トップクラスであり、EMR率はプライマリケアでは100%、セカンダリーケアでも約70%と高率です。代表的なデータベースは、GPの診療データのCPRD(Clinical Practice Research Datalink)、病院の診療データであるHT(I Hospital Treatment Insight)ですが、がんをはじめとする疾患のレジストリー(登録患者の診療データ)などもリンクでき、患者さんの個人情報保護を行いながら、データの活用を促進する制度が機能しています。

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