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CIOMS ワーキング・グループ Ⅵ 報告書 第4章より

「臨床試験における安全性データの収集と管理」の紹介 第2回〈全3回〉
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どのように安全性データを収集するべきかをさらに検討する前に、すべての患者からのデータ収集の基礎となる患者と医師や医療スタッフとの交流や対話について考えておくことは重要である。臨床検査や心電図など客観的な測定項目の値は、かなりわかりやすく一般に主観的要素があまりない。また、医療従事者は有害な作用を示唆する症状・兆候(発疹など)には、注意しているはずである。しかし、医師や、ほかのスタッフが被験者から情報や主張を聞き出すための方法は多様であり、漏れがなく、有意義で、偏りのないデータを引き出す力はバラバラである。たとえば、来院時に、「その薬を飲んで何か影響はありましたか?」(この問いかけは影響があり得るという疑いをもたせるかもしれない)とか、「その薬を飲んで何か良くない症状を経験しましたか?」(治療に伴って望ましくない事象と関連づけようと患者に影響を及ぼしかねない誘導的な問いかけである)といった自由回答形式の質問がされる場合がある。来院と来院の間に患者に何を経験したかを記録するよう求める場合もある。そのような記録に際して、あるいは来院時の質問の際に、患者に起こり得る有害事象を列挙して示すかもしれない(「頭痛、吐き気、…はありませんでしたか?」)。この種の情報を聞き出すために、メニュー形式の電子的な仕組みを使う可能性もある。
 この分野はあまり注意を払われてこなかったが、本CIOMSワーキング・グループは非常に重要となる場合があると確信し、次のように推奨する。

CIOMSワーキング・グループ Ⅵ の推奨:
  臨床試験において患者から情報を聞き出すために用いるプロセスは、施設間で、可能であるなら試験間でも一貫しているべきであり、プロトコル、同意に関する手順書、医師のトレーニングにおいて明確に説明されるべきである。どのような方法を用いようとも、その方法は試験全体で一貫しているべきである。投与開始前の情報についても同様である。
  被験薬が望ましくない効果の原因となる可能性を思い起こさせるのではなく、一般的な言葉で患者への質問を構成することが、おそらく最も良い方法であろう。たとえば、「前回お会いした後、何か感じたことはありますか? 私とお話ししたいことはありますか?」などである。
  患者の直近の経験を聞き出すときに、副作用の可能性がある事象の一覧を読み上げることは望ましくないが、医学的に重要な既知の副作用の疑いや副作用を示唆する症状・兆候については、医師が可能な限り早く知るために、 患者に注意を促すべきである。

[訳者注]

事象の一覧を読み上げる場合、読み上げられた事象は過剰報告となり、それ以外では過少報告となる恐れがある。しかし、被験者保護の観点から重要(重篤)な副作用を早期に察知し回避することは優先される。

後者のような状況の例はHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の試験での筋肉痛や圧痛であり、これらは横紋筋融解症に関係している可能性があるからである。そのような重要な症状・兆候に特に注意を払い、医師から患者になるべく早期に知らせてもらうために、同意取得時に指導することもできるし、注意事項を書いた配布物を提供することもできる。どのような方法を用いる場合でも、患者へのこの種の「警告」は日常的に行うべきではなく、特別な状況下でのみ行うべきである。

[訳者注]

ここでいう「特別な状況下」とは、スタチンにおける横紋筋融解症のように、特定の重要(重篤)な事象が発現し得ることのエビデンスがある程度蓄積されている状況である。ここでは、そのような状況下で患者がなんらかの言語的または非言語的サインを示した場合に情報を引き出す方法の例を示している。

患者が主観的な訴えを行えない場合は、特に難しい状況である。たとえば、胎児や新生児、アルツハイマー病の患者、昏睡状態にある患者、患者の代理人としての親・介護者などが試験への参加に際して医師に応対する場合である。われわれの知るところでは、そのような状況にどのように対応すべきかの国際的な指針は存在しない[11]。しかし、もっと通常の状況では、そのような患者が含まれる試験については、データを収集するプロセスをプロトコルや同意説明文書で説明するべきである。
 多くの企業ではプロトコルを補足する試験実施マニュアルを準備しており、プロセスや手順を概説している。これも、この問題に対処する方法であろう。

mark [11]
欧州での例は以下を参照。Adults with Incapacity Act 2000( Scotland; http://www.scotland.gov.uk/Publications/2008/03/25120154/0 ),および UK Department of Health's Draft Guidance on Consent by a Legal Representative on Behalf of a Person Not Able to Consent Under the Medicines for Human Use( Clinical Trials) Regulations 2003. さらなる議論については以下を参照。Medical Ethics Today, 2nd edition, Chapter 14, British Medical Journal Press, 2004.
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