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「2014ライフサイエンス知財フォーラム」を開催
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講演5

知的財産と公衆衛生に関する国際議論

WIPO日本事務所 所長 夏目 健一郎 氏

製薬に関する特許をめぐる国際的課題

夏目 健一郎 氏

 知的財産とグローバルヘルスの関係については、すでに前の演者の先生が主要な部分を述べましたので、私は最近の議論について話します。すなわち、医薬品アクセス、遺伝資源、伝統的知識、特許制度調和およびWIPO Re:Searchについてです。
 医薬品アクセスの問題は、2000年頃に医薬品の価格が高いのは特許が原因であるとの開発途上国の指摘から、WTOドーハ閣僚宣言を経てTRIPS改正にまでまとめ上げられ、医薬品生産能力のない国への対応も含め、強制実施権を発動できるスキームが構築されました。しかし、実際にこのスキームが利用されたのは1例のみです。これに関して、特許が医薬品価格高騰の要因ではない、総合的な公衆衛生対策が必要なことであるという考え方と、このスキームが十分ではなく、もっと議論をつくすべきであるという意見があり、対立しています。それぞれの立場から議論がなされています。
 次に遺伝資源の問題ですが、アクセスと利益配分について、「資源利用の監視体制(チェックポイント)を設ける」という名古屋議定書の合意ができましたが、遺伝資源の利用を誰に合意をとるかが明確ではない場合があり、実際での運用に支障があるというケースがあるとされます。遺伝資源については、知財面では、特許出願時に遺伝資源の出所を開示するなど、利益配分のための仕組みを導入すべきとの主張があります。
 医薬品アクセス問題、遺伝資源の利用と配分などの問題を背景にして、知的財産と公衆衛生の問題は、WIPOの特許制度の議論の場にも流れ込んできています。元々、この場は「特許制度の調和」が主要議題とされてきましたが、現在は公衆衛生と特許、遺伝資源と特許などを含めた20くらいのテーマが議論に上がってきております。すなわち、アジェンダが多様化してきています。
 最後に、公衆衛生の問題に関して知的財産の専門機関は何をなし得るかという観点から、WIPOはWIPO Re:Searchというオープンイノベーションプラットホーム(データベース)を構築しましたので、紹介したいと思います。このシステムでは、顧みられない熱帯病、マラリア、結核に関して、WIPOが技術提供者と技術利用者の間に立ち、橋渡しをするもので、すでに複数件で研究開発に関する合意が成立しています。
 このように、知財と公衆衛生の関係は多様化してきており、今後よりさまざまな観点から議論・交渉が行われていくのかと思います。


講演6

イノベーションと特許をめぐる国際的課題

製薬協 知的財産委員会 委員長 奥村 洋一 氏

グローバルヘルスを促進するイノベーションと知的財産

奥村 洋一 氏

 日本は世界で第3位の新薬創出国であり、優れた新薬開発力により、いまだ満たされない医療ニーズの充足にチャレンジし、革新的な新薬を提供することにより、医療への高い貢献度を誇っています。一方、日本の製薬企業がグローバルヘルスに貢献するために開発力を活かしてきたかという点は反省点として挙げなければならないかもしれません。医薬品の研究・開発は長い期間と多大なコストを要するものであり、一方、独占販売期間として残っている特許期間は延長期間を入れても約10~15年(世界で平均すると10~12年ほど)です。当該販売期間によって得られる利益は次の研究開発投資に向けられています。継続的な新薬創出のために、研究開発成果に対する適正な保護が必要であり、知財制度なしに持続的な研究開発は可能ではありません。また、実際に先進国での利益は先進国の患者さんに還元されており、途上国においてもこの自立的システムは必要です。

製薬に関する特許をめぐる国際的課題

 昨今、知的財産に関する国際的枠組みの弱体化への懸念がグローバルに拡大しています。特許性判断については、インドにおける特許法第3条によってノバルティスの結晶特許が不特許事由に該当するとして無効となった件が有名です。一方、カナダでは他国と比して厳しい特許要件が課され、また、裁判所によって特許が無効化される制度のもと、研究開発の成果である知的財産制度の重要性を政府に働きかけることも難しい状況です。他の注目すべき例としては、化合物特許の非侵害を認めたインドにおけるTarceva事件ほか、TRIPS協定の規定の解釈をもとにインドおよび他国に例が広がる非感染症をも対象にした強制実施権の発動があります。

製薬協のスタンス

 製薬協はまず、最貧国などでの医薬品アクセス問題の改善に資するよう努力します。また、これらの状況に対し、新薬の特許権による保護が期待できないことにより、当該国の新薬市場への投資の減退、長期的な新薬へのアクセスへの遅れが発生することを懸念しています。画期的な新薬の研究開発を継続するために、また、各国において新薬にアクセスできる社会や体制を構築・維持するために、研究開発の成果である特許権、商標権、研究開発データ等の知的財産を適切に保護する制度が必要です。

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