製薬協について 製薬協について

Top News | トップニュース

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
201405タイトル
top_news
前へ1234次へ
「第2回コード・オブ・プラクティス/プロモーションコード管理責任者・実務担当者会」を開催
line03 line03 line03

ディオバン事件から3つの切り口で考える

 ディオバン事件はたまたま起きた特殊な事件とみるべきではありません。その背景に企業とアカデミアの不健全な関係や制度の不備があります。薬害オンブズパースンでは意見書を公表して制度改革の提言を行い、刑事告発もしています。この事件が提起している課題は多岐に及んでいますが、今日は大きな3つの切り口で分析してみます。


利益相反―透明性ガイドライン・奨学寄付金

 第1 は利益相反です。利益相反への対応としては開示による透明性の確保は必須です。しかし、これは万能ではありません。関与自体が許されない場合があるという点が重要です。また、利益相反は管理するルールを作って対応していくだけでは不十分です。利益相反がもたらす弊害を除去して公正さを担保するためには、臨床試験の登録制度や公的基金の創設など、システム全般の見直しをしていかなければならないと思います。この公的基金についてはイタリアのAIFA(イタリア医薬品庁)の実践例があり、薬害肝炎検証・検討委員会でも提言しています。
 透明性ガイドラインは完全実施をしたうえで、さらなる強化が必要です。まず、公開対象の拡大をお願いします。具体的には、研究開発費、接待費の詳細の公開、医学雑誌、学会、患者団体への費用の公開、地位・役職、人的支援(労務提供)の公開が必要です。次に、アクセスのしやすさを担保してください。現状は忍耐力がなければたどり着けない。自社のサイトをチェックしてみてください。業界で基準を作り、製薬協で横断的なサイトを作ることを目指すべきです。そして、米国同様に法的義務化をすることが必要です。
 また、臨床試験のための奨学寄付金は廃止して委託契約にするべきでしょう。ただし、委託契約にすることで、かえって透明性が失われるようなことがあってはなりません。先ほど述べた臨床試験登録を義務化すること、また、委託契約における公表制限特約のあり方について、研究者の正当な権利保障への配慮が必要です。かつてシンスロイド事件では、ブーツ社が実施した臨床試験において、自社に不利となった試験結果を研究者が公表することを執拗に妨害して公表に7年かかったということがありました。


臨床試験の公正さの担保

 第2は臨床試験の公正さの担保です。治験以外の臨床試験も法的に管理するシステムが必要です。日本の場合は治験のみが法的な規制を受け、それ以外は法的な規制の外にあります。しかし被験者の権利保護という観点からは区別の理由はありません。ICH-GCPは手続きが煩雑ということはありますが、医師主導臨床試験では例外規定を設けて一部をスキップできるようにすれば済むことです。また、不正行為に対応する調査機関、制度を設けていくことが必要です。臨床試験の登録は法的な義務とし、公表対象には、結果やプロトコルについても含めることが必要です。そして、何より「臨床試験が本当に患者のためになっているのか」という根源的な問いかけをして、目的や設計を吟味する姿勢が必要です。出版バイアスやスピン、ゴーストライティング問題などへの対応も重要です。ディオバン事件の背景にはアカデミアに生物統計家が不足しているという深刻な問題があり、これには国としての対応が必要です。


広告規制

 第3は情報提供のあり方、特に広告規制についてです。広告が与える影響は非常に大きいのですが当局の反応は鈍いです。消費者や医療関係者が受ける情報はトータルなものです。したがって広告に問題があれば、添付文書の警告等が台無しになります。薬事法は66条と68条で広告を規制していますが、「広告」のみを規制対象とし、行政の通知により広告3要件を満たすものだけが「広告」であると定義することで規制対象が限定されています。その結果、イレッサが問題となったときは、当局や企業は対談形式の記事は学術情報の提供で広告ではないといったりしていたのです。WHOは、「宣伝(promotion)とは、医薬品製造業者及び販売業者による、医薬品の処方、供給、売買および/または使用を促すすべての情報通知や説得行為」と定義して実質をみています。薬事法自体を見直すべきです。医師が広告の影響を強く受けることは周知のことです。そして、製薬企業が発信した情報はメディアを通じて単純化され増幅されます。こうしたことも十分考慮して適正な情報提供ができるようにするべきです。


MRの賃金体系

 MRの賃金体系は、販売実績ウェイトをゼロにすべきです。MRは市販直後調査にみるように安全対策においても重要な役割を担うことが予定されています。薬害エイズ事件の教訓は規制と振興の分離でしたが、1人の人間の中に安全対策と販促をやる人を共存させることは無理です。両者は相いれないのです。


説明責任

 企業の説明責任は非常に重要です。不祥事が起きたとき第三者委員会を組織することがよく行われますが、その際、利益相反はなかったとか、薬事法に違反していないとか、トップが中途半端な評価的コメントをいうことは、後の調査で違うことが出てきたときのダメージが大きいということも留意しておくことが肝要です。


まとめに代えて

 最後に私の敬愛するイギリスの活動家チャールズ・メダワー(SSRIが自殺念慮を引き起こすことを指摘するなどした)の言葉を紹介します。
 「2000年も昔、医学と民主主義がともに古代ギリシャおよびその周辺を発祥の地として生まれたことは決して偶然の結果ではなかった。医学と民主主義は、どちらも人類の発展とその基本的要求に深くかかわっており、いずれも自己決定権、個人と社会のあり方などに密接に関係する事柄だったからである。医学と民主主義はその精神において、互いにわかちがたく絡み合っており、その両者を基本的な意味で脅かすものが秘密主義である」
 今こそ企業とアカデミアの文化を変えるときです。製薬協のコード委員会で活動する皆さんに大いに期待します。

(コード委員会 会合企画チーム 樗澤 啓示)

前へ1234次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ