製薬協について 製薬協について

寄稿

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
201405タイトル
contribution
前へ1234次へ
臨床薬理学会海外研修を終えて
line03 line03 line03
2. 国際共同試験

 研修期間中、ある糖尿薬の国際共同試験のメンバーに加わりました。エンドポイントとして得られたデータは、国際共同試験において各国の診断基準が異なることがあるため、予めプロトコルに定められた基準に従い、医師とフェローが評価者となりClinical Events Classification (CEC)を行い、エンドポイントの最終評価を行います。国際共同試験における問題の1つとして単位の相違を経験しました。糖尿病の血糖コントロール指標であるHbA1c[1] は国により測定方法が異なり、国際共同試験では調整が必要ですが、一部の国で使用されている測定方法が把握されていないという問題がありました。
  DCRIに留学した目的の1つは、ドラッグ・ラグ解消のため日本のARO(Academic Research Organization)や施設と協力し、国際共同試験に日本のAROや施設として参加することでした。現在、ある試験への日本の参加が検討されておりますが、国際共同試験に関し日本が諸外国に比べ遅れをとっている背景として、試験にかかる時間、費用、試験を行う人員、規制当局の人員、基礎研究への偏重、言葉の壁、人種民族差の考慮の必要性などが挙げられます。さらに参加国、施設の選定は製薬会社やCRO(Contract Research Organization)が行うため、過去の実績をもとに日本での試験実施は難しいという固定観念が影響しているとも考えられます。
  実際に国際共同試験にかかわっている製薬会社、CRO、他国のAROの医師と話す機会がありましたが、日本で試験を行っていないにもかかわらず、日本での臨床試験の実施にネガティブな意見が多かったように思われます。一方、日本の施設が参加した国際共同試験の試験責任者に日本の問題点について尋ねたところ、「日本での試験は正確で迅速であり、十分な症例を集めることができた、症例の脱落が若干多かったほかには大きな問題はなかった」との肯定的な回答をいただきました。今後、国際共同試験における日本の実績を積み重ねることで、負の固定観念を打破できると考えます。
 また日本の規制当局が諸外国と異なることも指摘され、国際共同試験への鎖国のようにも揶揄されますが、人種民族差を考慮したうえで日本国民の健康を守るという観点では譲れないものです。安全で正確かつ迅速な試験を行うことが、わが国が国際共同試験に参加するうえで求められることです。「国際共同試験を日本で行う際に用量設定をなぜ日本は独自に設定しなければならないのか?」という問いをDCRIのある医師から尋ねられました。体重のみならず食事やCYP酵素、感受性や疾患の重症度なども考慮しなければならず、ただやみくもに国際共同試験に参加したところで、承認薬を増やすことにはつながりません。ある報告では、多くの薬剤で欧米における承認用量が日本より多いとされており、PK/PD studyを行い、日本人の適正使用容量を設定することで試験の失敗を減らし、効率よく承認薬を増やすことが肝要であると伝えました。
 われわれが海外の考え方を学ぶのと同様に、日本の考え方を広く知ってもらうことも必要だと感じます。そういった点でPK/PD studyや人種民族差に関する英語論文がより多く必要ですし、臨床薬理学会の海外研修員制度は大変意義深いものだと考えます。また海外から臨床研究に携わる研究者を招き意見交換を行うことも有用だと考えます。



mark [1]
高血糖状態が長期間継続することにより、血液中の過剰なブドウ糖が体内の蛋白と結合する。赤血球の構成蛋白であるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンと呼ばれ、このサブタイプのHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)が1~2ヵ月以内の血糖値の状態を反映し、血糖コントロールの指標として広く用いられている。日本では、JDS値が用いられてきたが、現在は国際標準のNGSP値が用いられている。
3. DCRIでの臨床試験の流れ

 DCRIでは近年バイオマーカー研究にも力が注がれており、他大学や臨床検査会社と提携し、国際共同試験で血液、尿などのサンプルを集め解析を行うプロジェクトが行われています。ある薬に関する小規模多施設共同ランダム試験の研究グループに加わり、プロトコルの作成を行いました。試験目的は薬の科学的作用機序を調べることであり、血液、尿検体だけでなく組織検体なども採取しており、バイオマーカー・プロジェクトチームの関与が重要でした。
  この試験では、スポンサーからの試験依頼を受けて、スポンサーとの会議を行い、試験のコンセプト、適応症例などが検討されました。これに基づきスポンサーに提出するproposal synopsisとともにプロトコルを作成しました。それと同時に予算を算出し、試験の概算および内訳をスポンサーに提示しました。これらをスポンサーが検討し、疑問点、改善点を電話会議で協議しました。
  試験を通じて感じたのは、経営担当者とプロジェクトリーダーの必要性です。日本で行われている小規模試験では、会計担当が専門家ではなく医師や医局秘書であったりします。DCRIでは会計の専門家が担当しており、予め定められている項目ごとの単価に応じて試験全体の予算を算出します。これにより迅速にスポンサーに詳細な予算概要を提示することができます。プロジェクトリーダーは、臨床試験に精通しており、試験全体を俯瞰的に把握しコーディネートします。具体的にはスポンサーとの交渉のまとめ役、仕事の割り振り、他施設の研究者とのやり取りなどを行います。医師は、科学的、医学的側面で試験に関与します。私も指導医の指導のもと論文などを参考にしてプロトコル作成を行い、他の研究者と科学的側面でのやり取りを行いましたが、DCRIの医師も日本の医師と同様に臨床業務を行う必要があり、医師のみでは大規模試験を管理することはできません。プロジェクトリーダーは、看護師等として臨床を経験した後、DCRIでクリニカルリサーチ・アシスタント(CRA)として経験を積み、プロジェクトリーダーとなるようです。
  DCRIでは、信頼性、公平性を保つ面から、データの統計解析の際に研究者や医師が直接データに触れることはできません。研究者はStatistical Services Requestを作成し、生物統計家にデータ解析を依頼します。生物統計家はStatistical Analysis Planを作成し、研究者と話し合い、Statistician Reportを作成します。これをもとに研究者は、学会発表および論文作成を行います。

前へ1234次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ