製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドライン2005
第2章
各社のブログラム構築・運営のためのガイドライン
Ⅰ.各社におけるコンプライアンスの取り組み
コンプライアンス・プログラムとは、先に述べたように、事業者が違法行為等によってもたらされるリスクを最小化することを目的として、その遵守を推進するためのマネジメント・システムを指します。
今や、ほとんどの会員各社においては、コンプライアンス体制を確立し、毎年、計画を策定し、継続的に運営されています。多くの会社におけるコンプライアンスへの取り組みは、次のような事項を含んでおり、さらに、各社ごとのオリジナリティにより、それ以外にも、様々な活動を実施されています。
- 経営トップによるコンプライアンスに関するメッセージ、全社各部門、社員、グループ会社への継続的な要請・呼びかけ
- コンプライアンス担当役員やコンプライアンス・オフィサーの任命
- コンプライアンス推進のための委員会の設置・運営、年間計画や事案の審議
- コンプライアンスを全社的に推進する部門の設置・任命、機能・担当者の拡充
- コンプライアンスに関する行動憲章、社内規定等の制定・定期的な見直し
- マニュアル、ハンドブック、Q&A集等の配布・定期的な見直し
- 派遣社員、取引先、取引先社員等へのコンプライアンスの要請
- コンプライアンス担当部門、法務部門、監査部門の拡充・増員
- 社員等の相談、提案、通報等を受け付けるホットライン、ヘルプラインの設置・運営(社内又は社外に設置)、全社コンプライアンスへの反映
- 取引先社員、ステークホルダー等からのコンプライアンスに関する意見、通報の窓口の設置
- 経営トップへの定期的なコンプライアンス活動に関する報告
- 社員からのコンプライアンス誓約書の取得
- 全社各部門におけるコンプライアンス責任者、コンプライアンス・リーダー等の責任者や指導者の任命
- 毎年度における全社及び各部門のコンプライアンス年間計画の策定と実践
- MR、臨床試験担当者をはじめとする職種別、部門別のコンプライアンス教育
- 役員、部門長、管理職、中堅社員、新入社員など階層別のコンプライアンス教育
- 新たな法律の制定・改正にともなう社内講習会、社内プロジェクトの実施
- 各部門、支店、営業所ごとの自主的なコンプライアンス勉強会
- 社内報、社内ホームページ、社内アンケート等によるコンプライアンスや新しい法律の啓発
- 内部監査部門等によるコンプライアンス監査、法令分野別の社内調査
- 監査役監査、監査委員会監査、会計監査その他の監査、内部統制システムとの連携
- コンプライアンス報告書、CSR報告書等の作成・配布
- 事業報告書、営業報告書、ホームページ、コンプライアンス報告書、CSR報告書、企業広告等による会社としてのコンプライアンスへの取り組みのステークホルダーへの発信、社外への公表
- 国内外のグループ各社における事業内容や関連法規・各国法制に根ざしたコンプライアンス体制の確立、コンプライアンス教育・研修の実施等の支援・連携、ホットライン・ヘルプラインの導入
- 法令違反、企業倫理上の問題発生時の改善、懲戒、体制の見直し、啓発、監査
一般に、コンプライアンス・プログラムでは、1.計画・策定(Plan)、2.実施・運用(Do)、3.監査(Check)、そして、4.改善(Act)の要素より構成され、これらの繰り返し(PDCAサイクル)という循環モデルによる継続的なスパイラルアップが提唱されています。各社において考え抜き、継続的に実施することが大切です。
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II.コンプライアンスに基づく経営-経営者が率先して-
何にも増して大切なのは、まず、経営者からの継続的なコンプライアンスのメッセージ、情報発信であります。社長から、あるいはコンプライアンス担当役員から、様々な社員と接する機会を捉え、また、社内報等の社内配布物、イントラネット(社内ホームページ)などを利用して、毎年、継続的にコンプライアンスに関するメッセージ、情報の発信を行うことが大切です。
社長が真剣にコンプライアンスを考えているのか、それともタテマエだけなのかは、社長からのメッセージの一言一言、毎年の事業計画の策定、組織編成などから、従業員は敏感に感じ取ります。
表面上は、コンプライアンス・プログラムを構築したり、コンプライアンス委員会を設置しても、また、ガバナンス重視といって、委員会設置会社にしても、例えば、すべて外部の法律事務所や弁護士、コンサルタントなどに丸投げであったり、法令遵守が大切だといいながら、毎年の予算策定、人員計画策定にあたって、コンプライアンスに要する費用や人員の削減や抑制を求めたり、コンプライアンス担当部門を廃止・縮小するようなことがあれば、当社の経営者は、タテマエだけで、コンプライアンスを重視していないと受け取られます。
経営の中に、そして、個々の事業活動の中にコンプライアンスを前向きに活かしていくことが、重要であります。
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III.プログラムの継続的な改定
プログラムやスタンダードは、定期的に見直さなければなりません。倫理の基準は時代とともに変遷し、また、法令も随時改正され、新たに制定されます。また、プログラムの運用において得た経験をフィードバックし、プログラムやスタンダードを企業や社会の現状に即したものとしておかなければ、形骸化しその存在価値は極めて希薄なものになってしまいます。
策定後、定期的にその内容を再検討し、必要とあれば改定していくことになります。例えば、3~4年ごとに抜本的な改定を行うものと決めおき、他方、毎年、法改正その他の重要事項に応じて最低限の改定を行ったり、それが難しい場合でも、随時、社内イントラネット(社内ホームページ)等による新たな情報を提供するといった対応が考えられます。
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IV.従業員による理解度の把握-アンケート等の定期的な実施-
(1)法令遵守・企業倫理への理解度の把握
法令遵守を徹底した企業活動を継続的に推進していこうとするならば、各部門長やコンプライアンス担当役員は、役員・従業員の法令遵守・企業倫理への理解度を常に把握し、その向上に努める必要があります。
法令遵守を徹底するとしても、役員・従業員に、事業に関わる法律のすべてを一度に理解させるのは困難ですので、まず、ベースとなる遵法精神、企業倫理の考え方を理解させ、さらに、各従業員の職種ごとに関係ある法令教育を、各部門におけるOJTや外部講習会を用いて実践していくことが考えられます。
従業員の法令遵守や企業倫理への理解度を把握するためには、いくつかの方法がありますが、よく用いられ、かつ実施方法を工夫すれば効果的なのが、アンケート等による理解度の把握です。
形式は、書面又はイントラネットによる方式、全社的に又は各部門・職種ごとに実施する方式、独立して一斉に実施する方式のほか、研修会終了後や人事評価時に提出を求める方式など、様々な方式などが考えられます。従業員の理解度を把握する方式であれば、いずれでも構いません。
(2)アンケート等の実施
定期的・継続的にアンケートを実施する場合は、まず次のような点を調査すればよいと思われます。
- スタンダードを読んだか。
- スタンダードの記載内容は理解できたか。
- 企業倫理は必要だと思うか。
- 企業倫理は仕事に役立つと思うか。
この他、各社のコンプライアンス担当部門の必要性に応じて質問を追加すればよいのですが、このようなアンケートを繰り返し実施することはあまり効果的ではなく、プログラムを運用する段階になれば、漠然とプログラムの理解や違反事実の有無などを問うよりも、対象部門の業務に応じたより具体的な設問により、従業員の企業倫理への理解度、さらには会社全体における企業倫理の浸透度を把握する方がよいと考えます。具体的には、「法令遵守・企業倫理への理解度」、「法令遵守、企業倫理を推進する会社環境」、「法令遵守・企業倫理に対する意識」、「実際の行動」などを知るための設問を20~50問程度作成し、同じグループの設問を順番に記載するのではなく、ばらばらに混在させたものとします。これは、アンケートの精度を高め、回答の誘導を回避するためです。
これらのアンケートの結果は、コンプライアンス担当部門が取りまとめたうえで分析を行い、その結果については基本的にはコンプライアンス担当役員から取締役会ほか経営トップに報告するとともに、アンケートに回答した従業員に対し随時フィードバックすることが肝要です。
また、アンケートは、プログラム導入時に実施し、それで終わりというのでは、意味がありません。毎年等定期的に、しかも、全従業員を対象に実施することが検討されるべきです。毎年の人事評価の際にあわせて実施するとか、社内ホームページにそういったコーナーを設け、全社員が必ず毎年1度はアンケートに答える(上司確認)ことを義務づけることなどが考えられます。
なお、前述のとおり製薬協においても、会員各社のコンプライアンス浸透度把握の一助として、2004年2月に会員各社の従業員に対して「コンプライアンスに関する意識調査」のアンケートを実施しました。
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V.計画的、継続的な教育・研修―すべての部門が前向きに取り組む―
(1)教育・研修の必要性
プログラムがその本来の機能を有効に発揮するためには、各部門における通常ルートによるコンプライアンスの徹底のほか、コンプライアンス担当部門を中心に絶えずコンプライアンスの意義・重要性を強調し、経営トップ及び従業員の共有の価値観としてプログラムの内容を広めていくことが必要です。そのための方策として、教育・研修の担当部門やコンプライアンス担当部門又はプログラム担当責任者が各部門と連携しての情報の発信などが考えられます。コンプライアンスに関する研修としては、企業倫理遵守に関する研修のほか、さらに、具体的に、刑法(贈収賄罪ほか)、商法、証券取引法、独占禁止法、景品表示法、下請法などの会社の業務に関わる法律知識についての講義を定期的に実施することが考えられます。
(2)研修の効果
プログラムを定着させている企業においては、入社時や管理職研修などの研修の際には、必ずプログラムに関する内容を組み込み、繰り返し説明しています。また、法令遵守、企業倫理の実践を率先して行うべき経営トップ、取締役、執行役員、各部門責任者、支店長、工場長、研究所長等に対する研修も忘れてはなりません。
一般に、法令教育、企業倫理及びプログラムに関して研修を実施する場合、次のようなメリットが期待できます。
- 詳細な内容を伝えることができる。
- 一定時間集中して取り組ませることができる。
- ケーススタディを用いることにより能動的に参加させることができ、判断のプロセスを共有することができる。
- コンプライアンス担当者にとっては、プログラムに対する従業員の理解度、浸透度を測る絶好の機会となり、また、従業員からの生の声を聴取するチャンスである。
コンプライアンスに関する教育・研修は、対象者の階層や業務内容に応じ、期待される役割を果たせるようにトレーニング・プログラムを作成し、通常業務の教育・研修に加えて適宜実施します。この研修は、独立して実施することも考えられますが、スムーズに導入するために、新入社員・中堅社員・管理者といった階層別に行われる研修に組み込んで行うことも考えられます。さらには、これを一歩進めて定期的に研修を受講することを義務づけている企業もあります。なお、米国においては、例えばモトローラー社のように、部下が研修を受けることについて上司が責任を負う、つまり部下に研修を受講させることができなかった上司は人事考課において減点されるといった制度をいれている企業もあります。
特に、過去の医薬品業界における不祥事を省みた場合、新任役員、新任管理職、新入社員、MR、治験担当者等について重点的に倫理教育、法令教育が検討されるべきであると思われます。
いずれにしても、プログラムが基本的には、すべての役員・従業員を対象に存在することを考えますと、(1)一定期間において、全員が研修を受講できるように工夫すること、(2)研修の成果を踏まえ、継続して実施することが重要です。
(3)研修の手法
次に研修の手法としては、まずはプログラムやスタンダードの存在そのもの及びその内容について従業員に理解させる必要があるため、レクチャー形式の研修が考えられます。この場合、プログラムの説明会に近いものとなるかもしれません。漠然と説明するのではなく、具体的事例を交え、策定時に留意した点を紹介するなど、プログラムやスタンダードの内容を伝えながらも、従業員の理解を助けるよう工夫を行うべきです。
プログラムの浸透化、定着化をめざす段階でのトレーニング・プログラムは、レクチャーを一方的に聴くといった受動的なものだけではなく、研修の成果をより高めるためには、その部門ごとの具体的なケースを用いたディスカッションなど従業員が能動的に参加できるものを採り入れる必要があります。プログラムの浸透化、定着化をめざす段階でのトレーニング・プログラムとして、以下のようなものが考えられます。
- 会社を取り巻く法令、部門・業務にかかわる法令の理解
- 関連部門の担当者や弁護士、弁理士、税理士等の専門家による講演
- 医法研その他の社外団体主催の法律教育講習会への参加
- 小グループでの以下のテーマ等に関するディスカッション
- 業務にかかわる法律知識の理解
- 今、なぜ企業が法令遵守、企業倫理に取り組むべきなのか
- 企業活動における間違いは、なぜ起こるのか
- プログラムは、業務遂行を行う際のブレーキなのか
- グローバル・スタンダードとコード・オブ・エシックス
- ケーススタディを用いたディスカッション
- 業務にかかわる法律事例のケーススタディ
- 複雑で結論を得ることが困難な事例設定
- 企業活動の場面場面でよく遭遇するジレンマ
- 実際に起こった事例、起こりがちな事例の分析
- 「なぜいけないのか」の徹底究明
- 切り口の多様化
- 法令遵守、企業倫理の経営手法としての側面(権限委譲を進めるベース)
- 法令遵守・企業倫理の徹底がコスト削減(Cost Efficiency)につながることの考察
- 社会的責任の達成、社会的貢献のあり方
- エクセレント・カンパニーといわれる企業のプログラムに対する取り組みから得られる教訓
なお、実際に受講者を一同に集めることが困難または非効率的な場合は、E-ラーニングなどの社内のネットワークを利用したり、市販のビデオ教材や各社ごとの課題を中心に作成したオリジナルのビデオ教材を作成・配布して行う企業が増えています。特に、国内の全国の支店・工場、グループ会社、さらに、海外のグループ会社も含めて、コンプライアンス教育を実施するためには、こういった方法が効果的であるといわれています。
これらのトレーニング・プログラムを実施する狙いは、従業員にスタンダードに記載された文言を暗記させることではなく、プログラムについて自ら考え、企業人としての行動基準を再認識する機会を提供することにより、プログラムを策定した目的を達成することにあります。これは通常、短期間で達成し得ることではないので、コンプライアンス担当部門としては工夫に工夫を重ねて取り組む必要があります。
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VI.ホットラインの効果的な運営と見直し―公益通報者保護法を踏まえて―
ホットライン、ヘルプラインとは、コンプライアンスに関して、コンプライアンス担当役員又はその事務局担当者あてに設置された、通常の報告・相談体制とは異なる、機密性を重視した特別のルートです。
本来、部門・部課内における解決などの通常ルートを通じて法令遵守の確保が実践されるべきですが、それらのルートが本来の機能を果たさず、違法状態が放置される場合に、速やかに違法状態を改善するため、補完的な仕組みとして設けられるのが、このホットラインです。
米国企業では、ホットラインを設けることが一般化しており、わが国においても、多くの企業において、ホットラインが設置されています。日本経団連においては、2003年10月に奥田会長名による「企業倫理徹底のお願い」を公表し、「企業倫理ヘルプライン(相談窓口)の整備」をすべての会員企業に要請しました。2004年6月18日には、公益通報者保護法が成立したことから、その関心が一層、高まっています。
ホットライン設置の目的は、問題点を早期に発見・解決することです。今や、プログラムを有効に機能させる仕組みとして、ホットラインを設置することは、必須とされています。
ホットラインの運用にあたってのポイントは、以下のとおりです。
- 会社のルールとして、次の点を社内規定等において明確にすること
- 通報内容の調査、対処にあたって、通報者の氏名等、通報者の特定がなされないよう、秘密保持の点で細心の注意が払われるべきこと
- 根拠のない個人攻撃(個人的な恨み・嫉みによる非難・誹謗・中傷)の手段としてホットラインを用いてはならないこと
- 会社は通報者に対して不当な懲罰・差別を行わないこと、また、ホットラインへの通報を理由とする差別・不利益を及ぼす者(例えば、違法行為をしていると指摘された者)がいた場合には、これに対しては、会社として厳正に対処すること(この点については、社内規定等に取り決めるとともに、冊子等に明記しておくことが必要)
- ホットラインへの連絡方法
ホットラインへの連絡方法は、郵便や社内の連絡便を用いたり、専用の電話番号やE-mailアドレスを設けるなどの方法が一般的ですが、法律事務所や専門業者をホットラインの通報先にしている会社もあります。また、社内においても、企業倫理部門、法務部門、広報部門、人事部門、監査部門等の複数の窓口を設けている例も増えています(例えば、独占禁止法違反の通報は法務部門、セクシュアル・ハラスメントの通報は人事部門など)。
各社の実状に即して合理的な方法を採ればよいのですが、通報者が他の従業員の目を気にせずに通報できる方法であることが重要です。
ホットラインの運営において最も注意すべき点は、通報者の秘密保持、プライバシーが尊重され、通報により不利益を受けることがあってはならない、ということです。通報のあった事案を処理・調査する過程において、通報者の氏名等は秘匿されるべきでありますし、違法な行為を指摘された行為者からの攻撃や会社による不利益な扱いを防止できる制度としておく必要があります。
また、提供される情報の信憑性を確保することも重要であります。
- 相談者の匿名を認めるか
匿名を認めるか認めないかは、企業の相談に対するスタンスが現れるところです。匿名を認めることにより相談をしやすくなり、問題発見の幅が広がる反面、十分な調査ができず、根拠のない情報に振り回されることもあり、相談者へのフィードバックもできないことから、かつては、匿名を認めない方式が多数でした。
しかし、最近は、本来発現すべき問題点が埋もれてしまうことを避けるため、匿名通報も受け付けることを明記したり、あるいは、氏名を明らかにすることを希望するとしながら、匿名での通報も受け付けるという方式をとる企業が増えてきています。
さらに、2004年5月に改正され、同年11月に施行された「米国連邦量刑ガイドライン」においては、効果的なコンプライアンス・プログラムたる要件の一つとして、匿名性又は秘密性を斟酌し、それによって、従業員等が報復のおそれなく、犯罪行為又はそのおそれに関し、通報したり、相談できるシステムを設置し、公表すべきことが掲げられています。
- 対象範囲と周知
対象者の範囲については、企業によって、「従業員」、「役員と従業員」、「役員、従業員及び派遣社員」と様々ですが、従業員(正社員、嘱託、パート・タイマー、アルバイトなど雇用形態を問わない)と「派遣社員」が含まれることが望ましいと考えます。
さらに、公益通報者保護法が2004年6月に制定されたことから、施行が予想される2006年4月までには、この法律に照らし、現在の制度を見直すことも必要になります。例えば、この法律で保護の対象となっている派遣社員、さらに、社員OB、取引先の従業員も対象範囲に追加することも考えられます。
相談窓口があることの継続的な周知は必要であり、コンプライアンスの冊子やハンドブックに記載するほか、ホームページでの案内、教育・研修や社内報などでの周知など、何度も継続的に行うことが必要です。
- 相談・通報への対応、調査の実施、要領・マニュアルの作成
ホットラインへの通報を受ける担当者は、コンプライアンス担当役員か、そのサポートを行う、限られた者を充てることになります。プログラムを熟知していることはもちろん、会社の様々な事柄に通じており、かつ回答手法を身につけた者を充てるべきです。また、通報者に対し責任をもって回答するとともに、通報された事項について的確に対処できる能力、立場が求められます。
相談者、通報者や被疑者などのプライバシー保護を徹底し、違法な対応とならないように、相談・通報対応や違反事案の調査等のための要領又はマニュアルを定め、適法かつ適切な対応を図る企業が増えています。
- 子会社などグループ会社におけるホットラインの設置
会社の中には、グループを挙げて、コンプライアンスを推進し、子会社などグループ企業においても、ホットライン設置を要請・奨励する例も増えています。また、企業グループ全体の通報窓口を親会社に設けたり、社外の法律事務所や専門業者に委託する例も見受けられます。
公益通報者保護法は、規模の大小を問わず、会社、政府、地方公共団体、公益法人、任意団体等、「労働者」を雇用する場合には、すべて適用されますので、形式はともかく、国内のすべてのグループ企業において、何らかのホットラインを設けることが望ましいと考えます。
さらに、米国におけるグループ会社は当然として、欧州やアジアのグループ企業においても、各社のコンプライアンスの一貫として、ホットラインの設置を検討することも望まれるところです。
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VII.人事考課への反映―違法を許さない社風の醸成―
従業員の法令遵守状況の人事考課への反映については、これまであまり考慮されていませんでした。しかし、人事考課は従業員の企業に対する貢献度を査定するものであることから、今後は法令遵守姿勢やスタンダードに則った業務実績などにつき、これを考課項目とすることも検討する価値があります。
特に管理職クラスともなると、部下の行動に与える影響は予想以上に大きく、その行動が法令遵守体制の構築に直結することを考えれば、「所属員・部下等に対する法令に則した指導」や「会社の名誉や信用への貢献」、「公正で透明な取引の推進」などを考課の対象とすることも、ある意味では当然の措置といえます。
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VIII.法令遵守状況チェック-コンプライアンス監査の必要性-
会社を取り巻く法令の周知徹底・教育を行っていても、それが遵守されているかどうかのチェックは必ず行うべきです。法令遵守状況のチェックは、社内で行われている通常ルートによる会計監査・業務監査・システム監査などと併せて行うことも考えられますし、それとは別途で行うことも考えられます。また、その実施は、各部門やコンプライアンス担当部門が行うこともできますが、社内監査部門・検査部門の監査項目に加えて実施する方法もあります。また、監査役による監査の一環として実施することや、外部の弁護士・監査法人などを起用することも考えられます。
監査等のチェックを行う意味は、故意による法令違反はもちろん、現場段階で問題の存在を認識できなかった場合や、存在は認識できたものの誤った判断をしてしまった場合に起こる法令違反を早期に発見するとともに、同じ過ちを二度と繰り返さないよう対応することにあります。スタンダードは、企業が継続的に活動を行っていく中で現場がスピーディーな判断を行うためにも有用かつ必要ですが、一方で、現場の判断の正確性を必ずしも担保するものではありません。いかに詳細なスタンダードを作成しようとも、現実の企業活動で直面する問題はその範囲内に収まるものとは限りません。監査等のチェックを確実に行うことが、プログラムの本質であり、スタンダード制定の目的を達成する役割を担うものといえます。
なお、前述のホットラインは、現実に発生した問題を従業員から通報してもらうための補助的手段に過ぎませんので、ホットラインへの通報がないからといって、社内にコンプライアンスに関する問題がないとは決していえず、これを理由に、法令遵守に関するチェックを行わないでよいとすませてはならないことは、いうまでもありません。
例えば、社内のホームページ等を用いて、法令に関する啓発を行うと同時に、従業員全員について、Q&A方式により、その知識を定期的に確認するといった方法も考えられます。
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IX.違反事例への対応・再発防止の徹底―過ちは二度と繰り返さない―
部門・部課内調査、監査やホットライン、監査等により法令違反が判明した場合には、会社として厳正かつ公正に対処しなければ、コンプライアンスも画餅となり、いつまでたっても、コンプライアンスの意識は育ちません。
違反行為が判明したときは、コンプライアンス担当役員・コンプライアンス担当部門は、当該部門とともに事実を徹底的に調査し(本部・部門長主導により十分な調査を徹底実施)、調査した事実に基づいて違反事案の速やかな改善等、会社としての対応を決定します。違反事例が発生した背景を調査し、同様の問題が発生しないよう、意思決定のシステムの検証、社内規定や当該法令遵守マニュアルの検討、問題発生時の相談システムの見直し、出金実行手続きや稟議書面・添付書類の見直し(部課長、事業所長、部門長、さらに本部による十分なチェック機能が有効に働くものになっていたか)、人事評価システムの見直し(いきすぎた成績重視、能力主義になっていなかったか、評価・考課にコンプライアンスが十分に反映されたものになっていたか)、コンプライアンスに関する教育・研修制度の見直し(企業倫理教育、個別の法令教育の継続的な実施等)などを行わなければなりません。
また、各社の所要の手続きに従い、本人はもちろん、部門長、事業所長その他の監督責任者の処分についても検討を行うことになります。必要であれば、本人や監督責任者の配置転換や降格等についても検討されることになります。さらに、取締役は、法令遵守体制構築義務を負うことから、この義務を果たすことができなかった場合には、経営者としての責任も明確にされるべきことになります。事案の内容によりますが、とかげのしっぽ切りにとどまる結末は、望ましいものではありません。
さらに、他の事業所や部門、全社においても類似の法令違反の可能性が生ずることがないよう、違反事例を反面教師として、会社として、このような法令違反を二度と繰り返さないよう、社長等から従業員へのメッセージの伝達や社内報その他の配布物で啓発すると同時に、当該部門を含むすべての事業所・部門での類似事案の有無の徹底調査、改善・対応策、防止策の検討、そして、結果として、有効に機能させることのできなかったコンプライアンス・プログラム自体の見直し・改定等を実施するべきものと思われます。監査役、監査部門、会計監査人、部門長、コンプライアンス担当役員等においては、既存の監査体制、レポーティング・システムを見直すことも必要とされます。
これらの一連の手続き、対応は、仮に株主総会などで問われても、また、マスコミ等を通じて社会的責任を追及された場合にも、合理的に説明できる、妥当な対応とすることが必要です。外部弁護士等専門家の参加のもとに行われるコンプライアンス推進委員会における十分な検討を行い、取締役会において決議・報告等の適正な手続きが検討されるべきです。
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